2026年11月8日(日)13:00公演
新国立劇場 オペラパレス
東京バレエ団
オネーギン

お世話になっております。
三島でございます。
『海賊』『白鳥の湖』と東京バレエ団さんの公演を見たので正直お腹いっぱいで見送る予定でしたが『オネーギン』はそれなりに見たいよねってこいうことでチケットを購入しました。初動で大きく売れたわけではなさそう(チケットサイトでは◎ばっかりだった記憶)ですが売れ行きは順調で金曜以外は完売でしょうか。喜ばしいことですね。
『オネーギン』の上演が発表されたときどう思いました?私は「全員レンスキーじゃね?」と思いました。つまり「オネーギンできる人おりますか?」と思ったということです。
全4公演って少ないよね。
ということで千秋楽にお邪魔です。
ではレビューといきましょう。
(以下敬称略。)
全体的
古典をしっかり踊れるバレエ団でも『オネーギン』『椿姫』あたりでは違うものを求められてしまい上演したものの面白みがないまま終わる可能性がありますよね。東京バレエ団もその中に入ると思っておりました。
しかし実際見てみると海外のそれを見ているときの高揚感や刺激はないももの大健闘しており仕上がりとしては良い結果だった。難しい振付に余裕がなかったり各々の役柄に振り回されているように見えたりと完璧とは言えないが良い舞台をづくりはできておりそして何より無事完走できて安心しました。
かなり抽象的な表現になってしまいますが舞台上の空気感が素敵だなあと感じることが多かった。1幕はみんな仲良し緩やかで穏やかな空気が流れていた。タチヤーナと挨拶(ハグ)する女子ズの表情もオリガとレンスキーの踊りを見守る女子ズの表情も自然で優しい。長い時間一緒にいてお互いをよく理解しているからこそ醸し出せる空気があった。そんな空気の中に登場するオネーギンの異物異質さがよく強調され存在が浮き彫りになったのもまた良い。
2幕も最初はみんなでパーティーを楽しんでおり1幕同様の柔かなな雰囲気とパーティーという非日常にワクワクしている様子が伝わってくる。タチヤーナへ向ける表情は優しいけれどどこか心配そうで見守る皆さんの表情は温もりがある。オリガとオネーギンを眺める皆さんの不安そうな表情から穏やかでない空気を感じ取れる。3幕は1幕2幕とは異なり暖かさはない。その中にグレーミンの大きな愛があることがまた上手に強調される舞台上になっていた。
単純な踊りの技術以外の所謂芝居的要素も大きく求められる演目である。振付は借りてきたもの感が強く音楽に合わせてただ踊っているだけのように見えるときがあり踊りの部分においては改善の余地ありですが意外にも舞台上が成立していて驚いた。
では幕ごとにちょっとだけ書きます。
1幕
オリガ(足立真里亜)とレンスキー(池本祥真)が幸せそうです。両名が自然な笑顔で踊っているし特にレンスキーは2幕との落差のために強調しているのか幸せいっぱいな感じが強く出ている。軽々とリフトするのは良いですが池本は1人で踊ると全体的に力みがあって手足が短く見えてしまう。
タチヤーナ(秋山瑛)とオリガの幼さをアピールするのではなく等身大という感じで普段の暮らしを見ているようだった。おそらく秋山と足立自身が若いので若作り演技が不要なのでしょう。ママ(政本絵美)も若くお綺麗です。
宮川新大のオネーギンはとても新鮮でした。宮川は白!王子様!という印象があるので。何を考えているかわからない、めんどくさそう、良く言えばミステリアスでキラキラしたオネーギンになりそうだなあと思っていたのですが意外にも普通に(?)オネーギンでした。1幕前半の踊りは頭の中で振付を確認しながら踊っているような動線が見える踊りだったのはちょっと残念。
鏡のパ・ドゥ・ドゥでの宮川オネーギンはにっこにっこオネーギンではない。気持ち悪いほどの笑顔で踊るオネーギンの印象が強いのでこれもまた新鮮。秋山タチヤーナの中のオネーギンは現実とそこまで差がないのかも。踊り自体が大変に丁寧でアクロバット要素が少なく見える。安全を取らなければいけない故に小さくなってしまった部分があるのかなと推測しますが物足りなさはないです。上品な仕上がりで結構好きです。宮川オネーギンが微笑なのに対し秋山タチヤーナがにっこにっこなので対比して非現実的で良い。オネーギンの退場がなんか魔法使いみたいだった。そういう話だったっけ。
2幕
宮川オネーギンは2幕でも丁寧。真摯に手紙を破っている。人のいないタイミングを選んでくれたんだなって感じです。足立オリガが楽しそうなのはいいのですがちょっとだけオーバーというか元気すぎるなあと思うことがあり、笑い方がファストフード店でおしゃべりしている女子高生みたいに豪快なんだよね(偏見です)。現実味が強くなってしまうのでもう少し品良くお願いしたい。
秋山タチヤーナの踊りは終始美しい。アラベスクの位置が高く背中の反り具合はもう二つ折りですよね。オネーギンとオリガが踊っていることが気になっているときの表情に悲しさとオリガへの心配が混ざっているように見えたし、レンスキーの情緒が危ないことをオリガに気づかせたりとお姉さんもしていた。
池本のレンスキーの決闘前の踊りは流れがなくて硬く正直体操に見えた。宮川も同じですが腕を下げて上体を逸らす振付が苦手なのかな。ハマらないなあと。そらしすぎてもだめなんだろうけどでも腕を下げて立っているだけに見えてしまう。
3幕
衣装が気になる。女子ズのネックレスがバラバラしないように薄い布(?)に貼り付けた状態で着用しているのがなんか滑稽です。普通につけたら踊るときに邪魔なのはわかるけれど不自然で気になった。バラバラしないネックレスにすればいいのに。グレーミンと踊るときのタチヤーナの衣装も微妙。古典味があり1人だけ浮いている。同じ黒でも艶感の強い生地なら良かったのではないか。終幕の衣装は素敵なのに。まあ東京バレエ団のものではないのですが。
グレーミンとの踊りも秋山の所作が美しさが目を惹く。表情が穏やかだけど落ち着きすぎて老けたように見えるのはあえてなのか。秋山タチアーナが退場前に振り返ってオネーギンを見るのがいいよね。視線の投げ方も上手です。
手紙のパ・ドゥ・ドゥは秋山の動きに宮川が合わせて動いているように見えた。パ・ドゥ・ドゥって男性が先導しているような印象があったが絶対そうではないみたい。1幕のパ・ドゥ・ドゥよりは激しかったがこちらでも丁寧さが目立つ。必死に感情をぶつける人に対して拒絶しなければならないといった激しいやりとりはない。しかし宮川オネーギンの想いは重いし秋山タチヤーナが苦しそうなのは表情からわかる。
最後一人になったときの秋山タチヤーナの表情は過去の自分へのお別れに見えた。オネーギンを拒絶したことにより今までの想いが過去のものになって過ぎ去っていくのを見つめているような。悲しみや苦しみではなく終わりが来たことを受け入れているような表情。不思議な感覚になった。
こんなところでしょうか。
生方隆之介のレンスキーが見たかったですが予定合わず。
でいつか見れることを期待。
オネーギン:宮川新大
レンスキー:池本祥真
ラーリナ夫人:政本絵美
タチヤーナ:秋山瑛
オリガ:足立真里亜
乳母:坂井直子
グレーミン公爵:樋口祐輝
指揮:ベンジャミン・ポープ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団






