2022年8月13日(土)13:30公演
新国立劇場オペラパレス
おはようございます。
こんにちは。
こんばんは。
台風8号が来ていた13日も元気に劇場へ行きました。
どうも三島です。
今回は、久しぶりにバレエ鑑賞へ。
コロナ初期のパリ・オペラ座の来日公演が最後なので、本当に何年ぶり?という感じです。
バレエも大好きなのですが、好きだからこその選り好みをしてしまって結局何も観ない人になっております。
東京シティ・バレエ団の公演であるものの、主役はパリ・オペラ座のお2人です。Bキャストの日はパリ・オペラ座の方ではありませんでしたが。期間は空いてしまったもののパリオペ続きで嬉しい限りです。
オニールさんを観るのはミルタぶり。
ジェルマン・ルーヴェくんはおレンスキーくんを観ているので2回目ですね。なんともお美しい2人です。
では感想。
公演の前に
当日券の列。
今回、私は各種プレガイドとやらで、予約し当日会場でチケットを受け取るシステムだったのです。チケットを受け取るだけ(支払いはシステム上で済んでいる)ので、たくさん人がいても流れるように進むだろうと思っていたのです。いざ、会場についてみるとまあまあ並んでいる。これはしょうがないとしても列が全然動かない。
当日券と当日引換券の窓口が同じなのがまず1つ目の原因。しかも当日券の方は席をある程度選べるようで時間がかかる。金銭のやり取りも発生しますしね。2つ目はスタッフの不慣れさ。なので、なかなかチケットを受け取れない。
私は、引換番号とメールに記載があった通り身分証を持って行きましたが、番号も本人確認もされず、プレガイド名と席種を言ったらチケットが出てきました。これだといくらでもなりすましできちゃうよね。せめて番号くらい確認すればいいのに、と。開演はほぼ定刻通りだったので、捌き切れたのだとは思いますが、事務作業の効率の悪さが引くレベルで酷い。身内の小さな公演ならいいのですが、興行としての公演ならば、そのあたりでストレスをお客さんに与えてはダメだよね。「間に合うのか?」「チケットは本当にあるのか?」と不安になってしまうよね。本当に手伝いたいレベルだった。三島はクリエイティブ系ではないぶん、事務作業得意だから。何かあったら呼んでね?
では、本編へ。
オーケストラ頑張って
電池を変え忘れたか、もしくは充電残量が少なかったのか、たびたび電池切れを起こしていたオーケストラピットの中。1幕出だしがへなちょこで「おうおうおう」という感じ(どんな?)でしたが、幕があがる頃にはそれなりに鳴り出したのでひとまず安心。演奏自体は全体を通して直線的な演奏だなといったところでした。楽譜から離れない演奏。楽譜から離れて自由行動していいわけではないですが、学校教材のスーパースタンダードな音楽作りといったところ。もう少し空気を含んだような音楽が聴けたらよかったな。あと、ステージ上のパフォーマンスのレベルが上がれば上がるほど(=主役2人が出ていると)オーケストラが乱れていく。何らかのバランスとってるのかな?
2幕はオニールさんに集中していたから覚えていない。ということはまずまずだったということでしょう。バレエとして(=音楽単品ではなく)観ていると上手さが目立ちにくいが、いまいちな部分は気付きやすい。
3幕、休憩の幕開けの演奏は出だしからとてもよく、3幕って一番楽しい(と個人的には思う)場面だからそれを感じさせるような弾けるような演奏はとてもよかった。しかし、弾けすぎて最後の方で打楽器が暴走してた。いや元気過ぎじゃね?
各種踊りもオケめっちゃ調子良い。しかし、オディールと王子のデュエットの時は急に殻にこもる。そして弦楽器の音の色気のなさ。音が実直すぎて、なんかステージ上と雰囲気と矛盾しているのがちょっと面白かった。踊りにくくないのかな?カウントは取りやすいからいいのかな?カウントで踊るのか?そしてここで一度電池切れを起こす。本当に怖かった。黒鳥のバリエーションの最後の弦のももっと空間を使ってくれ、壁に当たらないでくれ、と言いたくなる音(言ってるんだけど)。
4幕も、相変わらず弦がいまいちだったけれど、3幕のようなあからさまな電池切れはなかったので、よかったのでは?ヒヤヒヤだったけどね。2公演目以降からよくなっていたことを祈る。
御伽噺であることの大切さ
私三島は、ヌレエフ版大好き人間なので、今回の、メルヘンで明るくハッピーエンドな白鳥の湖に心を侵食された。素晴らしく幸せな心暖まる白鳥の湖だった。
どこの国なのか、この人は誰なのか全くわからない、ふわふわとした世界でお送りする物語がこれほどまでに心に刺さるとは思わなかった。白鳥の湖を観たことない人は、この公演から入ってくれと勧めたいくらい、無理のない美しい世界だった。
特に、1幕・3幕の背景のメルヘンっぽさがこれが御伽噺であることを強調し、別世界の話、現実の切り離し舞台に集中する環境を作ることに一役かっている。「愛の讃歌」という副題はちょっと恥ずかしいなと感じていましたが、実際見終わってみると「愛の讃歌だわー。」と気持ちいいくらいに納得。白鳥の湖という作品でプラトニック過ぎずに、他の要素を邪魔せずに人の感情の変化や愛というテーマを上手に押し出すことは結構難しい気がする。有名すぎて、テンプレ化を感じるし、そもそも「愛」を押し出すことで滑稽になってしまうかと。しかし、小馬鹿にした同意ではなく、作品内で示したかったであろう「愛」というテーマに大きく頷ける仕上がりになっていた。
オニール八菜
バレエの感想って難しいな。
どう区切って書いていけばいいのか。ナンバーオペラの感想の書きやすさったら。
今回の公演へ向かう決め手であったのは、オニールさんの黒鳥が見たいからでした。オディールが絶対に美しい。生で、劇場で見たいという思いでチケットを予約。そして、期待を裏切らない美しさと素晴らしさ。ありがとうございます。
オニールさんの美しいところや優れているところなんて山ほどありますが、今回一番素晴らしいと思ったのは、一切足音がしないところです。歩くときはもちろんですけど、着地も何もかも全く音がしない。妖精?あれ?ミルタだっけ?と思うくらい。公演を通して全体が足音小さめだったので、劇場の仕様かもですがそれでも静かだった。足音ドコドコバレエではない素晴らしさよ。
オデット
登場した瞬間に場を支配する・空気を変える圧倒的主役力。どの瞬間を切り取っても、良い写真が撮れそうな隙のない美しい踊り。うるさくない踊り。そして腕の筋肉の美しさ。手の動かし方から視線の使い方、バリエーションはもちろん全部が美・美・美であった。
2幕の王子と出会ったときの高速マイムが好き。流れるようにマイムをするのだけれど、しっかり「お話し」をしているということと、オデットの切実さが伝わる。そして何より手が美しい。指先までバレエとはこういうことかと。2幕の中でオデットと王子の心境の変化というか、心の距離を描くのが上手だった。
踊りに関しては、一貫して余裕。実際余裕かどうかは知らないけれど、どの動きにもストレスを感じさせない。美しさを堪能していればいつの間にか終わっている。今まで2幕はどのように観ればいいものかと思っていましたが、観るべきところがたくさんあっていつの間にか終わっていた。もう一回2幕が始まればいいのにと思うほどでした。
4幕のオデットは悲しみを押し出すのではなく、虚無というか空虚というか、感情を排除した絶望みたいなものを感じた。どーんっと地に落ちた感じね。オニールさんの踊りはものすごくシンプルだと思う。背も高く、お持ちの美しさがあるから、素材で勝負できる感じよね。好き嫌いが分かれる気をするが、この丁寧な職人のようなバレエにたくさんの人が魅了されてほしい。
4幕暗転後の衣装が変わったオデットが美し過ぎて照明と合わさってまじ眩しい。目に焼き付けた。
オディール
ただ美しい。黒が似合う。美しい。美し過ぎてなく。
オデットを意識しているようにも見えるオディール。バチバチに踊り過ぎずに、2幕との違いを見せる。「キメてやりまっせー。王子騙しまっせー。」というよりかは、騙されている王子を楽しんでいるような、作戦を感じない。小馬鹿にしているとも違うオディールだった。なんか若い。
オディールはオデットの比べて、不必要に力みながら踊る方もいる中、こちらも余裕オブ余裕の踊り。オケが電池切れてもへなちょこな音出しても全く崩れないプロ対応。当たり前なんだけれど、こういうのに引っ張られないのはすごいよね。
ジェルマン・ルーヴェ
圧倒的王子さま。
美しい。
発光している。
目を奪われてしまうからなるべく引っ込んでいて欲しい。他の踊りも見たいのにルーヴェくんがステージいると追っかけてしまう。
幕が開いて、想像以上の華やかさと東京シティ・バレエ団さんの期待以上の舞台作りに喜んでいたところに登場してきたルーヴェくん。全部持っていく。その華やかさは何?少女漫画?背景に薔薇が見えるけど?
オニールさんと同じくルーヴェくんも余裕の踊り。手の動かし方・視線の使い方、バリエーションを踊らなくてもバレリーナ。座っているだけでバレリーナ。生まれた時からバレリーナ。圧倒的な美しさにこちらが軽く鬱。
白鳥の湖は、あほ王子のイメージが強く、情けない王子様を哀れに思うのが恒例だったりしますが(私だけかな?)、ルーヴェくんの王子は本人の雰囲気と王子の若さ(初々しさ)がマッチしていてよかった。余計なツッコミせずに済む。
ずっと顔を見ていたんだけれど(バレエとは?)、オニールさんを支えている時の視線の使い方が綺麗だった。どこに顔をつけているのか明確で、本当にプロに対していう感想ではないんだけれど、視線の使い方一つで立体感が倍増するのだなと。
残りの感想
1幕
お友達たちの衣装がとても可愛い。ピンク・黄緑・水色の色味が好み。パステルカラーってやつ?御伽噺らしさが出るということと、日本人バレリーナの体型や雰囲気にあっている。王妃が若い。
パ・ド・トロワの最初に踊った女性バレリーナが、ちょっとよろよろの踊りだったのが気になった。心配。バレリーナって過酷なダイエットするから本当に体調悪かったらどうしようって。もう一人の女性はとても上手だった。流れはあるが、1つ1つのポディションをしっかり止まっていて、カメラマンも写真が撮りやすいだろうなと思うよ。
2幕
白鳥たちの群舞が綺麗。3羽の白鳥のうち1人の方の胸(デコルテ周り)の使い方が綺麗だった。胸で照明を受けるというか、胸から腕というか。彼女だけ白鳥であることを邪魔しない程度の華やかさを感じた。
3幕
2幕の美しい群舞と比べると各種踊りの拍子抜け感は否めない。遠慮がちな踊りだった。道化さんはものすごくよかったけれども。花嫁候補のワルツも可もなく不可もなく面白くもなく。このあたりはオケが元気だったから余計にステージが寂しく感じたのかも。特に、スペインの踊りのラジオ体操感は否めなかった。各種踊りで一番美味しいはずなのになあ。衣装は総じて可愛い。
4幕
ロートバルトとの戦いの場面(?)の戦ってますよ感がすごかった。踊っているのだけれど、踊りと場面が矛盾していないというか「踊っているように見えますが、これは戦ってます。」というテロップはいらないと思う。伝わる、伝わる。ロートバルトの存在感のなさ。これはヌレエフ版勢だからだと思いたい。ロートバルトの羽もぎ取ってからのオニールさんの早替えまですごいな。オケが電池切れ寸前だったけど。効果的な静寂なのか事故なのかがわからん。音楽って難しい。
ハッピーエンドの白鳥の湖に慣れていないもので(ヌレエフ万歳)新鮮で新鮮で幸せで泣けた。眩しい。
めちゃくちゃ満たされた一方で心に大きな穴が開いている。
オニールさんもルーヴェもフランスに戻ってしまう。
このクオリティの公演はバレエでもオペラでも私の日常にはない。
切ない。
パリ市民になりたい。
(なお収入源)
帰らないでくれー。
いや、帰ってパリで素敵なバレエライフを送ってくれー。
オデット/オディール:オニール八菜
ジークフリード王子:ジェルマン・ルーヴェ
ほか:東京シティ・バレエ団
指揮:井田勝大
演出・振付:石田種生(プティパ、イワノフ版による)