三島の見解

古の女子高生

【コンサート】ウルトラウト・マイヤーさよならコンサート

2023年3月14日(火)19:00公演

サントリーホール

ウルトラウト・マイヤーさよならコンサート

 



 

 

 

 

 

 

お世話になっております。

三島でございます。

 

 

 

 

 

 

 

昨日はサントリーホールへ行きました。

サロメぶりのサントリーホール

サロメ本当に最高だった。今すぐあの空間に戻りたい。

サロメの感想はこちら↓)

mishimashikahika.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラウト・マイヤーさんのさよならコンサートということで、さよならなコンサートだそうです。もうこれ以降彼女のコンサートは日本ではないそうです。個人的にはさよならコンサートではなく、初めましてコンサートなんですけれど。最初で最後ってやつですね。切ないです。ピアノ伴奏でバリトンさん(ハッセルホルンさん)も連れてきた。バリトンさんは背が高く、がっしりしていてステージ映えするいい歌手だった。

 

 

 

 

 

 

全てドイツ歌曲で構成されているコンサートでした。ドイツ人がドイツ語の歌だけを歌うコンサートです。そういうと簡単そうに聞こえますが、自分の国のものを歌うとなると言い訳も逃げ道もない。つまり真っ向勝負なわけです。失敗はできないのです。いや、ステージに上がる以上失敗するなという話ですが。(失敗してもいいけどカバーを忘れずにね!)

 

 

ネイティブなのかそうでないのか、その国で育っているのかそうでないのか。歌だとこの2つの要素がかなり影響すると考えます。もちろん、勉強して勉強して勉強すれば補える部分はありますが、魂レベルのところでどうしても差が出てしまうよね、と。私は、「その国のものはその国の人に任せておけ。」論者(論者?)なので、このコンサートの曲目は本当にありがたかった。ドイツ歌曲好きだし。特にシュトラウスおじいちゃんが好きだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サントリーホールでピアノ1台と自分の声で演奏するというのもものすごい挑戦だと思う。それも歌曲。すごい。恐ろしいことをやってのけるな、と。オーケストラ伴奏やオペラアリアならまだしも。正直なところ、2人の声量を考えるともう少し小さなホールでやった方が映えたと思うし、歌唱をもっと楽しめたと思う。大きいホールの方が見栄えするし最後ならしょうがないけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では感想いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マイヤーさん

このコンサートのどこにお金を払ったのか。素晴らしい歌唱や技術にお金を払いたいという目的だったら歌手人生の終わりにいる人には払わない方がいいと思う。もちろんマイヤーさんの歌唱は年齢(60代後半)を考えれば、素晴らしいものであり価値がないわけではない。でも、技術的なものを求めるならこのコンサートは行かないよね。ずっと応援していたわけでもないし。私はドイツ歌曲が好きなのでドイツ歌曲に絞ったコンサートというところに惹かれてチケットを買いましたが、終演後に思ったことがあります。それは、このコンサートに払ったお金(もちろん使った時間も)はマイヤーさんの歌手人生に対する敬意だな、と。技術ではなく彼女が歩んできた歌手人生の全てに、彼女の音楽の背景にお金を払ったのだと。それくらい1曲1曲が濃く、技術が安定しない部分もあったが、とても丁寧な歌唱だった。音楽の中に、奥に何があるのかを伝えてくれる歌唱だった。とても幸せな時間だった。

 

 

 

 

 

魔王をアンコールに持ってくるあなたが魔王。声の疲労は否めないが、口の開き方が1番綺麗だった。中音域はあまり口を開けないで歌うタイプの人かと思っていましたが、魔王はどの音もしっかり口を開けて歌っていました。アンコールに魔王やってコケるわけにはいかないからなあ。大変だろうな。特にピアニスト。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリトンさん

言葉をとても大切にしながら歌唱する人だなと終始感じました。これはネイティブもしくはネイティブ並にその言語が使える人の特権ですよね。ネイティブじゃない人はどうしても文章(=フレーズ)で詩の内容を把握しがち。「今、どの内容のフレーズを歌っているか。」となります。しかしネイティブは「どの単語を歌っているか。」になります。あくまで私の耳で聴いた限りですけれど。音楽的にはどちらでも支障はないですが、単語の意味がしっかりわかっている人の方が、表情だったり音楽表現が豊かになりますよね。それを強く感じました。言葉に対して自由なんだなと。悲しい。私も頑張る(何を?)。

 

 

 

 

 

 

1曲目は緊張していたのか、もしくは響きを探っているのかわかりませんがいまいち乗り切らない感じでした。ピアニストも同じく。このままだったら微妙だなあと思いましたが、2曲目からは軌道に乗りましたね。大きな体に対して(対してってわけでもないけれど)とても繊細に緻密な音楽作りをされる方だなと。フレージングが綺麗でブレスの位置を感じさせない。マイヤーさんとは違いまだまだこれからもたくさん歌っていくオペラ歌手が敢えて、今、歌曲で勝負するのは頭が下がります。素晴らしいです。低い音がピアノに負けてしまうくらい響かないのは低音担当としてはどうかと思うので頑張ってほしい。でも歌唱に関するストレスはそれくらいだった。素晴らしい歌手にまた出会えた。感謝。感謝。

 

 

 

 

アンコールで子守唄(シューベルト)を日本語でも歌ってくれた。上手いんですけど、それより「可愛い」が勝った。バリトンさんが日本語の歌詞と向き合った時間が1分でもあったかと思うととても嬉しい。ありがとうございます。「う」の発音が綺麗にドイツ語の「u」の発音で大変勉強になりました。「い」も口を横に引っ張るよね。発音で思い出しのですが、マイヤーさんもですが巻き舌がスムーズだよね。言葉の中に含まれている巻き舌。ネイティブだからか?でも現代のドイツ語で巻かないよね!?私の知っている巻き舌は「はい!巻きますよー!」というような主張の強い巻き舌。組み込まれているのか外付けのなのかの違いと、巻き舌の位置が単語の終わりなのか、中なのかによって変わるものだなあ、と。難しい。

 

 

 

 

 

 

バリトンさんは是非「冬の旅」を歌いに日本に戻ってきてほしい。誰に言えばいいの?NBSに手紙かけばOK?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では気になった曲の感想を少し書いて終わる。

 

 

 

 

シューベルトシューマンに紛れるシュトラウス

選曲のおかげでシューベルトシューマンに紛れても違和感なかったシュトラウスおじいちゃんの3曲。選曲を間違えればコンサートで浮いていたであろうおじいちゃんの曲たち。良い選曲。「Morgen」は「もう歌いらないのでは?歌曲選手権」の暫定1位であり、美しすぎる前奏に歌手も歌うことを放棄してしまう曲です。というか聴き惚れて自分の出るタイミングを見失いそう。ピアノ伴奏良かった。馬鹿みたいに繊細な前奏を丁寧に扱っている。ありがたい。この公演のピアニストはどの曲に対しても派手なことはせずに箱に収まった演奏というような感じでした。この言い方だと物足りないように聞こえるかもしれませんが、しっかり仕事はするけれど、はみ出たことはしないというよな実直さが好きでした。特にシュトラウス3曲に関してはそれがありがたいのだ。(だって派手になりがちじゃね?)

 

 

 

 

「Die nacht」「Zueignug」共にマイヤーさんが出だしの音を外しましたね。これはショックでしたね。「Zueignug」は色々気になって、まず、前曲「Morgen」とのつながりなのか、前奏がとてもゆっくり始まってそのテンポで歌うのかと焦りましたが、前奏2小節の間に段々スピードアップして歌からはいわゆる普通くらいのテンポになった。もし、つながりを意識したゆっくり前奏なら前曲と間を開けずに始めてほしかったなあ。本当に焦った。「dass ich fern von〜」が一つの単語ごとに切れており(=母音が短い)それはどういうことなのか確認したい。そうやって歌うものなの?「heilig heilig〜」の高音(ってほどでもないけど)はストレスフリー。さすがです。ここの処理にこの曲の全てかかっていると勝手に思っている。伴奏も盛り上がるけど上品な音だった。「Zueignug」は第1部の終わりに演奏されましたが、この曲って始めに歌うか終わりに歌うかしか選択肢がない気がします。というより中に入れない方が綺麗だと思います。「Zueignug」から始まるコンサートなんてカッコ良すぎる。誰かお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グレートヒェン

マイヤーさんが今回歌った中で一番良かったのではないでしょうか。

 

表情豊かに歌っていた。この曲の中に存在するお芝居を楽しめた。特に「sein kuß!」の後の表情がとても良かった。言ってはいけないこと言った、考えてはいけないことを考えてしまったかのような焦りと後悔と恐怖を音楽と表情で伝える。ここの高音とグレートヒェンの気持ちの一致がマイヤーさんの歌から伝わる。音楽効果を全面に生かした歌唱。「Sein hoher Gang〜」からは思った以上にテンポを落とした。雰囲気を変える。彼のことを思い出しているのがわかりやすい。最後の跳躍も、もちろんストレスフリー。オペラではないしたった1曲だけれど、そこにグレートヒェンを存在させることができるマイヤーさん素晴らしい。

 

 

 

 

 

 

Die beiden Grenadiere

バリトンさんのアンコール。この曲大好き。ドラマチックに歌うものだと思っていましたが、この公演での演奏はとてもシンプル。ピアノも歌も淡々としていました。淡々としているが力強くはっきりと、決して退屈なわけではない。「So will ich liegen〜」から盛り上げていくのかと思いましたがずっと同じテンションで進む。でもその中に魂を感じる歌唱でした。好きです。

 

 

 

 

 

 

ドイツ歌曲がたくさん聴けて幸せだった。歌曲に重きを置いたコンサート増えるといいなあ。アリアはオペラの中で聴きたいのです。コンサートはピアノ伴奏で精密な演奏を楽しみたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日はアンナちゃんだよー。

 

 

 

 

 

 

ではまた劇場で。