2023年2月1日(水)19:00公演
お世話になっております。
三島でございます。
この日も劇場へ。
前日、前々日とマリインスキー劇場に行きましたがこの日は念願(?)の新しい劇場のマリインスキー劇場2の方へ。
マリインスキー劇場に比べてマリインスキー劇場2の客席はシンプル。現代のホールの客席という感じです。席の間隔は広めでした。後方から入ってステージ付近まで歩くのはいい運動になると思います。ホワイエはキラキラで天井からキラキラした何かが吊り下がってた。(これ↓)
サントリーホールの音響と似たような印象を受けた。客席の音がめちゃくちゃ響く。途中退場する人の移動の音が響きすぎて気になってしまう時が何度か。素晴らしい音響だけれど、それゆえに客席の音も拾ってしまうと。サントリーホールも「めっちゃ響くからプログラムの音とか気をつけて!」とアナウンスするもんね。
プログラムを持っている客席係がマダムではなくお姉さんだった。
見た演目は「シチリア島の夕べの祈り」。もしくは「シチリアの晩鐘」もしくは「シチリアの晩祷」。とりあえず全部書いておこう。(以下「シチリア島の夕べの祈り」で統一。)
ヴェルディ先生でございます。
今回は劇場にはたくさん行ったのですが、ロシアオペラとはタイミングが合わずに、ワーグナー、ヴェルディ、ロッシーニの作品を観ることになった。ロシアオペラが観れなかったのは残念だけれど、ロシアの劇場でどのように、どのレベルで外国のオペラが処理されているのかを観るという大義名分(?)があった。日本も同じようにイタリアやドイツは外国で言語は外国語である。似てるとか繋がりがあるとかは置いておいて、同じ外国のものを相手としたときどんな違いが出るのかな?と思いまして。まあロシアオペラ見たかったけど。
「シチリア島の夕べの祈り」は初めてです。序曲はルカ・サルシと仲間たちのリサイタルで聴いたけれど、全幕を劇場で観るのは初めて!因みにこの日の上演時間は4時間30分(休憩含む)。前々日に何とか回避した深夜帰宅(宅ではない)が実現してしまいました!終幕が24時ちょい過ぎで、ちょっとだけカーテンコールを見てから劇場を出た。深夜のサンクトペテルブルクを爆走。今思えばタクシーに乗ればよかったのですが、なぜか「走った方が早くね?」と思っていたので。まあ見知らぬ土地の深夜は普通に怖いよね。
ではオペラの感想へ。
オーケストラ強い
オーケストラが充実している。完璧すぎて何回か「録音?」と疑ってしまった。
序曲は、記憶に新しいルカ・サルシと仲間たちのリサイタルで聴いた演奏よりも静かに演奏されていた気がします。出だし部分は暗くなりすぎない演奏。若干のもの足りなさを感じましたが、次のメロディが来たときとの段差がなく、緩やかに客席をオペラの中に入り込ませるような演奏だった。序曲単体ではなくオペラ全幕として演奏されるときの序曲となると出オチ感を出さずにじわじわと引き込むような演奏の方が効果的なのかもしれないですね。特に、この演出では、序曲演奏中にスクリーンに映像が映し出されて置き換え演出の説明がされているので、舞台上と音楽が喧嘩しないように調整しているのかもしれない。
1つ1つの音が独立しているが、調和しているのがよくわかる。1人1人がきちんと仕事していると全体の完成度も高くなるということだね。「個」の力だね。
ずっとオーケストラの演奏だけ聴いていたいと思えるような安定感と存在感だった。オペラを観てオーケストラ完璧だなと思ったのは初めてかもしれない。隙がなさすぎて歌手が歌いやすいのか歌いにくいのかわからない。音楽的にはめちゃくちゃ歌いやすと思うけれど、何か失敗してもオーケストラのせいにはできないような緊張感がある。歌手がいなくても満足できる音楽だった。歌手が出てこないオペラはオペラではないけれど、別にこのレベルのオーケストラなら問題ない。
バレエも充実
3幕のバレエが全く飽きない。ダンサーがちょっとお笑いっぽく、滑稽な振りをするのですが、それがちゃんと面白い。滑稽な振りを楽しめる。滑稽な振りをやりたい滑稽な人にならない。バレエが上手なのはもちろんのこと、お芝居要素の表現も豊かで表情1つ1つも素敵だった。衣装も種類豊富が可愛かった。金かかってるな。バレエが充実しすぎててオペラを観に来たのか、バレエを観に来たのかわからなくなった。この後のオペラ本編への繋がりがスムーズで良かった。
イタリア語さんフェードアウト
イタリア語がイタリア語に聞こえない問題はある。というかあまり重きを置いてないのだと思う。言葉を扱うお仕事なので大事にしてほしい気持ちはあるが、「これだけ歌えればいいでしょ?」と言われれば「あ、はい。」と答えてしまう。ソプラノやテノールの高音はもう発音は捨ててもしょうがないと思いますが、中音域やバスバリトンは頑張ってほしいけれど。でも別にイタリア語はいらないのかもしれない(洗脳)。字幕に原語を出してほしい。
スーパーバスバリトン祭り
バスとバリトンの安定感。バスとバリトンが安定している時の安心感と心地よさ最高。お医者さんのブレスの持ちが異常だった。ブレスが気にならないってホントに重要だよね。いつ吸ったのかわからないくらい自然に、もしくは芝居要素を込めてブレスをすることが大事だ。お勉強になった。
高音域担当の方々
テノールさんは安定しているときと詰まっちゃう時の差が顕著だった。お持ちの声にもとても恵まれている歌手だったので基本的には素晴らしいのだけれど。声自体に明るさがあり、いいポジションで歌えているときは聞き応えと感動があった。ぬける声だけれど主張すぎるような鬱陶しさはない。しかし、喉にへばりついているように声を出すときもあった。終始安定しない歌唱はちょっとストレス。コンデションのいい日に聴いてみたいです。
ソプラノさんは声の通り道は綺麗だか発音のぼやぼや度合いが一番気になった。ソプラノだから高音はしょうがないけれど発音を頑張らなければならない音域もある。高音の上げ方が力任せのときと綺麗に上がるときがある。このあたりはテノールさんと一緒だね。力任せに声を出しても、その後に戻るというかちょっとは良くなるので聞くに耐えない感じではない。ただもっと上手く歌える人ではあるのだろうなと思った。
そして大注目のソプラノアリア。「Mercè, dilette amiche」です。
とりあえずヴェルディ先生に言いたいんですけど、この凄まじく難しい曲をなんでこんな終盤に持ってきたのですか?ねえ?答えて!?
前奏のテンポが早くてこのテンポで歌うのしんどくない?と思っていたら歌の入りからテンポ落とした。まあこの終盤によく歌えるものだ。お持ちの声的に転がらないのではないか?と心配していましたが(誰?)、全然大丈夫だった。急上昇・急降下・急旋回のアリアです。つまりスペースマウンテンです。(ディズニーランドとか久しく行ってない。)とりあえず完走できるだけで素晴らしいよ。高いドから下がってくるところの「〜barza il cor.」の部分の「il cor」の前にブレスが入ったのが気になったけれど。ここではすわない人が多いかな?というか着地(着地?)の音低すぎね?いやー大変よこれ。本当にお疲れ様です。
歌手や合唱に対してはいろいろ思いますが、あのレベルの高いオーケストラにしっかりついていけているだけでも十分素晴らしいのではないかとも思います。歌いやすいとは思うのですが、何かあったときに歌手が気を病みそうなくらい完璧だった。カーテンコールで歌手がオケピに向かって拍手するけれど、この公演は深々と頭を下げなければいけない。「素晴らしい演奏をありがとうございます。私も精進致しますので、今後とも、何卒よろしくお願い致します。」という感じっす(?)。
マリインスキー劇場3daysも無事終わり、サンクトペテルブルクを離れます。
ありがとうサンクトペテルブルク!また遊んでください!!
サプサン号に乗り、数年ぶりのモスクワへ。
終幕の銃声めっちゃ怖かった。