三島の見解

古の女子高生

【オペラ】コジ・ファン・トゥッテ

2022年7月1日(金)14:00公演

藤原歌劇団・NISSAY OPERA2022

コジ・ファン・トゥッテ

日生劇場

 

 

 

 

 

おはようございます。

こんにちは。

こんばんは。

 

 

三島でございます。

 

 

 

6月29日のガランチャリサイタルぶりの劇場。

(記事はこちらから↓)

mishimashikahika.hatenablog.com

 

 

 

6月12日の『セビリアの理髪師』ぶりの日生劇場

(記事はこちらから↓)

mishimashikahika.hatenablog.com

 

 

 

 

平日の昼公演ということもあり、客入りは7割適度。言い過ぎかな?8割にしておくかな?

1日目と3日目が同キャストで2日目は別キャスト。本公演(1日)のキャストは2公演できるので、今日はプレ公演的な意味合いがあるのかしら。値段は一緒ですがね。どうでしょうか。

 

 

 

 

モーツァルトから遠ざかっていた感覚はないのですが、オペラとして観るのは結構久しぶりな気がします。

新国立劇場の『魔笛』をパスしたからかな?

 

 

 

 

コジ・ファン・トゥッテ』自体も久しぶりだわ。

 

 

 

この作品は、『フィガロの結婚』『ドン・ジョバンニ』と一緒に「三部作」とよく呼ばれているものですね。『コジ・ファン・トゥッテ』のみダ・ポンテの書き下ろし作品であり、原作と明記されるものがありません。そのせいか、私はこの作品には中身がないなあ、と思っております。悪い意味ではなく、中身がないからこそ演出家の腕の見せ所になる作品になるな、と。悪く言えば作品に頼れないという意味ですが。他作品よりも比較的自由があり、自分がやりたいことやちょっと冒険してみたいことを入れ込みやすいですよね。

 

 

 

 

 

それでは感想いってみよー。

 

 

 

 

 

 

全体を通して

演出は新演出な模様。舞台セットや衣装もコテコテしたものではなく、シンプルに必要なものを必要なだけ、という感じでした。日生劇場の舞台に色々詰め込むと圧迫感が出ると思うので、適度な量であり、お金ない感もでないので良いセットだと思います。2幕の姉妹のドレスがとても綺麗だった。胸元と背中があいているタイトドレス。ピンクと赤の色違いで(色違いに見えたんだけど写真確認すると同じ色?)赤と青など対照的な色を持ってこないのも見栄え的にもよかったです。1幕もお揃い(多分)のドレスだったしね。「姉妹」という設定を大事にしているのかな?

 

 

 

しかし、無駄が多い。

繰り返しが多い。

無駄に多い。

 

 

 

 

覚えている限りですが、1幕のアルフォンソの「Barbaro fato!」から中々明確に話をしないアルフォンソにイライラあわあわしている姉妹の動き。一緒すぎる。あえてシンクロさせるなら、もっと合わせてばいいのですが、ズレながら同じ動作をするから反応ワンパターンな人×2でなんか立体感が出ない。動けないなら定位置作って片方はここでとかやればいいのに。

 

その後の婚約者が軍に行くという嘘に見事に騙されてた姉妹が舞台前方で絶望しており、婚約者ズが面白そうに謎ステップを踏んでいるのですが、ここもワンパターン。長い時間を同じことを繰り返す。上手・下手を交換しながら同じことをする。2人で組んで踊り出すとか、アルフォンソ巻き込むとか変化をくれ。そこまで気を配れないなら踊るな。同じこと繰り返すな。

 

 

 

 

 

音ハメ芸も気になった。足を踏む・手を出すなどの動作のときに、何かと音(リズム)に当てちゃうんですよね。主にデスピーナで起きていた。デスピーナ役の歌手が音ハメ芸の人なのではなく、音ハメの指導が入っているとだと思うのですが。5回足を踏む時に最初もしくは最後だけ当てるとか、左右の手を出すとき右手だけ音に当てるとか、効果的な音ハメ芸をすれば面白いのに。全部に当てちゃうと子供のお遊戯会感が出てしまうので、音ハメ芸の逆効果も考えた方がいいと思います。

 

 

 

無駄な時間の多さもね、気になったね。デスピーナのレチタティーヴォ中に上手・下手に置かれた椅子で上手でフェランドのまねをし、下手の椅子でグリエルモの真似をする(逆かも)のですが、この上手・下手の移動の時間が2秒もないと思いますが、とても無駄な時間。舞台上で移動の時間って絶対発生したらいけないと思うのですよ。もちろん移動をしなければならないことは無限にあると思うのですが、歌うとか踊るとか何かしらで埋めなきゃいけないのです。ただ移動の時間・着替えの時間というのは何かしらの効果がない限り絶対にあってはいけないと思うのです。幕間でもないのに客席に待ちの時間を与えるのはいけないのです。それが0.1秒でもダメです。移動したことに対する効果も薄かったし。下手にいって同じことやっただけじゃん。デスピーナが花瓶に薔薇の花を挿す時間も謎だった。

 

 

フィオルディリージの「Per pieta〜」(ロンド)の演出。稲妻みたいにライトでステージを照らしてフィオルデリージが「眩しい」みたいなリアクションをするんですが、回数が多すぎるんだわ。なんで何回も同じことやるんだ。フィオルディリージのリアクションも毎回同じだから「またですかー?またですねー。」となります。つまり飽きます。面白くありません。1回目はよかったよ。効果あるよ。自分の心と守らなきゃいけないものと戦ってますね。それが稲妻(?)で表されているように見えた。でもこういうのって何回もやるとなんだかわからなくなるんだよね。2回+曲おわり1回くらいでよかったのでは?

 

後、この曲の最中(多分2回目の「Per pieta〜」)に、しゃがんでちょっと移動して歌いだすところがあったのですが、この「ちょっとの移動」が無駄が不明。それはなんだ?意味があるのか?「しゃがんだけど指揮見えないからちょっと移動するわ〜。」って感じかな?

 

 

 

 

重唱がごちゃごちゃしている。私の知っている限りだとこのオペラは重唱も売りの一つだったかと思うが、ずっとごちゃごちゃしていた。何言ってるか聞き取りたいってわけではないですよ。しかし、1つ1つのメロディがそれなりに聴こえないとちょっと困る。音源や他公演で「ここの部分はこの声種がよく聞こえるよねー。」となる部分も、こっちがその声を探しにいかなければならない。「テノールどこですかー?」って感じよ。ハーモニーとは?

 

 

 

 

 

 

すごく生意気なんですけど、私にはそう見えたしそう聞こえた。

正直、気づかなければ何も問題もない箇所ばかりですが、

そういったところを出来る限り良くしておくのが舞台芸術だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

ではキャスト別。

 

 

 

 

 

ドン・アルフォンソの眉毛がご乱心

眉毛メイクがだいぶ面白い感じになっておりました。

 

明るい雰囲気を持つアルフォンソが多いながら、今回のアルフォンソは結構ダーク。大人しいというか恐ろしいというか辛気臭いおじさん。出だしのグリエルモとフェランドとの歌唱は、老人いじめかと思うほど萎縮していた。歌うときもほとんど笑わずに無表情で歌い続ける。「iIo crepo, se non rido!」と言いながら表情が変わらないことにこっちが笑いそうになった。「ウケる〜」って言いながら全然笑ってないギャルみたいね。その後、笑っていたけど。後、姉妹が放置した、開いたままの傘を畳んで所定の位置に置くアルフォンソが面白かった。綺麗好きかな?

 

 

 

歌唱は安定していて(そもそもきかせどころがないが)とてもよかった。バスが安定していると、なんとなくまとまるから重要ポイントだよね。低音大事!

 

 

 

 

 

デスピーナ(元ヤン)

デスピーナは声が暗めで新鮮だった。暗めな声のデスピーナが今回の演出に合っていると思います。ちょっとダークな感じだから、ここにいわゆるデスピーナのような声(軽いソプラノ)が入ってくると浮く可能性が高い。

 

 

ずっとキレ気味というかヤンキー気質というか、よく女中やってるなって感じのデスピーナ。

 

 

デスピーナはレチタティーヴォが上手。レチタティーヴォの方が上手。重唱はそんなに気にならなかったけど、アリアは母音ごとに発声が変わってしまうのが気になった。特に一幕は顕著だった。

 

 

舞台上で日本語を喋るのはちょっとnon per favoreですわ。世界感を守ってください。せめてイタリア語で。指揮者との会話も指揮者が棒読みのせいで、なんかとても恥ずかしい(指揮者は悪くない)。こういう小芝居を入れてきてそれが下手だと一気にお遊戯会になってしまうから絶対にやめた方がいい。まあ身内ウケはいいんでしょ?知ってるよ。

 

 

 

 

 

 

ちゃんとお姉さんなフィオルディリージ

フィオルディリージって名前が長いんだわ(打つのがめんどくさいという怠慢)。声がとても綺麗。無理矢理感はないし、高音への跳躍もストレスフリーでよく響く。特に、ピアノの響かせ方と音質が安定しており素晴らしかった。アホみたいに忙しいフィオルディリージという役をやれるだけある人の歌だなあ、と。

 

しかし、低音が響かない。フィオルディリージは低音鳴らしてナンボみたいな部分があり、ここが抜けると彼女の強さが描かれている部分が薄れてしまう。高音の響きが美しいから物足りなさが出てしまう。あと、舞台上にずっといると上がってきちゃう。「Ah guarda sorella〜」の重唱は本当に綺麗だったのに「come scoglio〜」は出ずっぱりからの超大変アリアで声が乗り切らない部分があったかな。一回引っ込んでから歌ってもらったらもっと素晴らしいものを聴けた気がする。2幕のロンドはよかった。動きがワンパターンなのは置いておく。

 

 

「come scoglio〜」の前のレチタティーヴォ「Temerari」を後ろ向きで言わせたのは何故か。何故なのか。

 

ドラベッラを見ているときの姉の眼差しが美しくてとてもよかった。基本的に綺麗で品のある人。

 

 

 

 

 

妹感をだしたいのはわかるドラベッラ

音が高くなると、いいポジションで歌えてないのがわかってしまう。跳躍するときに力が入ってしまうのもわかりやすすぎる。2幕は「i」「e」の母音が締まりすぎて聴いていてしんどかった。演出の指示の可能性大ですが、アリアになると発表会(=役ではなくなる)になってしまって面白みがない。

 

妹ぽくしているのが、若作り感でてしまって痛くなってしまう。そのままでええねん。妹に見えなくても妹って設定は知っているから大丈夫よ。

 

 

 

 

 

 

ミュージカル俳優な婚約者ズ

悪い意味じゃないですよ。ミュージカル俳優の如く動けるってことです。コミカルさもありながら、真剣さも伝わり、役のキャラクターとしてはとてもよかった。

 

 

グリエルモはもう少し響いたらいいなって思うけれど、お持ちの声が良いので仕上がっている感じがした。ドウランが濃かった。

 

 

フェランドはちょっとお歌が。出だしから押せ押せ歌唱だったのでこれはどうなるか、と思っていたら最後まで何も変わらなかった。舞台上で動けるのは素晴らしいことなんだけど、肝心の歌が。序盤で「Un'aura〜」の最高音は出ないだろうな、と判断。案の定全然ハマらないし全然響かない。逆に期待せずに平常心で聴けちゃうレベル。ハマらないことが明確だからある意味安定。しかも、何の歌だかわからいくらい中身がない。中身もない。2幕からはドラベッラと同じく「i」「e」の母音が締まりすぎて、こちらが何かしらの修行に入ったのかと感じるくらい聴いているのがしんどい。フィオルディリージとの二重唱でフィオルディリージが普通に歌えるのが逆に謎。

 

 

 

 

 

 

 

 

前回のNISSEY OPERAの『セビリアの理髪師』を思い出し、比べる(比べるな)とレチタティーヴォ中に中だるみのようなものを感じた。改めて『セビリアの理髪師』の飽きさせないレチタティーヴォとそれのテンポの良さを噛み締める。

 

 

 

フィナーレも盛り上がりがなかったかな。今まで妹っぽく見せていたドラベッラが完全に違う人で笑った。これは演出の意図かな。「女はそういう立場で〜」みたいなやつ。デスピーナが小切手(だと思う)を受け取らなったのもそんなところかしら。後、女性陣が幕切れ前に退場したのも。

 

 

 

 

 

 

 

演出とやりたいことはいいんだけど。如何せん無駄が多い。

その無駄が気にならないほどの技術はない。

 

 

難しいところだけど、

技術でねじ伏せることができない限り、

ちまちまと細かいところを埋めていく必要があると思う。

ライトセーバーはそんなに悪くないと思うよ。)

 

 

 

 

 

 

 

明日も頑張って!

 

 

 

 

 

指揮: 川瀬賢太郎

演出:岩田達宗

フィオルディリージ:迫田美帆

ドラベッラ:山口佳子

グリエルモ:岡昭宏

フェランド:山本康寛

デスピーナ:向野由美子

ドン・アルフォンソ:田中大揮