2023年2月3日(金)19:00公演
タガンカ劇場
オネーギン
お世話になっております。
三島でございます。
新国立劇場の来シーズン演目が発表されましたね。いろいろツッコミたいのですが、なぜか、自分の気持ちを書いていると新国立劇場嫌い人間のようになってしまうからちょっと考えている。勝手に書くけど。
違いますよー。嫌いではないですよー。国立の劇場なんだからまじ頑張れってことです。
さてさて、モスクワへ到着して2日目に観たのはオネーギン(ミュージカル)です。オネーギン(オペラ)ではなく、オネーギン(ミュージカル)です。サンクトペテルブルクでオネーギン(演劇)にもありつけそうだったのですが、マリインスキーを優先しました。ロシア(といってもサンクトペテルブルクとモスクワだけど)にいると私が3人くらい必要になる。こっちの劇場に行く私とあっちの劇場に行く私と睡眠する私と少なくても3人は必要。
さて、こちらのオネーギンはカナダ原産のオネーギンです。オネーギン(カナダ)です。ロシアで作られてた原作が、カナダでミュージカルになり、ロシア人が上演し、日本人の私が観る。わお、多国籍。
このミュージカルがロシアに上陸したのが2021年ごろ。タイミングが合えば観たいなーと思っていましたが、早い段階で観劇することができました。
では感想いってみよー。
モスクワのミュージカル水準
バレエやオペラは大きな劇場や有名な団体があり、よく注目されますが、意外なことにミュージカルもとてもレベルが高い。初めてモスクワでミュージカルを観たときに「まあ日本よりはレベルが高いだろう。」というくらいの期待低めな気持ちで劇場に行きましたが、終演後にはそんな気持ちで観に行ったことに謝罪せねばならないくらい高水準。歌が歌える・踊りが踊れる・芝居ができるが当たり前に揃っている。それも素晴らしく上手。まあ芝居の上手い下手はロシア語わからないので表情と動きでの判断になりますが、歌と踊りはしっかりしている。当たり前なのですが。
日本のミュージカルに慣れているとありがたみを感じる。日本のミュージカルを観に行くと、歌えない人や踊れない人が絶対に混ざっていて、芸能人の暇つぶし=ミュージカルと思ってしまいます。だから日本のミュージカルは好きじゃない。チケットも異様に高いし、某プレイガイドもアホみたいに手数料取るし。
ワクワクしながらミュージカルを観に劇場へいけるのが幸せだった。
まいねーむいずうらじみーるれんすきー
英語版の音源は某サブスクにて配信されているので、予習がてらにときどき聴いていました。プーシキンの原作だけではなく、我らがチャイコフスキー先生のオペラにも基づいて作ったミュージカルといっているくらいなので、オネーギン(オペラ)の音楽をふんだんに取り込んで作曲されています。なので耳馴染みはいいです。ミュージカルが嫌いでないならば楽しめる音楽たちだと思います。ただちょいちょいダサい。
CD(音源)2曲目にあたる「Oh!Dear Father.」で、英語版だと「My name is Vladimir Lensky.」と高らかにレンスキー君が自己紹介を始めるですが、ロシア語だとどうやって言葉合わせるのかなと思って1番気になっていました。そしたらまさかの「Bonjour!Я Владимир Ленский.」とまさかのフランス語との合わせ技。なるほど。そうしたか。ここの自己紹介ソングのレンスキー君元気すぎて音源で初めて聴いたとき「レンスキー君!お元気そうで!!何よりです!!!」と思いました。
モブから「オネーギン」と書いてあるワインボトルかウイスキーボトル(のようなもの)を渡されて、喜ぶレンスキー君かわいい。
このミュージカルのレンスキー君はめちゃくちゃ明るくてみんなの人気者感がある。後、本公演のレンスキー役の人が華やかで、オネーギンを喰っている。オネーギンどこ?状態。ミュージカルのタイトル変わりそう。「オネーギン」改め「元気なレンスキー君」。レンスキー君は1曲目と死んだ後はモブとしてアンサンブルに参加。華やかだからめちゃくちゃ目立つ。因みに写真よりも劇場(生)で観た方がかっこいい。
オネーギンとの決闘は多分カーチェイス。ここの演出よくわからなかった。とりあえずレンスキー君は負けたので、モブに転身し、グレーミン公爵に会うといったところか。
まさかの生演奏
生演奏だった。録音だと思っていたので嬉しい!舞台セットの上の方(3階?4階くらいの高さ?)にいらっしゃった。ドラムとギターとチェロとビオラらしい。キーボードの音も聴こえたけけれど、HPに記載なし。姿は見えないけれどストレスの感じない演奏は最高だった。
ニャーニャ(乳母)とトリケが同じ人
トリケはソリスト扱いだけれど、ほぼモブ。因みにママもグレーミン公爵もほぼモブ。グレーミン公爵モブすぎて一瞬で終わった。
トリケはブリヌイ屋さん(多分)。ブリヌイ作りながらタチアナに対して歌うのが面白かった。オペラだとちゃんとした見せ場になっているが、こちらのトリケさんは仕事しながら。忙しいトリケさん。
そんな忙しいトリケさんは、ニャーニャになって手紙を届けに行っています。ここの演出が面白くて、ニャーニャがその場で走るふりをして周りの人や木や看板を持ってニャーニャの横に立ち走ってます感を出す。雪が降ってようが、森の中だろうが駆け抜けるニャーニャ。ものすごい肉体労働をしているニャーニャ。お疲れ様です。ものすごくわかりやすく手紙を読んでるのが面白かった。堂々と読む。
手紙はエレキギターにのせて
タチアナさん。車のボンネットにたってはいけません。
オネーギンへの手紙を書くシーンは最初は普通に書いていたが、途中からエレキギターを持ち出し、車のボンネットに上がり、エレキギターを弾きながら手紙を書き終える。
タチアナさんがパーティーに来たオネーギンからクマのぬいぐるみをもらうのですが、テーブルの端と端に座り、お互いの顔を見ずにぬいぐるみを渡すの切ない。しかしエモい。タチアナさんはスッと受け取るけれど、その後ずっと持ったままでこれまた切ない。もしできたらオネーギンがクマのぬいぐるみをチョイスするシーンを入れてほしい。
手紙返却のシーン(言い方)はオネーギンの「Я люблю вас. как брат.」が切なすぎた。しかもやたら長い。伸ばすのが憎いね。タチアナさんに手紙を返すのにたくさん手紙を持っていて、タチアナさんからの手紙を探すのが面白かった。1枚にだけキスしていていました。もちろんタチアナさんのではない。誰から貰ったんだい?
オネーギンの浮き彫り
オネーギンが周りと比べて違う人なのがわかりやすかった。モブと話しをするし、レンスキー君とも仲良しだけれど、ちょっと怖いというか、不安定というか。何かが違うわけではないけれど、なんとなくの異質さがとても良かった。
パーティーでオネーギンがオリガで遊び出すところは「ああ、やっちゃったー。」と言いたくなるほど、空気が変わる。この後の4重唱的な部分がとても素敵だった。テーブルを使って4人が順番に前にでてきて、各々歌う。
タチアナに対して一生懸命手紙を書くオネーギンがいました。たくさん書いてましたがタチアナさんは読まずに丸めてポイしていたのであなたの頑張りは報われませんでした。タチアナさんが機械的に手紙捨てるから「1枚くらい読んであげてー!」と言いたくなりました。
やっぱりさ、歌がどうだ発音がどうだオーケストラがどうだとか考えずに、ストーリーに集中できるのって幸せだよね。私はオペラやバレエがミュージカルが好きですが、オペラやバレエやミュージカルを手段としている物語が好きというのが正しいのかもしれない。だから物語に集中できることは本当にありがたいし、手段に対して厳しくなってしまうのだと思う。
幕間に流れるレンスキー君のアリア(オペラ)。浸っちゃうからやめてほしい。誰の録音だったのか?
それを気にすることなくロビーへ向かうロシア人は強い。
と思ったら舞台転換の都合上ロビーに追い出される私。幕降りないもんね。
では、また劇場で。