2024年4月18日 [木] 19:00公演
東京文化会館大ホール
東京・春・音楽祭
フーゴ・フォン・ホーフマンスタール台本
エレクトラ(演奏会形式)
お世話になっております。
三島でございます。
この日は引き続き東京春祭の会場へ。
リヒャルトくんのオペラを聞きました。
当ブログではオペラに対して見るという動詞を使っておりますが、この公演は演奏会形式だったので聞くを使います。深い意味はないです。
2023年5月に東京交響楽団(指揮:ジョナサン・ノット)にて同じくエレクトラの演奏会形式がありました。記憶に新しいです。1年以内に再び劇場で聞ける日が来るとは思っていませんでした。あまりにも早く次の機会に恵まれてびっくりしています。
(そのときの感想↓)
mishimashikahika.hatenablog.com
mishimashikahika.hatenablog.com
それでは感想いってみよー。
客席の拍手とブラーボの量とは裏腹に私は不完全燃焼です。
素直に自分が思ったこと、感じたことを書いていきます。
(以下全て敬称略)
開演前の舞台上の椅子の量!
この日一番楽しかったのは舞台が狭く感じるほどに敷き詰められた椅子たちを眺めていたときです。つまり開演前です。編成が大きいの。ぎゅうぎゅうなの。並んだ椅子たちが愛おしかったです。
客入りは良くないように見えました。二期会公演よろしく1階後方はぽつぽつと人が座っている程度。1階後方1列目中央の関係者席だけはみっちり埋まっていて面白かった。
1階前方は埋まっていましたが空席がなかったわけではない。1階サイドは後方よりは埋まっているがそれでも空席が目立つ。舞台上から1階席はスカスカに見えたのではないでしょうか?申し訳ないね。
上の方の席は埋まっているように見えましたが、その中でも高い料金を取っているであろう1列目は空席が目立ちました。私の見間違いだと思いたい。
平日の夜は入らないものか。珍しい公演だけれど1年以内に2回上演されているからなあ。新鮮味はないよね。特別好きでないとまた聞いてみようと思わないのかも。切ないね。
オーケストラ頑張る
指揮者のヴァイグレが忙しそうでした。エレクトラの代わりに踊っているのかと思うレベルで動いていた
全身を使って指揮をする。めちゃくちゃ痩せそう。しゃがんだり人差し指をを立てて天高く掲げたり。大編成をまとめ上げるには省エネで指揮してる場合ではないでしょう。(普段のヴァイグレを知らないのでこれがスタンダードだったらすいません。)
最初はずいぶんお上品な音楽づくりだなと思いました。しかし、クリソテミスが登場したあたりからお上品なのではなく表現が足りないだけなのかもと思いながら聞いていました。
楽譜にオーケストラがついていけてない印象を受けた。テンポが遅れている、失敗したとかそんなわかりやすい話ではなく完全なる感覚です。シュトラウスが書いた音楽に食べられてしまっているようです。音は出ているけれど中身を感じません。音楽の意図を引っ張り出したい指揮者となかなか表現できないオーケストラの音が充満。戸惑う私。
他の作曲家の作品を聞いた後で聞けば迫力のあるかっこいい音に聞こえそうです。しかし大音量で叫んでおけば成立する作品ではない。そんな作品あるのかな。
タイトルをつけていいならフォルテで頑張ろう会です。
パーぺ暗譜せず
先日の歌曲シリーズでも譜面がっつり見て歌っていたパーぺ。舞台上に譜面台があった時点で覚悟しましたが案の定楽譜を持って登場。ですよねー。
リサイタルでは譜面ありでも受け入れられるけれど、演奏会形式とはいえオペラでしかも他の歌手は譜面なしなのに一人だけ楽譜持参なの。昨日キャスティングされた?何か暗譜できない事情が?
キャスティングされたとき、もしくは契約内容に暗譜しなくてもOKみたいなことが書いてあるのかな?それでパーぺだけOKなのかな?
お持ちの声が良いので聞いていてストレスになることはなく、パーぺが歌っていると音楽全体の焦点があっていくような感覚がありました。さすが一流というところです。そのあたりは譜面があろうがなかろうが関係ない。ただ、オレストかというと全くオレストではなく譜面を見て歌っているパーぺの域を出ません。
楽譜に書いてある歌詞を読んでいる歌唱と歌手の体の中から出ている言葉の歌唱って全く違くないですか?
パーぺに価値があることはわかる。人気あることもわかる。歌が上手なこともわかる。パーぺが日本で歌っていることに感謝しなければいけないのもわかる。
ただどうしても譲れない。暗譜をしてくれ。(パーぺが暗譜不可なこの上ない事情があるなら、ご有識者教えてください。)
あなたもルブタン?
歌曲シリーズと同じくパーぺはルブタンを履いていましたが、エレクトラを歌ったパンクラトヴァもレッドソールのパンプスを履いているように見えました。ドレスでほぼ隠れていたので宣言はできませんがレッドソールはルブタンが厳しく取り締まっているからルブタンでしょう。
でも類似品って結構あるのね。買わないけど。
声の響き自体は綺麗でしたが声量がないのが苦しいところ。オーケストラにかき消されるのではない。大きい声(いわゆるフォルテ)を出さなければいけないとき以外の声がエレクトラを歌うには小さすぎる。響きは保たれているのですが響きだけでは勝負できない役な気がします。
発声のポジションは良く安定していました。即座に出る高音も、喋るように言葉を捌く低音も散らからずに一本のラインが通っており美しかったです。
人と歌って輝くタイプなのかクリソテミスが出てきてから安定感が増しました。一人で歌っているときよりも表現の幅も広がります。
お芝居も頑張りますが誰も受けてくれないのが可哀想でした。オークス(クリソテミス)もパーぺも自分の歌にしか興味がないのか全く会話にならない。物理的な距離もあり近づかない歌手たち。いまだにソーシャルディスタンス公演やっているのかと思うほどです。
動いてくれ
クリソテミス役のオークスは棒読み歌唱。のど自慢大会だったら彼女が優勝で間違いありません。後ろのオーケストラに負けないパワーのある声は聞いていて気持ちよかったです。低音域を無理して歌っている様子はない。もちろん高音も強く突き抜ける声が出る。疲れも感じさせません。素晴らしい技術と体力をお持ちなのでしょう。
歌は上手。それは嬉しい。でも私はのど自慢大会のチケットを買った覚えはない。
エレクトラとは異なり一人の女性としての人生を望んでいることを歌う場面も、エレクトラに説得させられそうになりながらも「私にはできない」と歌う場面もただ歌っているだけでその上に乗っかってくるものはないのか聞きたいです。素晴らしい技術を持っているのだからもう少しお願いします。何かください。
ママ
藤村は気品のある歌い方で無理に低音を響かせたりしません。好きです。無理にメゾソプラノをやっていない感じが好きです。自然な声で自然に歌う様子はとても美しいです。
ただパンクラトヴァ同様声量が気になる。声を探しにいかなければならないことが多かったです。断末魔は大変お上手でしたが。
パーぺ同様、藤村が歌っている感じが強くクリテムネストラはどこに行ったのか気になります。演奏会形式ってこんな感じだったっけ?と不安になりました。
断末魔で思い出したのですが、舞台に出ずに袖で歌う合唱やエギストの死に際、もちろんクリテムネストラの断末魔は文明の利器を使用しておりました。
これがダサい。明らかに電子媒体を通している声が生のオーケストラと合わさったときの全然噛み合わない音。興醒め。合唱と一緒に歌う生声のクリソテミスの気持ちを考えてみて。他に策はなかったのか。文明の利器を活用することは賛成ですが聞いていて違和感があるのはいただけない。
藤村は日本人で片手で数えられるほどしかいない世界水準のオペラ歌手のお一人ということなので次回に期待したいです。
以上です。
オペラの中身に集中できる公演ではなかったというのが私の感想です。
思い出してみれば2022年のトゥーランドットもなんともいえない出来だった気がするので春祭のオペラのレベル的には普通なのかもしれない。
アイーダは評判いいですね!チケット持ってない!!
21日のチケットも持っているので最後はまともな感想が持てることを祈ります。
おしまい。
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
エレクトラ:エレーナ・パンクラトヴァ
クリテムネストラ:藤村実穂子
クリソテミス:アリソン・オークス
エギスト:シュテファン・リューガマー
オレスト:ルネ・パーペ
第1の侍女:中島郁子
第2の侍女:小泉詠子
第3の侍女:清水華澄
第4の侍女/裾持ちの侍女:竹多倫子
第5の侍女/側仕えの侍女:木下美穂子
侍女の頭(ソプラノ):北原瑠美
オレストの養育者/年老いた従者:加藤宏隆
若い従者(テノール):糸賀修平
合唱:新国立劇場合唱団
合唱指揮:冨平恭平