三島の見解

見ると観る、聞くと聴くは使い分けておりません。

【コンサート】わが故郷~歌曲とアリアで紡ぐ作曲家たちの起源旅(ヴィタリ・ユシュマノフ&山田ありあ)

2024年5月5日(日)17:30公演

ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2024

丸の内エリアコンサート

明治安田ヴィレッジ 1Fアトリウム

わが故郷~歌曲とアリアで紡ぐ作曲家たちの起源旅


お世話になっております。

三島でございます。

 

この日はお昼に渋谷でミュージカルを見た後に東京駅方面へ移動しラ・フォル・ジュルネTOKYO 2024の無料コンサートを聞きました。

 

そうなんです。無料なんです。

無料は高いんだよ。無料が結局1番高いんだよ。

500円でも1000円でも良いからお金を取ってくれ。無料は怖い。

 

無料だし劇場でもないので緩い感想を。

(以下敬称略)

 

印象の変化

ヴィタリ・ユシュマノフは新国立劇場で何度かと新宿でオネーギン(なんと2021年の出来事)を歌ったときに聞いております。

 

この公演を聞いて印象が良い方向に変わりました。

 

パワー系バリトンのイメージが強く勢いで歌っている印象がありましたが、この公演では声を張っているように聞こえることが少なかったです。もちろんゼロではありませんが。音響設備が整っていない環境だからこそ力で解決したくなりがちですが、ポジションを保って歌っているように見えました。

 

声量の大きいオペラ歌手であれば建物中に聞こえるような声で歌うと思いますが(つまりうるさい)、ユシュマノフの声の通り方を思い出すと周辺にいる人がちょうどいい音量で楽しめるので声量はそこまでないのかなと思いました。

 

声量が小さいことは響かせる技術さえ持っていれば大したマイナス点ではありませんが、私はユシュマノフの歌唱を大きい劇場で聞く機会しかなかったのでちょうどマイナスに作用しているときに聞いていたことになります。

 

マイナスに作用しているとはお持ちの声はそこまで大きくないところに、

①響かせる技術が不足している

新国立劇場は大変にシビアな響きをしていてるしsもそも劇場が大きい

という条件(一例です)が揃ってしまったときのことです。その状況下でお仕事をしなければならないので力技で歌うしかありません。押せ押せだけで歌うのは絶対的に間違いですが、ブレない響きや確固たる技術を持っていないと力技に頼ってしまいますよね。

 

①だけならそれなりに聞こえるように協力してくれるサントリーホールのような劇場や小さな劇場であればよく聞こえる可能性があります。②だけでもお持ちの技術(響き)さえしっかりしていれば問題なく声が届きます。

 

この公演はでは両方該当しているように思えました。響きを助けてくれる環境でもありませんし大きい劇場で響く声なのかといえばそうではありませんでした。ただ、ピアノ伴奏ということと観客との距離が近いということでオープンスペースで設備の整った会場ではありませんが声がよく届いていました。

 

そもそも音響設備に頼ることのなくこのレベルの歌唱ができることは流石だと思います。

 

個人的な希望と致しましては小ホールでピアノ伴奏と「しっとり演奏会」を行なってほしいです。こちらの方がお持ちの声が良いことがよくわかると思います。でもオペラ歌手たるものオーケストラ伴奏で歌ってなんぼなんでしょうね。

 

そうそうこういうことー!という演奏会があったそうです。2023年末に。あれ?逃している?逃している!茅野先生シェアありがとうございます。

 

 

トレパーク(ムソルグスキー作曲)

曲ごとに感想は書かないのですが、トレパークは好きなので数行書いておこう。

 

テンポは全体的にゆっくりめでした。緩急もあまりなく正直にいうと一本調子すぎて面白みがなかったです。言葉を裁くのに必死で音楽表現のようなものは感じませんでした。譜面見ていたからかな?フレーズの途中から発声が浅くなってしまいフレーズの最後はシャウトまではいかないけれど力技で頑張っているように聞こえました。

 

ピアノ伴奏が淡々としすぎていたのも面白みがなかったことの原因かもしれません。

 

日本語

日本歌曲の歌い方が気になりました。先に書いておきますがユシュマノフが外国人だから気になったのではなく日本人オペラ歌手でも同じことがいえます。

 

「荒城の月」(瀧廉太郎作曲)がわかりやすかったので代表例として挙げておきます。

 

まず出だしの歌詞「春高楼の花の宴」部分が最初の3つの音、「は」「る」「こ」以降の歌詞が不明瞭で全く聞き取れませんでした。私の母国語なのに聞き取れないこともあるものだ。3番の「今荒城の夜半の月」は綺麗に聞こえました。他は1番と同じく不明瞭でした。

 

基本的に一音に対して一個の文字しかないことが歌いにくいのかなと思いました。一個の音符で「はる」と歌うのではなく「は」と「る」で違う音符になっているということです。母音を伸ばしている時間が長いので音と音の切り替え、文字と文字の切り替えが上手くいかなくて不明瞭になるのかなと思いました。

 

どんどん次の子音がやってきても言葉が流れてしまいますが、「荒城の月」のような歌の場合は少ない子音たちを丁寧に扱う必要がありそうです。

 

また声に無駄な深さが出てしまいました。最初は全ての音を体の深いところから作っているからそのような声になったのかなと思いましたが、深みのある声を無理矢理つくっていたようにも感じます。

 

深さがあるのに言葉が外に出てこない。ぼーぼーした体の中だけで響いているような声になってしまいました。曲に合わせて調節した声だったりするのかな?だとしてもあまり良くないですね。出てこない歌詞を探しに行くのは大変だ。

 

「荒城の月」に関しては辛辣に例えるならオペラ歌手のモノマネをする人がやりそうな歌い方でした。

 

イタリア語を始めとする外国語に苦戦する日本人歌手が多いながらも日本語が一番難しいことを宣伝したい今日この頃です。ユシュマノフに対して、逆に考えれば日本語ネイティブと同じ部分が気になるということは相当なレベルで日本語を習得されているということですよね。すごい以外の言葉が見当たらない。

 

発音が一番美しくスムーズだったのは意外にもドイツ語です。短い曲でありシンプルなのでドイツ語の発音に大きく注意を注いで歌えるという面はありますが、子音がよく飛んでいき母音が的確に伸びている歌唱は安心して聞けました。

 

その他印象

ガチ勢よろしく早くから並んでいたのでリハーサルも拝見しておりました。(なるべく聞かないようにしていましたが。)

 

ユシュマノフが出てきたときに私の近くにいたマダムズが小さい声ながらも「キャ!」みたいな反応をしていてユシュマノフのファン層はこういう感じなのかと思いました。混ざりたかった。

 

リハーサルで声をセーブ(推定)しているとき方が好みでした。事実上の公開リハーサルになりながらも力みがなく本番より声の柔らかさがありました。本編よりアンコールの方が上手な歌手は多いですが、同じで力が抜けている声の方が良く聞こえますね。

 

以上です。

どう?私の感想緩い?緩く書けてる?

 

1曲だけですがムソルグスキーの死の歌と踊りが聞けたのは嬉しいです。是非4曲ともお願い致します。

 

ラ・フォル・ジュルネに金を払っていないので来年は有料公演に行ってみたい。プログラムを見る限りでは好みとは離れていますが色々聞ける機会ですので来年は逃さずにチャレンジしてみます。

 

おしまい。

 

バリトン: ヴィタリ・ユシュマノフ

ピアノ:山田ありあ