三島の見解

見ると観る、聞くと聴くは使い分けておりません。

【オペラ】セビリアの理髪師(NISSAY OPERA2022)

2022年6月12日(日)14:00公演

日生劇場

NISSAY OPERA2022

セビリアの理髪師

 

 

 

 

おはようございます。

こんにちは。

こんばんは。

三島でございます。

 

 

 

 

日生オペラのセヴィリアの理髪師を観劇して参りました。

 

 

 

セヴィリアの理髪師といえば、ソプラノもテノールもキーキー言わないことに定評があり(?)、耳に優しい作品です。ありがとうロッシーニ先生。現在と発声方法が違うとは思いますが、ロッシーニ先生の「テノールの高音うええええええ」(語弊あり)という意見には全面同意でございまして、美しく出すことができないならHiC(高いド)にこだわらず、自分のいい声をアピールできるレパートリー作りを目指していけば良いのでは?と私も(ロッシーニ先生と並ぶな)思っております。オペラ歌手としてやっていくなら、出せないと話にならないのかもですが、なんか、こう、『ごまかしHiC発声法』が確立されればいいのにね。

 

 

 

 

本公演の劇場は日生劇場

私は、ブロードウェイと銃弾ぶりの日生劇場

なんと1年以上前。

これの感想書かなかったな。感想がないというのが感想。

 

 

 

お近くに東京宝塚劇場・帝国劇場・シアタークリエがあり、劇場が集まっています。

新国立劇場もここにあればいいのになっていつも思っている。銀座が近いからおハイソな方々の夕食にも困らないしね。目の前の帝国ホテルでもいいしね。(おハイソな方々の夕食を心配する三島)

 

 

キャパは1334席とのこと。本公演はオペラなのでオケピ使用でマイナス96席。本公演は1000人は入っていたと思う。リニューアル済とはいえ、設備の古さは否めないが、逆にとれば、歴史を感じることができる。50年以上ここに存在し、見る演目は違えど、今日と同じように観客が楽しみにしながら劇場に入る姿が同じであることを認識させる。劇場が楽しい場所であり続けたから今も存在するのだと思う。(いいこといった。)

 

 

休憩のトイレの混み具合は宝塚並み。

『最後尾こちらです。』がはじまるからコミケかもしれない。

 

 

 

では、感想にいきましょう。

 

 

 

 

 

関係者に気をつけろ

公演の感想の前にあるおじさんに対する感想なんですが。

私が座った席の近くに小ネタに対するリアクションがいちいち大きいおじさんがおりまして、1人で5人分くらい爆笑するのですよ。人のリアクションってそれぞれだし、普段はそんなに気にしないタイプなのですが、全てに同じレベルでリアクションするのでちょっと「???」となりました。全部に爆笑するってある?うるさすぎて身内が身内で盛り上がってるパターンなのでは?と思っていたらやはり関係者。休憩時間に関係者エリアに入っていくのが見えました。身内確定案件だった。関係者が盛り上がっていると関係者のための公演って雰囲気が出ちゃうのですよね。身内ほど静かに見た方がいいのでは?と思いました。休憩時間に誰と知り合いとか誰と食事にいったとか謎のマウント取り出す人と一緒よ。私が知らないだけで、本公演が身内公演だったのならしょうがないのですがね。

 

 

 

 

 

全員声が良い

日生オペラは全役オーディションなのかな?オーディション事情知らないけれど、検索するとオーディション情報がでてくる。もし、そうだとしたら、よくここまで良い声をお持ちの人を全員集められたなって思いますよ。歌が上手いとか、技巧が素晴らしいとかを置いておいて、まず持っている声が良い。ときどき、「持ってる声がよくない」とか「いい声じゃない」という意見を聞きます。正直、「それはどうしようもなくね?」と思うのですよ。訓練でどうにかなるものではないじゃん。「顔がダメ。」って言われたら整形とか手段がなくはなけど、声って整形できるか?なに?整声?だがしかし、本公演の声が良いキャストの歌を聴くと、「もともとの声まじ大事」ってなりますね。切ないが。技術でカバーできないものがあることを知った。ベルカントオペラだから特にというのもありますが、本公演の完成度の高さに大きく貢献しているのは、キャスト一人一人の声のよさ(もしくはロッシーニオペラとの相性に良さ)だと思います。

 

 

 

 

 

序曲

セヴィリアの序曲長いなって思っています。好みです。音源聞いてると、CD壊れたかと思うくらい進まないのよ。かけっぱなしにしてちょっと離れて戻ってきても進んでないのね。リピートかかってるのかと思うくらい。いやどうでもよいな。

 

雑に言うと、同じ旋律を繰り返すので繰り返し部分の色つけ、棲み分けをどうするかって問題はでかいのかなって思う。本公演の序曲では、このあたりが退屈だった。出だしの立ち上がりが微妙。ロングトーンの最後にぜんぶ「?」が付いているような演奏だった。「あってます?」みたいな。自信のない回答をするときの小学生だった。メロディの裏の「チャッチャッチャ」(雑オブ雑)の音量バランスもおかしかった気がする。弦チームと弦じゃないチームのアンバランスさが目立った。指揮者で分けて上手・下手のバランスが悪く、オーケストラの音が分離していた。オケピの中はパートごとに座っているから、そもそも音の発信地点はバラバラなんだけれど、客席に届くまでには合わ去って一つになったものが届くじゃん。バラバラで耳に入ってきて「そこからは自分でお願いします!」と言われている感じだった。オーケストラのセルフサービス。しかし、後半から終音までは打って変わってよかった。ここから始まるオペラのワクワク感とオーケストラのエンジンがかかってきて、盛り上がりの絶頂で次の曲にバトンタッチしていく。オペラ・ブッファ(ファニーなオペラね)の序曲は「よくわからないけど楽しい!」って思わせないとね。踊り出しちゃう感じでお願いします。

 

 

1つ気になったのが打楽器の音。音の位置というか、響き方がおかしくて客席の下で演奏しているような音だった。「地面の下からこんにちは」なの?音の方向が安定しないっていうか、狭い空間で跳ねるボールを放り投げてひたすらバウンドしているような音(どういう例え?)。響き以前に、楽器の音そのものも微妙なのかなと感じた。「ハードオフで買ってきた楽器で演奏しております。」って言われたら納得する。YouTubeハードオフ店員の人上手いよね(関係ない)。打楽器の音は最後まで気になったな。

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フィガロくん

上手い。歌よし、芝居良し、見栄えよしとオペラ歌手には珍しい3ポイント全て抑えてきました。(オペラ歌手はポイント制ではございません。)お金を貰った分の仕事はめちゃくちゃ真面目にこなす労働者のあるべき姿みたいなフィガロくん。聴かせどころのような部分はないが、役を自分のものにし、軽快に、面白く、上手く歌うことができていてとても良かった。正直、フィガロの登場のアリアは有名すぎてハードル上がっているから、どんなに上手くても微妙に聞こえそうだなって思っていたけれど、普通に上手だった。構えてて損した。(褒めてる。)

 

伯爵より金持ってそうなフィガロくん。でも金持っている風貌っていうのが、成金ぽさを演出していた。見た目に金持ち感を出さない伯爵との対比が良かったと思う。ブランドロゴ全開の成金野郎と、実はえぐい値段のスーツを着ている生まれながらの金持ちみたいなね。お芝居も過剰といえば過剰なんだけれど、歌が上手いから邪魔にならずに+αの要素として楽しめる。登場のアリアでの「Figaro su, Figaro giù 」で手(指?)を上・下ってやってるのが可愛かった。

 

キャラクター性が際立つ役であり、目立とうとすれば全部持っていくこともできる役ではあるが、ロジーナ・伯爵を食わずに自分のポジションを弁えつつ、素晴らしいパフォーマンスを発揮する。フィガロくん、仕事の出来る子!!

 

 

 

 

 

ジー

上手い。こちらも上手い。とにかくアジリタが綺麗。1つ1つの音が独立しているが、流れはきちんとあり、転がるという言葉が相応しいアジリア歌唱。日本人のメゾソプラノは、無理矢理メゾっぽくしている歌唱の人が多いなと思ってましたが、本公演のロジーナは無理のないメゾソプラノボイスだった。声自体の暗さ(いい意味で)と、ロジーナの可愛らしさが相反するようで絶妙に両立しており、役のキャラクター性に声質がスパイスになっていて良い。今回の全歌唱において、一番下の音(多分)が響かないのというか完全に胸声に落ちてしまうのが、惜しいところだったが、如何せん元々の声がいいので、「そんなものか。」とスルーできちゃうね。

 

ジーナに対して、今まで可愛いと思ったことなかったのですが、本公演のロジーナは可愛かった。手紙を書くにも、伯爵と話すにも、怒ることにも全力で、愛おしいロジーナだった。表情がコロコロ変わり、芝居面でも退屈させることなくみせてくれる。ロジーナもフィガロに次ぐ強キャラなので、伯爵の存在感を消してしまうこともできるが、自分の存在感は出すけれど、他を潰すこともせず良い塩梅だった。

 

 

 

 

 

伯爵

上手い。YES!ベルカントテノール!な超正統の歌唱。だから面白くはないってのはあるけどお耳に優しい。アジリタが長いときに息が足りなくなってくる(推測)と潰れ出すのが惜しかった。終幕の前のアジリタは、疲れを感じさせずにやりきることで超人っぽさを見せることができますが、そこまでではなかった。人間だった。とはいえ、元々の声がいいので、引っ掛かりはしない。

 

ジーナとフィガロが芝居の上手さが光る分、伯爵にはもの足りない感じもありますが、ここで3人ともできちゃうと舞台上がうるさくなる可能性が高いので、バランスを見ると伯爵はこの程度が丁度いいのかもしれません。伯爵って役柄の割に仕事が多いよね。変装とか侵入とか。

 

個人的に好きだったのは、ギターを持って歌う場面。ちょっと声を強めに出していたのかな。この曲だけ声がちょっと重くなって今までと雰囲気が変わりかっこよかった。

 

 

 

 

 

演出過多ぎりぎりライン

小ネタが多い!!

 

マスクをつける・握手をしない・アルコール消毒をするなどのこのご時世ネタがふんだんにありました。私は感染対策ネタいらない派なのですが、客席のウケ具合(関係者おじさんを除く)を見ると効果ありですね。世間もこのネタに笑えるようになったんだなと。効果的な小ネタは大歓迎ではある。ドン・バジリオが、ロジーナが手紙書いたテーブルで人の5倍くらい消毒をしていましたが、それなら自分専用のを持ち歩いていて、懐から出すくらいやった方が面白くない?「絶対自分のしか使わない人いるよね〜。」ってなるし。後、2幕の「Colla febbre〜」(「熱がある」)の歌のところはコロナネタ完全無視で笑った。レチタティーヴォ以外では小ネタ挟まない的な。ここは一貫性が欲しいよね(小ネタに一貫性を求めている人がいるのか説はある)。歌の邪魔はできないけど、全員で一歩下がるとか、口を覆うとか、なんかリアクションあった方が面白かった。

 

 

時事ネタ以外にも、夜の女王歌ったり、ロジーナが馬鹿力で鉄の何か(あれ何?)をへし折ったり、笑いが起きる公演だった。しかし、多い。歌手の技量が安定しているから、たくさんのネタを入れても、邪魔にならないというか、進行の妨げにならないというか。一定のラインを超えた歌手が揃うとできること増えるんだなという感想っす。

 

 

 

 

 

引越し対応型舞台セットなのか

セットが寂しい。切ない。

 

全国ツアー(ツアーってほどでもない)に行くときに持ち運びしやすいセットにしたのかな?解体しやすそうだなって思いながら見ていた。安っぽい感じは否めない。ロジーナの部屋の窓なんて絵だし、絵を外してロジーナが出てきたし。この画像のままの絵なんだわ。

 

ベリベリって出てくるロジーナに会場はウケていたけど。窓をつくるには資金が足りないということか。いや、演出効果だと思うことにするよ。

 

ステージの上にステージを作っていて、ステージとステージ裏両方を使いながら進行していく演出。盆(でいいのか?)を場面場面で回転させて舞台転換をしていた。5分に1回くらい回す(言い過ぎ?)から、回しすぎじゃねとは思った。このセットの演出効果はよくわからず、お金ないんだなあ、という感想で終わった。

 

 

 

 

 

 

アリア完全見せ場宣言

ナンバーオペラだからできる演出のような気もしますが、アリアは歌っている歌手にピンスポットを当てる(実際に当ててはいないが)演出だった。アリアだから当たり前なんだけれど、演出でそれを強調する。後ろで合唱が芝居や振りをやっていてもあくまでメインとバックダンサーの関係で、お互いのラインを守りながら演出がされているのはさすがだな、と。

 

アリアが終わった後に、拍手の時間を作るのも面白かったな。ナンバーオペラだとそのあたりが比較的自由がきくから余計ですが、アリアー拍手ーレチタティーヴォ、と隙間で拍手というより拍手の時間を設けていた。歌手もお辞儀しちゃうしね。これが狙いなのか、たまたまそうなったのかは知らないけれど、本公演がこの後、全国ツアー(ツアーってほどでもない)に出かけることを考えると、オペラ初めての人にはとてもわかりやすいなと。拍手するタイミングがわかりやすいというのも、もちろんなんだけれど、一番大きいのは、進行が掴めることだと思う。アリアが終わったら、ちょっと休んでまた集中するっていうのを小刻みに繰り返せるから、「いつまで続くの?」とはならずに、落ち着いて観劇できる気がする。

 

 

 

 

上手いよ!上手いんだけど!

歌手の歌の技量と芝居とオーケストラの安定感を総じたとき、全員日本人でこのクオリティが出せるのかは純粋にすごいなと驚いた。取ってつけたようなお芝居もないし、キリキリした歌唱もない(これはロッシーニ先生のおかげだけど)ので終始クオリティが安定し重箱の隅を突かなければとても良い公演だった。1番高額な席でも1万円と新国の半分以下なのにクオリティは新国以上だった。舞台セットはちゃっちいけどな。

 

 

 

だが、しかし、よく深い三島さんはこう思うのです。

 

「1万円だして1万円のクオリティがくるのは普通じゃね?」

 

 

最近の博打観劇のせいで、チケット代がまんま返ってくる公演に出会うのが新鮮でしょうがないから純粋に感動しているんだけど、落ち着いて考えれば普通だよね。元を取ろうとか、損したとかは思わないタイプではありますが、逆に「元が取れない公演ってなによ?」とも思います。

 

 

現実離れした超人歌唱を聴いて、心から驚き、その技量に感服した

 

という素晴らしいではなく、

 

歌が上手く頑張ってた先輩が、大きい舞台に立ち、堂々と歌う姿を見て感動した。

 

という感覚の方が近い。

上手いし満足したことには変わりないけどベクトルが違う。

まあ、先輩でもなければ後輩でもないんだけど。

 

 

 

 

 

全国ツアーはあるものの東京はたった2公演だし、それをWキャストで割り振るから実質1公演。

ちょっともったいないよね。

来週末も公演したらいいと思うよ(誰?)。

 

 

 

 

 

 

 

 

では、さようなら。

 

 

 

頑張れ!先輩たち!!!!

(先輩でもなければ後輩でもない。)