三島の見解

古の女子高生

【オペラ】トゥーランドット(英国ロイヤル・オペラ2024年日本公演)

2024年6月26日(水)18:30公演

東京文化会館大ホール

英国ロイヤル・オペラ2024年日本公演

ジャコモ・プッチーニ作曲

トゥーランドット

お世話になっております。

三島でございます。

 

NBSがお送りするロイヤルオペラ祭を楽しんでおります。

といってもこれが最後のチケット。泣けちゃう。

www.nbs.or.jp

リゴレット初日の感想↓

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リゴレット2日目(神奈川公演千秋楽)の感想↓

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この日の演目はみんな大好きプッチーニ先生のこれまたみんな大好きトゥーランドットです。リゴレットよりもチケットが売れている様子(三島調べ)。でも完売はしていない。NBSがんばれ。

 

トゥーランドットは全て東京文化会館での上演です。NBSの本拠地ですね。NBS歌劇場です。舞台装置の規模を考えると東京文化会館での上演一択ですよね。リゴレットは持ち運びに優れている方だと思う。

 

歌手に関して6月18日にNBSより公式アナウンスが

本公演において、トゥーランドット姫役で出演を予定していたソンドラ・ラドヴァノフスキーは、副鼻腔炎、および重度の中耳炎を発症し、

来日することができなくなりました。ラドヴァノフスキーの出演を楽しみにされていたお客様には大変申し訳なく、深くお詫び申し上げます。

 

とありました。

 

ソンドラ・ラドヴァノフスキーさんは今回の来日歌手メンバーの中では一番知名度があり一度くらい劇場で聞いてみたかったので来日が叶わずちょっとだけ残念です。7月のコンサートも楽しみにしていたのでこちらまでなくなってしまったのも悔しい。でもしょうがない。正直なところ誰でもいいからコンサートしてくれよと思っています。次の仕事まで余裕のある人に残ってもらって歌ってもらってギャラは山分けしてもらって。無理か。NBS東京文化会館を抑えているわけだから使わないのもったいなくね?代替公演の連絡来ないかなぁ。

 

いつかソンドラ・ラドヴァノフスキーさんの歌声を劇場で聞けることを願いつつ公演の感想にいってみよー。

(以下基本的に敬称略)

 

開幕状態

外から客席を見たら普段より暗めの照明で何事かと思いました。いざ入ってみるとすでに幕が上がっており舞台セットが見えていました。幕が開いているだけ照明が暗いだけなのにワクワクさせられました。舞台後方の広がる大きい舞台セットは2階と3階に立つ場所があり合唱団の定位置になっておりました。3階部分は結構な高さな気がします。登ってみたい。3階部分からお面みたいのがぶら下がっていて何なんだろうなぁと思っていましたが首をはねられた人たちのようです。つまり生首です。

 

2幕も幕が開いた状態からスタートし3幕でやっと指揮者のアントニオ・パッパーノにライトがあたりお顔をこちらに向けてくれました。パッパーノはリゴレットトゥーランドットをほぼ日替わりで指揮しております。働く指揮者です。22日のアフタートークで「対照的な作品」と仰っておりました。対照的な作品を同時に扱うことは過労な気がしますががどちら素晴らしい完成度の音楽を聞かせてくれました。リゴレットは丁寧に繊細にトゥーランドットは緻密だけれど大胆にといった感じです。

 

開演前にロイヤルオペラの偉い人から代役になってしまったことに対しての説明とお詫びがありました。ご丁寧にありがとうございます。NBSではなくロイヤルオペラの方が直々に出てくるのは意外でした。

 

この日はオペラを見ているというよりアトラクションに乗ってるような気分でした。客席に座っているだけなのですが別の世界に連れて行ってもらうことができました。オリエンタルで不思議な音楽も仮面をつけて歌ったり踊ったりするちょっと不気味な合唱団やダンサーも異空間でフィクション感がありました。よく知っている劇場で馴染みのオペラを見ているのにいつもと違う感覚が味わえたのは音楽の完成度の力によるものです。音楽的に歌的に気になることが少ないのであちらの世界に集中できました。

 

では歌手の感想をちょっとだけ書いて終わります。

 

前世カラフ

音楽の圧、声の安定、興味深い舞台装置などどこから話せばいいのかわかりません。なので普段はそんなに興味のないテノールの話からしましょう。

 

カラフを歌ったブライアン・ジェイドは高圧力で歌いながらも余裕綽々で笑うしかなかった(褒めてる)。第一声からもう素晴らしい。マイク仕込んでますか?と質問したいほどに大きく声と逞しい響き。つくられた大きい声ではなくお腹の底から勝手に声が出てきてそのまま劇場中に飛んでいく様子は気持ち良い以外にない。カラフに必要な声はジェイドの声なんだと思わせるような説得力。素晴らしい。

 

余裕すぎて意味がわからないから前世がカラフだったということで納得しておきます。

 

みんな大好き”Nessun dorma “は軽々歌います。もっと大変そうに歌ってもらえませんか?そこらへんのテノール歌手を泣かせにきていますね。高音の高さを感じさせない歌い方ができます。特別なことはせずに中音域と同じ感覚で高音を出すことができます。ギリギリで高音を出さない。常に余裕と口の中の空間を感じる声でした。曲中に拍手してはいけない決まりですが拍手がおきていました。気持ちはわかる。けどやめよう。

 

ほぼ完璧な歌唱だったのですが”Nessun dorma “に関しては母音が短さが気になりました。母音を深く歌う前に次の子音がきてしまい音楽のラインがちょっと薄くなっていました。オーケストラはたっぷり演奏していたので母音を早めに切り上げるジェイドが早くなってしまう箇所がありました。素敵な声をお持ちなのでさらに伸びやかに歌ってもらえたら言うことなしです。

 

ジェイドのカラフはトゥーランドット姫を演じたマイダ・フンデリングのお守り役もしており急遽の代役で大変であろう(大変そうには見えなかったけれど)フンデリングを歌唱でもお芝居でもサポートしていました。自分のことだけでなくフンデリングのことも考えて動いているように見えました。フンデリングは歌いやすかったのでないでしょうか?

 

物凄い声量で歌いまくりオーケストラの分厚い壁の影響を全く受けていません。全くは嘘ですね。低音域はあまり響いてなかったです。ここはジェイドの課題かもしれません。声は大きいけれど口の形が綺麗で声量を優先して口を無駄に大きく開くようなことをしていないのは素晴らしいですね。2幕で「挑戦させてください。」と皇帝に対して歌うときは完全に後ろ向きなのに前を向いて歌うときと何も変わらないのはもう意味がわかりません。どこ向いて歌っても響くし届けることができるのでしょう。

 

1幕終幕は仮面の人たちに刃物を突きつけたれて暗転します。命が賭けられた謎解きが始まることを示しているようで好きです。銅鑼を打つときにティムールの杖(というかただの木の枝)を使っちゃうのは面白いですね。お父さんのこと考えていない。叩き方は軽いのに鳴っている音が力強いのが面白かった。その叩き方でその音でないでしょ。お芝居なんで気にしたら負けなんですけれど面白かった。

 

3幕終幕の丸くおさまった感があるなかカラフとトゥーランドット姫の前をリューの死体(を乗せた車?)が通ります。カラフがリューを無視せずに目を向けている様子が良かったです。

 

ただの力技テノールではなく本物のパワー系に出会うことができました。ありがとうございました。

 

カラフに負けない愉快な3人

圧倒的なカラフの声量と歌唱に負けないピンとパンとポン。モブ感が出てしまう役だと思っていました完全に主要人物でした。歌唱の安定感はこちらもニヤニヤしてしまうくらい素晴らしかったです。

 

声が素直に前に飛んでくるのがもう気持ちいい。3人ともよく動くのですが発声には全く影響が出ないです。めちゃめちゃ歌えるダンサー連れてきたのかなと思うくらい動きます。特にピンを演じたハンソン・ユはお持ちの声そのものが美しいのにそれに甘んじていない丁寧な歌唱で好感が持てます。イタリア語が誰よりも明朗で聞き取りやすかったです。3人のわちゃわちゃした感じにユの声があることにより根がしっかりしとっ散らかることを防いでいました。

 

2幕で故郷への思いを馳せている場面は1幕のわちゃわちゃに比べてしんみりしこちらも切なくなりました。歌っている最中に故郷の風景が描かれた幕(たぶん)が出てきて3人の後ろを通過するのですが幕が去ってしまうときの表情や手の伸ばし方に感情があってさらにしんみりしました。物語の中で3人の人生に焦点は当たらないけれど彼らにも人生や考えがあるのだなと、ただの愉快な人たちではないんだなと思わされました。その後の場面でカラフが全問正解したことに対してで円陣を組んでわちゃわちゃしながら喜んでいるのが可愛かったです。

 

3幕で人リューの死に対して歌うところ(”Svegliato s'è qui dentro〜”)は冷たい空気が流れ込んでくるような冷えた雰囲気になりリューの死が3人の心を動かしたことを感じました。

 

リューのお気持ち察し隊

リューを演じたマサバネ・セシリア・ラングワナシャは歌唱に関しては完璧とは言えませんが役への集中力でカバーできていたので特にストレスはなかったです。低音域は本当にソプラノか?と思うほど安定しておりました。無理矢理出していない声がオーケストラを飛び越えて客席に届きます。高音域に関しては天井が低く、また中身のない声になっていました。高音域でも低音域を歌っているような深さがプラスされれば素敵になると思います。

 

3幕お歌は大変丁寧に歌っておりました。声が丸くキンキンせずに済むのは良いのですが広がり気味になってしまい焦点が合わないのは気になるところです。

 

2幕の全問正解後のカラフがリューのそばにきて肩に触れたときの切なさは異常です。ラングワナシャは派手なことは一歳しませんがカラフを見る表情やティムールの支え方など行動が繊細でした。報われないことはわかっていながらも誠心誠意寄りそう姿はオペラのタイトルを変えたいくらいドラマがありました。

 

リューが死んだ後のティムール演じるジョン・レリエの重く切ない歌唱がリューの素晴らしさを引き立てます。レリエの声もとても素敵でした。やっぱり低い良い声って最高だよね!低音はオーケストラに消されがちでしたがレリエの声はオーケストラに包まれるようにして客席に届きました。落ち着いた歌い方の中に悲しみと怒りとやるせなさが詰まっておりました。

 

3幕で首切り人が持っていた大きな刃物をもぎ取って自ら首を切りますが、先日のリゴレットの目玉ぶっ刺しよりもグロテスクでした。実際に切れてはいないし血も出ていないのですがそこまでの集中力が凄まじくて刃物が本物に見えてしまいました。

 

歌唱技術はまだまだ伸びていくでしょう。またどこかで出会えますように。

 

トゥーランドット姫歌えるってすげえええ

代役のフンデリングは大変強い。代役なことを感じさせません。

 

正しく歌える人でないとほぼ絶叫になってしまう役ですね。なんてしんどいのでしょう。フンデリングは多少声がキンキンしますが発声の影響ではなくお持ちのものでしょう。喉が上がってきてキンキンしてしまうようには感じませんでした。最後まで声の疲労を感じませない体力もすごいです。

 

高音域の後の低音はほぼ声が出ていない。響かない。高音を物凄い力で歌う代償なのでしょうか。勢いが凄まじかったので目を瞑ります。低音域が出ないのではないです。低音から始まるフレーズは恐ろしいくらいに響いていたので音型によってムラがでてしまうのでしょう。低音はめっちゃかっこいい声でした。特に”Sì, la speranza che delude sempre!”は怒りが溢れ出てしまい怖かったです。今後コントロールが行き届くようになれば聞こえる低音が増えるではないでしょうか。

 

ジェイドとフンデリングは並びが美しかったです。この2人で代替コンサートやってくれよ。見た目も声も相性がよい。お互いの声量が大きいながらも大声選手権にならずに歌をきちんと歌ってくれるので音楽として楽しめて嬉しかったです。

 

1幕で登場したときしっかりカラフを目で捉えているのが印象的でした。

 

オーケストラ

リゴレットに引き続きトゥーランドットでもオーケストラが背景や状況をよく教えてくれます。月の光が細くさしているような冷たい音(1幕)、カラフ君のシンキングタイム(2幕)、カラフ君大正解のお知らせ(2幕)などお気に入りが増えました。謎解きの部分のオーケストラは音楽の緊張感と舞台上の緊張感が相まってこちらも緊張しました。全問正解できて良かったです。

 

イタリア語行方不明

これは同時進行でお送りしているリゴレットでも言えることなのですがイタリア語の発音の明朗さはどこかに消えております。ほとんどの歌手がイタリア語の発音を良くしようと思っていないではないでしょうか。その考えが良い悪いはさておきロイヤルオペラとしてはイタリア語の発音はそこまで求めていないことがよくわかりました。イタリア語ネイティブ以外ならそんなものという感じかな。そもそもトゥーランドットのような絶叫一歩手前でイタリア語を正確に発音しろと言われても困りますよね。

 

 

以上です。

大変に満足。

ロイヤルオペラがさらに好きになった。

 

トゥーランドットの千秋楽(7月2日)まで祭は続きますが私の参加はここで終了です。

寂しい。追いチケしないように気をつける。

 

残りの公演も大成功しますように。

行かれる方が最高に楽しめますように。

 

おしまい。

 

指揮:アントニオ・パッパーノ

演出:アンドレイ・セルバン

再演演出:ジャック・ファーネス

美術・衣裳:サリー・ジェイコブス

照明:F. ミッチェル・ダナ

振付:ケイト・フラット

コレオロジスト:タティアナ・ノヴァエス・コエーリョ

トゥーランドット姫:マイダ・フンデリング

カラフ:ブライアン・ジェイド

リュー:マサバネ・セシリア・ラングワナシャ

ティムール:ジョン・レリエ

ピン:ハンソン・ユ

パン:アレッド・ホール

ポン:マイケル・ギブソン

皇帝アルトゥム:アレクサンダー・クラヴェッツ

官吏:ブレイズ・マラバ

合唱:ロイヤル・オペラ合唱団

管弦楽:ロイヤル・オペラハウス管弦楽団

子供合唱:NHK東京児童合唱団