2019年11月9日(土)14:00開演
新国立劇場オペラ公演
ドン・パスクワーレ
新国立劇場オペラパレス
指揮:コッラード・ロヴァーリス
演出:ステファノ・ヴィツィオーリ
ドン・パスクワーレ:ロベルト・スカンディウッツィ
マラテスタ:ビアジオ・ピッツーティ
エレネスト:マキシム・ミロノフ
ノリーナ:ハスミック・トロシャン
2019/2020シーズン、2作目はベルカントオペラからドニゼッティの作品。今期の演目はメジャーどころを押さえつつ、エウゲニ・オネーギンやジュリオ・チェーザレなど、新鮮に感じる演目も入り、なかなか攻めてるなと個人的に思っていました。
その中でドン・パスクワーレだけなんとなく浮いているといいますか、場違い感があるなと思っていました。ドニゼッティは良いですが、なぜドンパス?盛り上がる?と勝手に心配していましたが初日を迎えてみると本当に失礼な心配でした。ゴメンナサイ。
楽しくてしょうがなかった。
面白くてしょうがなかった。
最初から最後まで音楽が心地良い。軽快で可愛らしく、一緒にリズムを取り踊りたくなるような音楽。ここが見どころです、と言える場面はありませんが、音楽の流れにのって進むお芝居が楽しくてしょうがない。(学生の団体さんにはこういうものを見てほしいなと勝手に思う。)
序曲からとてもよい演奏でした。わくわくさせてくれる序曲って良いですね。楽しい。音楽に関して気になるところがなかったと言えば嘘になりますが、舞台そっちのけで気になることはありませんでした。ソリスト4名も素晴らしい。重唱も喧嘩せずにそれぞれの声がしっかり聞こえる(若干エルネスト不在だったけど)のも幸せ。始まりから終わりまで内容に集中できる、作品の中に居れることは本当に幸せなことです。初日からこのクオリティって本当すごい。
演技に盛り込まれている笑いどころがとても自然でした。(イタリア語が話せるソリストが多いからかもしれません。)そしてちゃんと面白い。きちんと計算されたものだとは思いますが、本当に自然。狙ってます、とならない。喜劇ってこう言うことかと再認識。言葉がわからなくても、字幕を見なくても笑えちゃうのは不思議です。
キャスト全員が役者。お歌が上手いのはもちろんですが、俳優が本業です、と言われても納得できるくらいお芝居が上手い。舞台の空間を余すことなく使っている。誰がどの言葉にどういう反応をしているのかを見るのが楽しくて、オペラグラスを使ってしまうと追いかけるのが大変。細かいお芝居とてもよかったです。
レチタティーヴォが自然。喋ってるように聞こえるわけでもないし、歌っているようにも聞こえない。良い意味で音符が見えないレチタティーヴォ。レチタティーヴォって切れるというか、停滞するというか(音楽的には話を進める時間ですが)何か別の場所に飛ばされるような感覚があってあまり得意ではないのですが、今回は何の違和感もなく聴けるました。話がわかる。なんと表現したら良いのかわかりませんが、頭の悪い言い方で「超自然」。
繰り返しの多い歌詞も退屈しなかった。(6月の愛妙は早く先に進めって思ったしまった。)
舞台セットが三面鏡みたいに開いて閉じるのも、ノリーナが動くソファー(語弊)に乗って登場するのも新鮮で良かった。オネーギンに続きドンパスも新演出なのですね。動くソファーはリモコン操作なのかな。乗ってみたい。
役ごとに感想を。
ドン・パスクワーレ
ダンディでお上品なパスクワーレさん。良い声だったな。バスっていいよね。(突然)
間の取り方が上手で笑う時間を与えてくれる。
3幕のノリーナ仕立て(たぶん)の衣装も似合ってて、ノリーナと上手くやっていけそうだなって思えなくもなかった。
3幕でそこ開く仕様なんですね、ってところから銃を取り出す。銃を指で回すの上手で笑った。
パスクワーレさんとマラテスタさんのCheti cheti immantinente~がコミカルでとてもよかった。ここだけ10回くらい見たい。歌詞詰め込んでるところ本当すごい。よく口回るよね。笑っちゃうくらいすごかった。重唱の後、捌ける前に2人でがっちり握手して讃えあってた。大変だもんな。素晴らしかったです。
マラテスタ
話を進め、動かし、動き回る。そして歌が上手い。笑いを多く作りだしていたのはマラテスタかな。
イタリア語が綺麗でいいなと思ったらイタリア人でした。そりゃ上手いわ。
歌もソリストの中で1番安定していたのはないでしょうか。歌詞を訳さずにそのまま理解できるのが大きいのかな。パスクワーレさんもそうですが言葉を操っている感じがありました。
3幕でパスクワーレさんが出した銃をご丁寧しまうところが面白かった。あなたが片付けるのですね。
密会していたエルネストを逃すところが上手で経験者かな(経験者?)って思った。誘導に慣れてる人。マラテスタは誘導スタッフのご経験あり(?)。
エルネスト
今回のお目当て、マキシム・ミロノフ氏。2016/2017(そんなに前?)の『セビリアの理髪師』アルマヴィーヴァ伯爵で惚れました。かっこいいし、身長高いし、白スーツが似合うし、かっこいいし、歌上手いし、かっこいいし。
もちろん容姿だけでなく歌も上手いし完璧で、人の声ってそんなにころころ転がるものなのね、と驚きました。ベルカントのテノールのイメージが大きく変わりました。暫く「イケメンオペラ歌手に会った。」(会ってない)って言ってましたね。
そんなミロノフ氏との再会!また来てくれてありがとう!!
相変わらずかっこいい。今日も朝起きて1番にかっこよかったなって思い出した。
格好良さに振り切っていたアルマヴィーヴァ伯爵とは違い、エルネストはとてもコミカル。アホ全開という感じかな。2幕までは主役4人の中で1人だけ違う次元にいるようなエルネスト。自分で頭ぶつけてみたり、状況がわかって楽しくなっちゃったり。動くから追いかけるの大変なんだよ。アルマヴィーヴァ伯爵より技巧面がみれられないので歌での印象がぼやけてしまうのが残念だったけど上手いよー。
合唱との絡み可愛かったな。
3幕の舞台袖からの歌唱がとても上手で、集中したくて上から降りてくる葉っぱ見ながら神経を耳に集中させました。葉っぱ降りてくるのおもしろいよ。
声の伸び(声量の問題かも)と高音がもう少しほしいというか、もっとできるよねミロノフさん!といったところ。そんな調子よくないかも知れなかったかもしれないかもしれないしらない。(そういうことにしたい。)初日だからね。大丈夫。あなたの声はもっと美しい。
ノリーナ
動くソファーで後方に待機。客席からノリーナが見えて、三面鏡セット(名付けた)が回転し終わってようやく前奏が始まる。で前に出てくる。客席から見えるところで待機って大変そうだ。
登場から暫くは声の硬さが気になったのですが、進むにつれて気にならなくなったので気のせいかもしれない。Quel guarda~はルバートかけてたわりには普通だったかな。(私がa tempoが好きだからそう聞こえただけかも。)
パスクワーレさん宅を訪ねてきたときに白いカラー(花)を一輪もっているのですが、それをブンブン振り回すし(ここ大好き)、カラーで殴るし、そんな使い方するのねって思ってしまった。面白かった。
楽しそうなノリーナですが、3幕の「やりすぎたかも。」のところの表情が良かった。
エルネストのと重唱も綺麗だったな。
フィナーレは舞台上にはたくさん人がいるのに(合唱もでてきてた)1人で締めなきゃいけないの大変ですよね。
大満足。
想像を遥かに超える満足度。
オペラって楽しいんだな。楽しすぎて踊っちゃうよ。
ありがとう新国。こっち方面で行こうね新国さん。
もう一回観たい。