三島の見解

古の女子高生

【オペラ】ラ・ボエーム(新国立劇場)

2023年7月5日(水)14:00公演

新国立劇場

オペラパレス

ジャコモ・プッチーニ作曲

ラ・ボエーム



 

 

 

 

 

 

 

 

お世話になっております。

三島で御座います。

 

 

 

 

 

 

 

 

この日は新国立劇場へ行って参りました。

2022-2023シーズン最後のオペラ演目のようです。

今シーズン見納めでございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーズンのフィナーレを飾るのはみんな大好きプッチーニ先生。

演目はこれまたみんな大好きラ・ボエームでございます。

1896年に初演されたイタリア語で歌われるオペラです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では感想いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大野監督大先生久しぶり!!

指揮者が誰だか気にしてなくて、まあいつも気にしてないのですが、オーケストラピット(以下オケピ)からひょこっと出てきた頭が新国立劇場オペラ部門の芸術監督であり指揮者である大野さん。いやーん。久しぶりー。元気ー?新国ボリス・ゴドゥノフでは大変お世話になりました。今日はヘロデ王いないけれど大丈夫そうですか!?是非またヘロデ王トークが聞きたいですー。

 

 

 

 

 

 

大野監督の指揮は、新国ボリスくんと本公演とで2演目しか聴いたことがないので絶対にそうだとは言い切れませんが、オーケストラの音がオケピから出てこないよね。楽譜から離れない音楽といいますか。平面的といいますか。譜面から脱走するのは大事件なので譜面通りなのはありがたいのですが、やっぱり劇場で生音で聴いているわけじゃん。その臨場感とか立体感とかほしいじゃん。この演奏なら録音で良くない?となるような音楽。音が起き上がってこない。プロの演奏なのだから譜面から何をどう音に起こすのかを楽しみたいのです。譜面から離れないならそこらへんの発表会で十分だしそっちの方が誠実だわ。

 

 

 

 

 

 

大野監督の指揮はオペラ以外でも経験するべきですね。機会があるといいなあ。

 

 

 

 

 

本公演で1番良かったのは4幕のコッリーネのお歌「Vecchia zimarra, senti〜」の後奏。ここだけめちゃくちゃドラマチックでプッチーニ先生の音楽が客席の感情を全力で煽ってきた。圧力がないとプッチーニ先生ではない気がしてしまう。ここは好みでした。逆に1幕終わりのミミとロドルフォが一緒に「Amore !」と歌っているところのオーケストラが面白くなかった。2人が盛り上がっているのを傍観しているだけのオーケストラでした。一応一緒に行動しているわけだし、それなりに色を添えてくれという感じですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イタリア出身者の安定感

当ブログで何度か書いておりますが、私は「その国のものはその国の人に任せておけ」論者でございます。じゃあ日本人何するのって感じですね。まあ頑張りましょう。

 

 

 

 

 

 

 

本公演はイタリア人が作曲したイタリア語で歌われるオペラですので、イタリア人に任せておきたいところです。ミミ・ムゼッタ・コッリーネがイタリア人。ある程度の品質が約束されるわけです。

 

 

 

 

やっぱり母国語は強いですね。発音が明朗で言葉の処理が美しいです。「a」でも「i」でもしっかり口の中のスペースが保たれ、母音によって音色が変わることがほとんどない。暗く歌う部分や悲しく歌う部分では音の明るさで雰囲気を台無しにするようなこともなく、悲しいからといって声のトーンを大きく変えるようなこともなく。どういう使い分けなのだろうか?ミミの「Grazie」の「a」の音の明るさとまろやかさに感動。日本人のイタリア語では聴いたことのないような「Grazie」にこっちがありがとうである。「a」をただ伸ばすのではなく緩やかな丘を描くように伸ばす。譜面だけだとわからない言語のニュアンスなのだろう。しゃべれないとわからないことって多いよねー。

 

 

 

 

 

 

 

ミミさんとムゼッタさんはお歌に関してはマジで余裕。ミミはシンプルにシンプルに余計なことをせず歌っているのにとてもドラマチック。巷に蔓延るミミは謎のお姫様感があり、二人の将来のために別れることを選んだり、かと思いきや死に際に子爵の家を抜け出してきたりと能動的なミミの言動とキャラクターが合っていないことが多い。「可愛く可憐で病弱に」を意識してなのか物語の中のミミと舞台上にいるミミが相違してしまってバラバラしている印象。もっと策士な女だぞ、あいつは。本公演のミミは、物語の中での言動に対して違和感のない役作りをされている。とても聡明で大人なミミ。「Mi chiamano Mimi〜」の「il perché non so」部分に謎のぶりっ子が存在しなくて良かった。「いや、知らんけど。」って感じだね(?)。その後の「Sola, mi fo」(若干怪しいけど多分ここ)で1人で暮らしていることをロドルフォに教えるときの歌い方と仕草が可愛すぎた。手の甲を頬に添えて「秘密だよ!」みたいな。みんな家に行っちゃうでしょ。気をつけて!!

 

 

 

 

 

 

 

お歌も技術も素晴らしい。低音域と高音域の音色に差がない。ソプラノだとどうしても低音域の声質が変わりがちだけれど、全くそのようなことはなくどの音程でも同じように歌っていた。上から下まで自由。詰まったり変に細くなったりもしない。低音域が安定しているとミミがどんな人物なのかわかりやすくなる気がします。高音域ピャーピャー系で低音域でないとお姫様感に繋がるような。とにかく良いミミでございました。ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムゼッタも同じく素晴らしい。「Quando men vo〜」の一発屋でその後のモブ感が否めない役になりがちですが、最初から最後までムゼッタとして舞台上に居続けてくれたことに感謝。「Quando men vo〜」はパーツ(フレーズ)ごとにバラバラしてしまうイメージがありますが、本公演のムゼッタはのお歌は一本の軸の元に展開されていく感じがとてもよかったです。ムゼッタの情緒不安定気味な細やかな感情を上手くこのお歌に乗せていました。「ricerca in me~」の高音は惜しいなあとは思ったけれど、全体のまとまりとピアニッシモが大変に美しいので大した問題ではなかった。このお歌を歌っている横でショナールとコッリーネが黙々とご飯食べているのが可愛かった。マジで可愛かった。ていうかショナールって薬っぽい響きの名前だよね。薬局に置いてありそう。

 

 

 

 

 

 

「Quando men vo〜」のお歌の途中でミミが「Io vedo ben...」と歌う部分があります。このミミの歌っている内容が現状の説明にならずに客席の代弁者になっているのがよかったです。ムゼッタとマルチェッロの気持ちがわかりやすいお芝居や視線の動きがあって舞台上が立体的だった。3幕でマルチェッロと喧嘩しているときもキャンキャンならずに丁寧に怒っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

負けていないアメリカ人と日本人

そんなイタリア勢に囲まれながらも素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれたアメリカ出身のロドルフォと我らが日本代表のマルチェッロ。

 

 

 

 

 

 

 

ロドルフォはビジュアルが優勝している。こんなスタイリッシュなロドルフォがいるなんて。グリゴーロも悔しがるでしょう。イタリア勢に負けない母音の明るさがある。言葉に左右されてしまう部分はあったが、隣にイタリア人、相手役にイタリア人の中で大健闘な発音だったと思います。声はとても強いが不快さはない。本物に近い強めテノールでございました。でもやっぱり「Chi」は狭くなるよね。なんか絶対的な課題の単語だよね。これからオペラをつくる人にはぜひ省いていただきたい単語である。オーケストラは残念だったけれど、「Amore !」の高音は若干硬かった。叫びたくなるけど堪えてお歌にしている感じ。でも良かった。難しいよね。押したくなるよね。「Che gelida manina〜」は最初はストレスのない歌い方で良かったのですが、進むに連れて喉にテンションがきているように聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3幕・4幕は2幕の華やかさと打って変わり、話も舞台上も暗く、停滞するというか詰まっているように感じることがありますが、本公演は鬱々としながら進行する物語にただただ切なくなりました。ロドルフォがミミへの重たい重たい感情を歌う場面はあまり好きではなく「早くミミの死に際までいってくれ。」と思うことが多いですが、本公演では、ロドルフォの気持ちに大きく共感してしまい無駄に切なさを感じていました。説得力がありますね。最終的に4人(2カップル)でお別れしましょうソングを歌うときも全員の声が喧嘩せず綺麗な重唱を楽しむことができました。この場面でミミカップルは青のライトで照らされているのに対し、ムゼッタカップルは店のオレンジの灯りが届いているのが良いコントラストでした。この先を示しているようで悲しくなった。素敵な演出です。

 

 

 

 

 

終幕前の「Mimi!」は雄叫び大会にならなかったのが良かったです。この部分に音楽を感じることって少ない気がする。ここにもきちんと音符が当てられていることがわかるし、何より切なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもって日本代表のマルチェッロ。伸びやかではないが存在感のある声と歌詞をはっきり届けることができるお歌の技術はとても素敵です。ムゼッタとのお芝居も無理のない自然な動きが良かったです。終幕のお芝居が切なかった。ミミでもなくロドルフォもなくマルチェッロに視線がいった。色々察しちゃうマルチェッロしんどそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上です。

お歌が安定しているとお芝居として観れるのが嬉しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新国立劇場さんシーズン最後は綺麗なお仕事をして終わりました。

ボリスくんを忘れろということですか?

無理です。

 

 

 

 

 

来シーズンはオネーギンが再演ですがボリスくん再演のほうが狂気っぽくていいのに。

大野監督の任期満了までずっとボリスくん再演してればいいのに。みんなで成長しようぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イタリアオペラって死にそうになってから死ぬまでが長いじゃないですか(偏見?)。

オネーギンがイタリアオペラだったらレンスキーくんのお歌は決闘の後に来るのかな?

打たれた後に歌い出して所在なさげなオネーギンたち。

むしろ退場してもらい、オリガが現れて腕の中で息を引き取るってか?

イタリアオペラっぽーい(偏見)!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ではまた劇場で。