三島の見解

古の女子高生

【コンサート】若きオペラ歌手たちの饗宴(バイエルン国立歌劇場 マッシミリアーノ・ムラーリ氏を迎えて)

2024年6月17日(月)14:00公演

豊洲シビックホール

バイエルン国立歌劇場 マッシミリアーノ・ムラーリ氏を迎えて

若きオペラ歌手たちの饗宴

SOS子どもの村JAPAN支援コンサート



お世話になっております。

三島でございます。

 

この日はコンサートに行って参りました。チャリティイベントに分類されるのでしょうか?SOS子どもの村JAPAN支援コンサートということで売上の一部がSOS子どもの村JAPANへ寄付されるそうです。

www.sosjapan.org

 

 

さて感想です。

コンサートはコンサートなのでいつも通り感想を書きます。

(以下基本的に敬称略。)

 

マッシミリアーノ・ムラーリ

2部制の約2時間(休憩含む)のコンサートでした。1部はピアノ伴奏で歌曲を披露し2部は編成の小さいオーケストラが入ってオペラの曲たちを披露。伴奏とオーケストラの指揮をしたのはマッシミリアーノ・ムラーリです。バイエルン国立歌劇場でコレペティトゥアそしてアシスタント指揮者として活動しているようです。

 

ピアノ伴奏ははっきりしない演奏で物足りなさがありました。歌を導いていくのではなく歌のやりたい方向へ合わせるような伴奏でした。歌手についてはこの後書きますが、一部の歌手は方向性のはっきりした演奏ができていなかったので一緒に伴奏も道に迷っているように聞こえました。先導できる歌手と一緒なら良く聞こえますが、そうではない歌手のときは伴奏が前に出てきて道をつくってほしいです。その方が曲の良さが伝わりやすい。

 

一方、2部で小編成のオーケストラを指揮しているときは良い指揮者だなと思いました。優しい雰囲気でオーケストラのメンバーが伸び伸びとにこやかに演奏していました。音に対する指示は的確で聞かせたい音をしっかりと指示をだして立たせていました。特別上手なオーケストラではありませんがチャリティという側面を持つコンサートに適した攻撃性のない朗らかな演奏は素敵でした。実直にそして楽しそうに演奏している姿は心にくるものがあります。

 

1部でピアノ弾いて2部で指揮するのは小規模なコンサートだとしても大変そうです。そのせいではないと思いますがアンコールはありませんでした。アンコールは演奏者側の好意だと思っているのでなくても問題はないしガッカリもしません。全員がニッコニコで終われて良かったです。

 

では以下歌手の感想を簡単に。

 

エボリ嬢はなんだったのか?

メゾソプラノの加藤のぞみは昨年の二期会公演「ドン・カルロ」のエボリ公女が記憶に新しいです。良い印象はない。ヨーロッパで活動している歌手と聞くと期待値が爆上がりしますが超えてきてくれませんでした。この日の歌手の中でで一番ネームバリューがありますが期待せずに劇場に行きました。

 

が、しかし、なんかめちゃくちゃ上手だったのよ。エボリ嬢はなんだったの?合わなかった?演出のせい?フランスパン?

 

日本人メゾソプラノによくいる低い声をつくっている感じがなかった。ソプラノではない女性歌手ではなくメゾソプラノ歌手としてお仕事をしている。明るい声!と第一声を聞いて思いました。明るいだけだとソプラノか高音を得意とする歌手に向ける言葉のような気がしますがそうではありません。響きが明るいのです。響きだけが明るく音が深いです。響きが明るいって難しい表現な気がしてきた。輝く声といえばわかりやすいでしょうか?そこに深さが加わるのでどっしりとしているけれど無駄に暗く重くないメゾソプラノの声ができるというわけです。

 

歌曲とオペラ合わせてドイツ語・イタリア語・フランス語と3カ国語での歌唱でしたが声の響きや質が言語によってほぼ変化しないです。ドイツ語の発音は特別上手なわけではないですが発音が気になって歌に集中できないレベルの演奏もよくあるので非ネイティブ(推定)として越えてほしいラインはクリアしていると思いました。

 

ブラームスの歌曲の良さを改めて感じました。ブラームスの歌曲とメゾソプラノの相性の良さは最高だよね。良いお仕事だ。特に”Von ewiger Liebe”では歌詞の内容の変化がわかりすく表現されていて出だしの鬱々とした雰囲気も最後に高揚感たっぷりに歌いあげるところもよかったです。また、最初と最後だけではなく全てが繋がっているような歌唱で中身が濃かったです。ちょっとだけイタリアオペラ味がありましたがそれでも満足度は高いです。

 

カルメンは衣装をカルメン風にして登場。赤いスカートと黒いトップスに花がプリント(刺繍?)された大判のスカーフのようなものを肩にかけて登場。客席の反応もいい。プログラムの最後に持っていくるあたり構成を考えた人のよくわかっている。加藤も5000万回歌ってきたような余裕のある歌唱でした。

 

フランス語の子音を大切に歌っているように聞こえました。子音が立つというか母音に流されていないというか。母音の柔らかさの中に的確に子音が登場します。フランス語発音有識者の意見を聞きたいところではありますが、上っ面でフンフンと歌わないフランス語での歌唱は好感が持てます。

 

オペラ歌手として全幕やることが当たり前の環境にいる(推定)のでコンサートで数曲歌うくらい朝飯前だとは思います。存在感と余裕と圧力がすごかった。久しぶりに安心して聞ける演奏でした。1曲目で声がひっくり返りそうになったり全体的にパワー系だったりと気になるところはありましたが、それでも安定して聞けました。心地よすぎて体がダラダラしてしまってそのまま寝たくなりました。

 

で、もう一回エボリ嬢お願いしていいですか?

 

またもやルブタン?

トップバッターで歌ったのはカウンターテナー村松稔之。レッドソールの革靴を履いている?歩き回らないので確証はないですが底が赤かった気がする。ヒール部分に装飾がされていてめちゃめちゃお洒落。ルネ・パーぺのおかげで靴底注目隊になりました。

 

歌の話をします。加藤同様に無理矢理声を作っている感じがないのは本当に良いことです。高音域はとてもキンキンしますが素直に声が飛んでくるのは良いです。中音域は高音域に比べれば丸くなります。どの音でも声が籠ることがないので聞きやすいです。

 

高音域へのジャンプがあまりお上手ではないのが気になりました。ひっくり返りそうでヒヤヒヤしました。また高音域で音を伸ばすときに正しい音に辿り着くまで時差がありました。勢いよく上げない分柔らかく聞こえますがなかなか到達しないのは疑問です。

 

ドイツ語で歌っているときの方が一番綺麗にそして上手に聞こえました。”Ombra mai fu”がわかりやすかったのですが?音を伸ばしているときの保ち方があまり綺麗ではなくただ伸ばしているような中身のない薄い音にになってしまいます。ドイツ語のように次から次へと言葉をさばいていかなければならない方がうまく歌えるのかなと思いました。

 

歌に乗せたい表現がたくさんある事はなんとなく伝わるのですが、乗り切ってないというかこちらが拾ってあげる必要があるというか。歌と一緒に表現を楽しむことはできませんでした。

 

フィガロの結婚」のケルビーノのお歌(“Voi che sapete”)をカウンターテナーが歌うことは珍しいようでよく例に挙げられるから珍しくないのかなと思いながら聞いてました。珍しいの中のレベル1みたいな?

 

メゾソプラノが歌っている場合と比べると声のキンキン度合いが目立ってしまいます。カウンターテナーが歌ったからか村松が歌ったからかわかりませんが。ソプラノの曲をカウンターテナーが歌うと丸みが出て柔らかく聞こえますが、メゾソプラノが歌うものをカウンターテナーが歌うと柔らかさがなくなるような気がしました。でも久しぶりに「フィガロの結婚」のお歌が聞けてよかったです。

 

バリトンは動けないと難しい

バリトンに動ける人が多いのか動けないとバリトンとして食べていけないのかどちらだか知りませんが 加来徹も動けるバリトンでした。

 

歌曲でもオペラでも表情・表現豊かに歌うのは見ていても聞いていても楽しいです。特に「愛の妙薬」のドゥルカマーラを歌っているときは謎に上品さがありました。でも胡散臭さもありました。つまり愉快でした。動ける人はオペラでどんどん活躍してほしい。

 

1部ではシューマンの歌曲を3曲歌唱。”Wildmung”は荒ぶる伴奏に邪魔されずに丁寧に声を出していて曲の難しさを感じさせないのが良かったです。”Mondnacht”は音が上がる音型のときに喉も一緒に上がってしまているような詰まった声になっていました。余裕を持ってなめらかに歌って欲しかったけれど他の曲に比べるとギリギリ感があった。同じ曲集から”Waldesgesprach”は対話ならでは変化をつけて歌っていたのは良かったけれど全体的に騒々しい。やりすぎじゃね?というのが素直な感想。表現の方向性としてはわかりやすいので何も知らない人に伝えるという点ではやりすぎくらいでちょうど良いのでかもしれません。

 

がんばれがんばれ

なかなかに歌手が揃った演奏会のなか1人だけ目立っている人がいた。もちろんいい意味ではない。服部響子は声が出ていない。掠れ気味の声がお持ちのものなのか調子が悪いのかわからない。

 

フィガロの結婚」のスザンナのお歌(“Deh, vieni non tardar, o gioia bella”)の最低音を綺麗に出していたのはとても嬉しい。ソプラノが捨てがちな音をちゃんと歌ってくれるのはありがたい。加来と一緒に歌った「愛の妙薬」の”Quanto amore”(から”Bella Adina”の終わりまで)では最高音は出さず。コンサートなら出してほしい。

 

音の質は揃っているのですが、浅いところで歌っているから揃っているだけだと思います。服部は他の歌手3名全員と一緒に歌いましたが、目立っていいソプラノなはずなのに声が埋もれてしまう。声量も少なく響きもほぼない。これが服部の本気じゃないことを祈る。

 

以上です。

 

総括すれば良いコンサート。

最近何故か知らないけれどメゾソプラノロッシーニになっていたので加藤がロッシーニを歌わないことに助けられた。

 

6月後半戦も良い演奏会に出会えますように。

(フラグじゃないよ。)

 

おしまい。

 

 

ピアノ兼指揮:マッシミリアーノ・ムラーリ

ソプラノ:服部響子

メゾソプラノ:加藤のぞみ

カウンターテナー村松稔之

バリトン:加耒徹

管弦楽:アンサンブルFUTURO