三島の見解

古の女子高生

【オペラ・バレエ】中国の不思議な役人(バレエ) /青ひげ公の城(オペラ)

2023年11月26日(日)19:00公演

マリインスキー劇場

バルトーク・ベーラ作曲

中国の不思議な役人(バレエ)

青ひげ公の城(オペラ)

お世話になっております。

三島でございます。

 

 

2023年11月ロシア編でございます。

この日はロシア滞在最後の夜です。再びマリインスキー劇場に向かいました。

 

演目はバルトーク先生のオペラとバレエです。ロシア最後の夜になぜハンガリー語の作品なのかと自分で何度もツッコミました。ロシア語の作品ではありませんが、日本だと上演されにくい作品(三島調べ)に巡り合うことができてよかったです。また、今回はバレエ公演と予定が合わなかったのでダブルビルにてバレエ作品を観ることができてよかったです。

 

 

では感想いってみよー。

 

バレエ

マリインスキー劇場での公演名だと

 

「чудесный мандарин」

 

ですが、日本語だと

 

中国の不思議な役人」になるらしい。英語やドイツ語だとロシア語名に近い(というかそのまま)演目名なのですが日本語はこのような仕上がりになるらしい。

 

 

オーケストラはオーケストラピットではなく舞台上におり、見た目演奏会形式での上演でした。オーケストラが乗っていても十分に踊れるほどのスペースがあります。舞台が広いです。オーケストラの前方のスペースだけでなく後方のスペースも活用しておりました。

 

 

舞台セットは檻のような鉄格子が一つだけ。檻を使ったり使わなかったりで踊り進めていきます。檻に登ったり、檻に入ったまま回転させたりと物凄い身体能力でアクロバティックな踊りを見せてくれます。古典作品とは違った面白みがありました。人間の体って良く動くのだな、と思いました。

 

 

 

男性バレリーナが順番に登場するのですが、1番目と2番目の方はオーケストラの後ろを歩いて舞台前方に登場。オーケストラの皆さんと同じ黒いシャツに黒いパンツを履いていて、手には楽器を持っていました。もちろんバレリーナなのでオーケストラの団員が踊りに参加しだしたわけではありませんが、演奏しているオーケストラの皆さんがいきなりお話の中に加わったような感じに見え踊りきと面白さがありました。

 

 

女性バレリーナライダースジャケットを羽織っているが個人的にツボです。ライダースジャケット大好きなので。下着にコルセットのような衣装でも下品にも滑稽にもならないところがお強いです。

 

 

 

オペラ

聞き慣れないもいいところのハンガリー語ですが、事前予習(なんて大層なものではない)のおかげでお話と展開がわかっていたので言語に捉われずに楽しむことができました。マリインスキー劇場の字幕って小さくない?今度はもっと前の席に座ろう。

 

 

バレエ同様こちらも演奏会形式。でもってバレエ同様オーケストラの前方も後方も使う。

 

 

舞台には縦長の布が数枚ぶら下がっており、各々の扉を開けるタイミングで布が地面に落ちます。後方スクリーンの映像も活用しながら実際には移動しないけれど次々に部屋を移っている様子がわかります。そこらへんでこの演出で上演すると「お金がない」という感想になりそうですが、歌手もオーケストラも分厚いので全くもってゴージャスです。

 

 

他の妻たちはバレリーナが演じます。マリインスキー劇場のバレエは本当に素晴らしい。オペラ観てるのにバレリーナ出てきたときが一番嬉しい。踊り出したいくらい好き。バレリーナたちの現実味のない美しさがこの物語の不思議さを加速させます。バレリーナと並んでも見劣りしないユディットさん(エカテリーナ・セルギエヴァさん)もお強いですね。踊りの場面がちょっとあり、もちろんバレリーナほど上手ではないのですが可愛らしかったです。

 

 

青ひげさん(ヤコヴ・ストリジャクさん)も素晴らしかったです。お歌もお芝居も良かったです。良い声がスムーズに体から出てくる。引っかかりも力みもなく心地よかったです。プロローグの語りと青ひげを演じるときと変化はありませんでしたが、衣装がちょっと変わったので青ひげが出てきたことがわかりました。髭が青く、スーツも青い。これ以上にないわかりやすさ。身長が高くガッシリ体型の方だったので素晴らしく舞台映えしておりました。

 

 

苦悩なのか喜びなのかわからない青ひげの表情が良かったですね。扉を開けるときの苦しそうなお芝居も良い。最後に妻たちを閉じ込めるために扉を閉めるのですが、舞台後方(オーケストラ後方)まで歩いていって視線をしっかり客席に向けたまま扉を閉めるのがめちゃくちゃ刺さりました。ドラマチックでした。扉閉めただけなのに!

 

 

歌手は2人しか登場しない作品なのに寂しいとか物足りないとか思うことはなく、歌手の技量と存在感って本当に大切だなあと思いました。

 

 

以上です。

このオペラ面白い。因みにロシア語(人名)のカタカナ表記の信憑性は低いです。

 

これにて2023年11月のロシア編を終わります。

 

 

充実したロシア滞在になりました。

この後、27日にロシアを出発する予定でしたが、機内に3時間待機後に悪天候によるフライトキャンセルが決定。それに伴いロシア滞在が1日延びました。航空会社負担でロシア延泊は嬉しいけれど何もできなかったのは切ない。もっと早くにキャンセルが決定したらマリインスキー劇場行けたのにな、と思いました。

 


終わり。

【オペラ】エウゲニ・オネーギン(新国立劇場)

2024年1月24日(水)18:30公演

新国立劇場オペラパレス

ピョートル・チャイコフスキー作曲

エウゲニ・オネーギン

 



 

 

お世話になっております。

三島でございます。

 

 

 

この日は大野芸術大監督による「新国立劇場だってロシアオペラやるんだもん!プロジェクト」の4公演目であり3演目(ダブルビルを1カウントとする)である「エウゲニ・オネーギン」を観に新国立劇場に参りました。同じ演目がこんなに早く帰ってくるとは思わなかった。2回以上やらないとレパートリーにならないのかな?じゃあ新国ボリスくんもやる?

 

 

では感想いってみよー。

この更新では歌手の感想を主としてちょっと演出にも触れていこうと思います。

 

 

 

オーケストラさん

よくやってくれているとは思うのですが、おチャイコ先生の音楽なのでもっと求めていきましょう。

 

 

 

ポロネーズはよかったです。「何が」とかはないけれどよかったです。第1幕2場の導入も美しかったです。力強すぎる気もしますがよく鳴っていたと思います。第3幕1場のグレーミン公爵のお歌での掛け合い(と勝手に呼んでいる)がとても素晴らしかったです。歌手が歌いオーケストラが返事をするみたいな構造になっているのがとても好きなので最大限聴かせてくれると嬉しい。

 

 

 

第1幕序曲の出だしの弦楽器の「ドゥン」もよかったですね。ここがしっかり聴こえることが大事です。他が良くても「ドゥン」が聴こえなければ嫌です。私が好きなので。その後の立ち上がりが寂しかったです。最初から3フレーズくらい全員が入りを伺っているように聴こえて安心できませんでした。大丈夫!堂々と入ってきて!!段々よくなりそのままお歌へ繋がりましたが序曲の下降音型の処理の大切さがわかりました。

 

 

 

第1幕1場はオーケストラが消えてましたね。この作品は全てのオペラ作品の中でもオーケストラとお歌が共に生きているように感じますが、オーケストラさん脱走。もし客席内を自由に動き回れるならオーケストラピットの中を覗きに行ったと思います。もちろん実際にはやりませんが。特にレンスキーくんの告白の導入はもはや導入されなかったですね。よく告白できたね。

 

 

 

タチアーナさんの長いお歌(手紙の場)の導入が雑音混じりのように聞こえました。弦楽器が力みすぎているのかな。このお歌が終わった後の木管楽器の愉快な音(牧歌?)ももっと楽しい感じに演奏して欲しい。譜面のままなのでプロの仕事を見たいし聞きたい。

 

 

 

第2幕1場の立ち上がりの音楽は出だしが元気すぎて「情緒とかないのか?」と思いました。第1幕の音楽の再現とその後やってくるワルツへの導入なのでこの差をしっかり表現して欲しいですが強調されませんでした。事故ではなく敢えてそのような音楽をつくっているのだと思いますが、だったらもう少し意味を教えてくれ。

 

 

 

第2幕2場のレンスキーくんのメインのお歌の導入の下降音型!でだぞ!下降音型だぞ!どんどん音が沈んでいくように聞こえ、それがこの先の救いのなさの暗示みたいで大好きなんですが、物凄く淡白な音楽になってしまった。譜面通り演奏していただけることは大変ありがたいのですがもっと雰囲気をください。「あーこの人死んじゃうんだよなー。」と思わせてください。エモーショナルでお願いします。

 

 

 

 

オペラだからお歌が主役でお歌でお芝居して物語を進行させなければいけないけれど同じくらいオーケストラがつくりだす音楽も大事じゃないですか。この作品に関しては特にオーケストラの存在が大きいです。オーケストラピットの中じゃなくて客席まで届けておくれ。

 

 

オネーギン

初登場で田舎に馴染みすぎていて「大丈夫か?都会の男!」と思いましたが、第1幕2場の黒い衣装になったらだいぶ垢抜けたので安心しました。パーソナルカラーってやつ?そもそもジャケットのサイズは合っていたのかな?田舎の人々に配慮して田舎風に仕上げてきたのかな?優しい。

 

 

第一声の小ささに不安を覚える。終始声がパッとしない。歌手の中に声量のある人がいなかったので大丈夫でしたが、1人でも声量のある人がいたら完全にかき消されていたと思います。お持ちの声は悪くはないです。ただ、響きが浮つくのがパッとしない原因かと思います。発音もぼやぼや系の方でネイティブ(推定)でも明朗に発音できないこともあるのだなあ、とお勉強した。

 

 

 

小さくまとめてきたな、という印象。なので惹かれるポイントもないけれど大きな問題もないです。粗はあまり目立ちませんが、説教のお歌の「мечтами,мечтами」の「та」の崩れが気になった。この音だけ口の中を広げているように聞こえた。広げることは悪くはないのだろうけれど前後の音と差ができ、かつ大きく開けたことによる障害か謎にノイズのようなものがかかり聞いていてソワソワしました。そこまでよかったのに。テンポも歌手が若干早くなっていてオーケストラとの微妙なズレが気になりました。お説教のときに手を動かしすぎるのも気になりました。説教か腕の体操かどちらかでお願い致します。

 

 

 

第3幕2場のタチアーナさんとのやりとりはもう何をいっているのかわからず。疲労?外国に行って疲れたか?私の大好きな「Нет!Нет!Нет!Нет!」が猫の鳴き声みたいになってしまった。早いからしょうがないよね。猫に気を取られてたら終幕していた。

 

タチヤーナさん

この方も出だしの声の小ささにびっくりしました。声を張る必要はないのですが、コントロールされた小ささではなく何も考えずに歌っているように聞こえました。その後のオネーギン・レンスキー・オリガと4人で歌うときは1番綺麗に響いているように聞こえました。

 

 

 

タチヤーナさんは上記のように比較対象がいると上手に聞こえるのですが、1人で歌うと場が持たない印象を受けました。中音域で言葉を捌かなければいけない時に声が音に乗ってないように聞こえました。手紙のお歌の「Нет,все не то!〜」部分は早くはないのだけれど「しゃべった?」とツッコミたくなるような歌い方でした。また、フレーズの流れは綺麗なのですが、フレーズとフレーズの間の流れが切れやすいです。切れるというか繋げる気がないような気もする。フレーズごとに1回1回落ちていくのを感じました。この問題は間をつないでくれるオーケストラの音楽が存在しないということもありますが、もうちょっと頑張ってほしいです。また動きが全て振り付けに見えました。動きの指示をただこなされても困ります。

 

 

 

終始フワフワしているタチヤーナさん。どちらかというとオネーギンの方がつかみどころがなく、タチヤーナさんへ共感を寄せた方が客席に理解されるものが多い気がします。タチヤーナさんがフワフワに徹して終幕までいってしまうとただの痛いヤツで終わるので物語の締まり具合のために第3幕はしっかりして欲しい。ずっと夢の世界にいる。これは歌手の芝居能力があまりないことが原因かもしれない。第3幕でも何も変わっていないので、オネーギンすぐにタチアーナに気づくやつよ。

 

 

 

オリガ

オリガの「Ах」の言い方が綺麗だった。オリガだけでなく他3人の外国人歌手にも言えることですが、二重子音や「オリガ」の「リ」に当たる部分の発音がきれいですよね。当たり前といえば当たり前ですけれど、いちいち母音を入れてしまう民なのでネイティブ発音に感動しました。

 

 

しっかり低音域が出るオリガを待っていた。オリガが安定していると舞台の品質が一段上がります。縦に綺麗に口を開ける方で口周り不自然な力みもなく安心して聞けました。低音を鳴らしすぎかな?と思った部分もありましたが、声にストレスはかかっておらず何の問題もなく最後まで歌っていました。

 

 

この演出の理解し難いオリガを上手く昇華し、無駄に子供っぽい衣装や髪型もそれほど違和感なく着こなしており強いなと思いました。違和感はあった。でもそれは前回(2019年)から引きずっているからしょうがない。

 

 

ゆっくり休んで残りの公演も良い低音を聴かせてください。

 

グレーミン公爵

初登場の第一声で私は勝利を確信した。前回(2019年)の唯一の良心だったグレーミンさんは今回も良心です。違う歌手だけれど。

 

 

比較すると2019年の方が好みですが、安定感とグレーミンっぽさはどちらも同じくらいあり良いです。前回のグレーミンさんは背がお高めだったので衣装に大幅なお直しがあったのかなあ、と思いました。1曲歌って客席を総なめして帰らなければならなし、もし総なめできなかったら客席の記憶から抹消されるいう難しい役です。

 

 

好きだったところは、「жизнь моя」の「жизнь」をものすごく大切に歌うところですね。「ジー」の溜めまでいかないくらいの溜めが本当に良い!大切なのだな、と共感しました。後、お歌の中でオネーギンに呼びかける時にタチアーナに寄り添いながらもオネーギンに視線を送るのが好きですね。ちゃんと呼びかけている。簡単なことだけれど大事なの!ありがとう!

 

ママとニャーニャとトリケ

ロシア語ネイティブ(推定)に混ざりよく頑張りました。で終わりにしてもいいのですが、同じ職業として舞台に立っている人たちに対してそんな失礼な話もないので同じ基準で所感書きます。

 

 

 

ママは中音域と低音域の声が違いすぎる。中音域は押して出すようなことはしないけれど、上澄みのような声でスカスカしていた印象です。低音域は胸に落としてバリバリ鳴らしてました。女性歌手が低音域を歌う際に頭声から離れるもしくはミックスすることは当たり前だし悪いことだとも思いませんが、ママはただ出しやすいところで押しながら歌っているようにしか聴こえませんでした。確かに声は届くしロシア語も聞き取りやすくはなるのですが、それは声楽の(オペラの)歌い方としてどうよ?という心境でございます。

 

 

 

ニャーニャはひたすら発声が浅かった。発音もこもる。タチアーナと掛け合いで歌うと声量も響きのなさも発声の浅さも差が顕著にわかってしまって辛い。後、手の動きが目につきます。指揮しているのかと思ったわ。

 

トリケはこの演出の都合上、おかしく面白い人にしたい事はよくわかりますが、まず声を客席に届けてください。その後にお芝居が存在すると思います。芝居ありきでやっているとそれはオペラではないよと怒ってくる人がいると思います。私ではないです。

 

 

レンスキーくん(髪切らない?)

歌は上手。

 

 

 

第1幕1場のオリガへの告白のお歌は棒読みすぎて歌詞との温度差が面白かったです。この場面だけではなく全体を通して長い休みの後の第一声から1、2フレーズくらいは良い響きで歌えるのですが、段々声が上がってくるように聞こえました。母音の種類によって声質が変わるのも気になってあまりお歌の中身に集中できませんでした。

 

 

 

第2幕2場のレンスキーくんの見せ場お歌に関してです。2019年と同じ感想なのです。もちろん歌手は違いますが。高音ジャンプのときに所在不明の経由地挟まないでください。「Что день грядущий〜」の1番高い音にはまる前に謎の音が存在しました。正しい音に辿り着くまでに時差があり、瞬時に正しい音に上がれないことにより謎の経由した音が登場しているように聞こえました。響きは先に上がるけれど音と言葉が時間が経ってからついてくるように感じました。直行便でお願いします。

 

 

 

後「Куда куда」の2回目の「да」の音を思いっきり押したし広げたなと。出だしがとてもきれいだったので、この2回目の押しのせいで今後がとても不安になりました。仕上がってはいるのですが、だからこそ細かい部分の粗さが目立っていたように感じます。

 

 

以上です。

全体的なまとまりはあったのでこの謎な演出の中、健闘していたとは思います。でも「まとまりがある=品質が良い」ではないのです。歌手もオーケストラももっと頑張ってほしい。演出もがんばれ。歌手を含め舞台と劇場の規模があってないことを改めて実感しました。

 

 

 

 

次は千秋楽の感想かな(チケットある)。

都合がつけば31日も行こうかな?

前回(2019年)は二日目に観に行って多大なるショックを受けたので二日目はやめておこう。

 

劇場で直接お話ししてくださった方々、ありがとうございました。

 

 

終わり。

 

指揮:ヴァレンティン・ウリューピン

演出:ドミトリー・ベルトマン

タチヤーナ:エカテリーナ・シウリーナ

オネーギン:ユーリ・ユルチュク

レンスキー:ヴィクトル・アンティペンコ

オリガ:アンナ・ゴリャチョーワ

グレーミン公爵:アレクサンドル・ツィムバリュク

ラーリナ:郷家暁子

フィリッピエヴナ:橋爪ゆか

ザレツキー:ヴィタリ・ユシュマノフ

トリケ:升島唯博

合唱:新国立劇場合唱団

演奏:東京交響楽団

 

 

【オペラ】戦争と平和(マリインスキー劇場)

2023年11月26日(日)12:00公演

マリインスキー劇場2

セルゲイ・プロコフィエフ作曲

戦争と平和

 

 

 

お世話になっております。

三島でございます。

 

 

 

リアルタイムで書かないことによる永遠の更新遅延と戦っております。11月の話です。

 

 

 

 

この日はマリインスキー劇場2にオペラを観に行きました。新しい方のマリインスキー劇場です。場所はお隣同士です。演目はプロコフィエフ先生の「戦争と平和」というオペラですが、チケット買ってからしばらくはヴェルディ先生の「運命の力」だと思っていました。なぜ間違えていたのかわからない。どういう間違いなのかもわからない。

 

 

 

 

 

 

それでは感想いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

ゲルギエフ先生欠席

昼間の公演だったので、朝はネフスキー大通り周辺でお買い物をしていたら時間配分ミスでギリギリの到着になりました。

 

 

 

 

 

幸せのチョコレート買ったりしていた。

 

 

 

 

 

入口もコートを預けるクロークも混んでいて開演時間に客席に座れるかと不安でした。入口ではモタモタしましたが、クロークは係の方の捌き方がスピーディーですぐに客席に向かうことができました。迅速な仕事に感謝します。後、絶対「オペラグラスは?」って聞いてくれることにも感謝します。マリインスキー劇場2はホワイエも客席内も広く開放感があります。鬼ごっこしたい。客席と客席の間はそんなに広くないですが通路が広いように感じます。人が容易にすれ違うことができます。

 

 

 

 

この日の指揮者はロシアオペラは任せておけのヴァレリーゲルギエフ先生の予定でした。しかし開演間際に指揮者変更のアナウンスがパーヴェル・スメルコフさんが出てきました。

 

 

 

ゲルギエフ先生はスケジュール通りだった場合は

 

24日夜→皇帝に捧げた命

25日夜→戦争と平和

26日昼→戦争と平和

26日夜→戦争と平和

 

 

でした。全て4時間超え(休憩含む)のオペラです。ハードスケジュールすぎて笑う。働く指揮者。

 

 

 

ですので、26日昼公演の指揮者変更アナウンスがかかったときもそんなに驚かなかったです。もちろんゲルギエフ先生が指揮するのを楽しみにしていましたがそういうこともある。また会いに行こう。今後はモスクワでもチャンスがありそうですがマリインスキー劇場で聴きたいなあ。

 

 

 

 

 

変更アナウンスはあっさりしていて、「みんな!今日の指揮者はパーヴェルだよ!」というようなテンションで言っているように聞こえました。客席も「おお!」というリアクションが一瞬あっただけでした。日本の劇場だと謝罪から始まる気がするので文化の違いを感じました。変更理由はわかりませんでしたが、26日夜公演はゲルギエフ先生が振ったみたいです。復活してよかった。

 

 

 

 

 

 

 

オペラの感想

マリインスキー劇場公演の感想に関してはこの一言で終わる。

 

 

オーケストラさんが分厚い。

 

 

 

細い感想は書けないしこの作品に対して語れるほど知識はないのですが、とりあえず上手です。圧が強い。オーケストラピットにいるのに歌手より存在感がある。オペラなのに「歌いる?」と言いたくなるような仕上がり。マリインスキー劇場のオーケストラ恐るべし。特に休憩明けから終幕までの「戦争」に当たる部分の音楽はもうなんだかわからないくらいの圧でオーケストラを聴く上での臨場感をこれでもかとあじわった。

 

 

 

 

 

オーケストラを中心として聴けば満足度は高いのですが、これはオペラなので残念ながらお歌があります。お歌のことを考えるとオーケストラとのバランスが悪かったです。オーケストラの隙を縫ってお歌を探しにいかなければならないような客席に仕事が割り振られている。これは席の関係かもしれませんが、私が座った場所(1階席中程)ではお歌が聴こえにくかったです。最初から最後まで歌手がオーケストラに食べられてしまっているのが気になりました。演出にも食べられていた。

 

 

 

 

 

2023年2月にこの劇場で聴いたときにもお歌が聞き取りにくいな、と思った記憶があります。客席に歌手の声が届きにくい。際立ってイマイチな歌手はおらず、全員がオペラ歌手としての品質は保っているのですが、劇場内の80%しか行き渡らない声で物足りなさを感じました。こちらが聞き取りにいかなければならなくちょっと疲れました。

 

 

 

 

 

 

歌手の中で1番よかったのは伯爵令嬢役のナターシャちゃんを歌ったナターリア・パヴロワさんです。ロシア語のカタカナ表記は不安です。第一場出だしのアンドレイはよく歌えてはいるのですが、パッとしない声でぼやぼやしました。その後、ナターシャちゃんが頭上から歌い出すと舞台の焦点が合っていくような感覚になり、特別何が凄かったとかはないのですが、上手な歌を聞いた時の安心感に包まれました。ソーニャと仲良しな感じもとても可愛かったです。続いて第二場のナターシャちゃんも可愛い。1人だけソワソワしている様子に幼さがあった。なかなか相手が現れなくて大変だね。着ているピンクのドレスも可愛い。

 

 

 

 

こんな可愛らしいナターシャちゃんでしたが、第十二場は可愛さを堪能する時間もなくただ恐ろしい場面になっておりました。アンドレイが死ぬ場面です。ナターシャと一緒に踊るのですが、動くことができなくなった人の踊りが怖かったです。舞台も異空間にベッドが置いてあるような現実とは分離された世界に見え不気味でした。

 

 

 

 

 

ベズーホフ伯爵は高音はハマるんだけれど中音域が飛ばない印象を受けた。上で書いた通りでべズーホフだけの話ではないけれど特に気になった人の1人でした。同じくクトゥーゾフ将軍も声が飛ばない。聞き取りずらい。声が届かないことにより場面の迫力が落ちるというか締まらないというか。美味しい役なのに勿体無いと思いました。

 

 

 

 

第十三場はかっこよかったですね。舞台背景の建物や靡く旗がかっこいい。大人数が舞台上にいても渋滞せずに絵として成立しているのが素晴らしいです。マリインスキー劇場はこのああたり強いですよね。置物かと思ったらダンサーだったり、「お前!動くのか!」と驚きます。ただ最後の合唱はオーケストラの勝利で声聞こえずにもはやオペラとはなんなのか?と。オーケストラが充実していることは本当に素晴らしく感謝しかないのですが、私には刺激が強かった。修行が足りていないです。

 

 

 

 

舞台がかなり斜めになっていて普通に動き回れるの地味にすごい。軍の行進に乱れがなく見ていて気持ちよかったです。第二場の舞踏会は豪華絢爛ではないけれど品のある高級感がありました。ダンサー(バレリーナ)の踊りもシンプルでしたがとても美しかったです。ほんとにお得な公演だな。オペラ観に行ったらバレエまでついてくるなんて。

 

 

 

 

 

劇場内に現実を持ち込まない。現実の状況を重ねないように観劇していましたが、難しいこともありますね。銃声が怖かったです。

 

 

 

 

 

以上です。

自国のオペラを自国の劇場で自国の人が公演することの強さを感じました。

作品も演出もたくさんあっていいのですが、その中の「答えの一つ」を持っている劇場ですね。

 

 

そして自分の勉強不足も痛感しました。

リベンジ観劇します。

 

 

 

 

 

結局しっかりお顔を拝見できなかったので、橋の上にいたゲルギエフ先生を拝んでおきました。

 

 

終わり

その2【リサイタル】中村恵理ソプラノ・リサイタル

2024年1月7日(日)15:00公演

秋篠うたくらぶニューイヤーコンサート

秋篠音楽堂

中村恵理ソプラノ・リサイタル

お世話になっております。

三島でございます。

 

 

お正月明けの三連休の2日目に行われた中村恵理さん(以下敬称略)のリサイタルの感想その2です。

 

 

その1はこちら↓

mishimashikahika.hatenablog.com

 

 

 

この日の朝ご飯は新薬師寺方面にあるcafe zuccuさんにていただきました。人生で3回目の訪問です。

こちらのたまごサンドが美味しいです。ふわふわです。

 

 

 

 

では感想その2いってみよー。

シュトラウスおじいちゃんの歌曲たち

今回のリサイタルで一番楽しみにしていたリヒャルト・シュトラウスおじいちゃんの歌曲たちです。クレメンス・ブレンターノ(敬称略)の詩による6つの歌曲から1番目から4番目まで歌われました。直近でオーケストラ伴奏で前曲歌っているそうです(本人Facebookより)。5番目の「Amor」を省いたので、このレベルでは転がらないのかな、と思っていましたが、歌えないから省いたのではないようですね。中村恵理の「Amor」是非聴きたいです。

 

 

 

ここまでに歌ってきたイタリア語と日本語の歌曲に比べると声の浅さが気になりました。決して喉声ではないのですが、イタリア語を歌うときよりもポジションが上気味で金属音っぽく聞こえるときがありました。ドイツ語のお歌しか歌わなかったら気づかなかったかもしれませんが、イタリア語と日本語のお歌が素晴らしかったので、比較してしまいます。もちろんこのブレンターノの歌曲を舞台にもってこれる時点で十分素晴らしいのですが、中村恵理でも仕上がりきらないこともあるのだなあと。シュトラウスおじいちゃんは手強いです。

 

 

ドイツ語の発音もぼやけ気味で、フレーズの最初と最後の単語は聞き取れるのですが、間の単語は何いっているかがわかりにくいです。1曲目(「An die Nacht」)の出だしの「Heilige」の「Ha」の発音が飽和してしまいこの単語は曲内で何度も出てくるのでずっと気になりました。そもそも「H」の発音で焦点を合わせるのが難しい気もしますが、ここまで歌える人には求めたいところです。

 

続いて、2曲目(「Ich wollt ein Sträußlein binden」)は「私は声が転がる人よ!」と匂わせができるお歌ですね。好きです。最初の方の「Sträußlein」の三連符がボコボコしていました。その後の「Blümlein」の三連符の一番高い音は力技で引き上げているように聞こえました。このリサイタルで一番荒かった音です。不快というほどではないけれど、もっと滑らかさを求めたいところでした。ただその後の「Mir Tränen in den Klee」の音の処理が弾みすぎず、落としすぎずでとても綺麗でした。下降音型ではあるけれど響きは上にいくといった感じが良かったです。三連符警察みたいになっちゃった。最後(「Als mir dein Lied erklang」)が一番完成度が高かったように感じました。だんだんとドイツ語の乗りもよくなっていったように聞こえました。

 

 

 

この歌曲たちの難しさを改めて感じました。シュトラウスおじいちゃんの歌曲を聴いたとき、忘れてはいけないのは伴奏者へのお礼です。この歌曲を弾いてくれてありがとうございました。

 

オペラアリア

休憩挟んで第二部は全てオペラアリアです。オペラアリアをピアノ伴奏で聴くのはとても久しぶりな気がして新鮮でした。

 

1曲目に披露したのはワーグナー先生の「Dich, Teure Halle.」(タンホイザーより)です。ワーグナー先生のお歌を歌うんだな、と。次のレパートリーづくりでしょうか?表現力に定評のある中村恵理ですが、このお歌はまだまだ探り中のように見えました。発声は安定していますが、抜けきらない印象を受けました。言葉は第一部よりスムーズに聞こえました。アリアと歌曲の差でしょうか。シュトラウスおじいちゃんが厄介なのでしょか?

 

 

このリサイタルのハイライトは間違いなくデズデーモナのお歌です。ヴェルディ先生の「Salce,Salce 〜Ave Maria」(オテッロより)です。凄まじい集中力で歌っていました。私も凄まじい集中力で聴いていました。目も耳も離せないし離れない。長いお歌のはずだけれど時間感覚がなくなりました。そうなのよ、中村恵理は最終的に死ぬ役を演じるときの表現力が凄まじいのよ。(ミミを除く)

 

 

これくらい(どれくらい?)歌唱技術と表現力の両立ができている歌手が歌うと輝くお歌なんだな、と理解しました。死ぬ前のお歌だからって無理に暗くつくっているようには聞こえず、ただ物語の時間軸にいるデズデーモナが喋っているという感覚になりました。言葉を紡いでいるだけのような淡白さと感情が爆発したようなフォルテの緩急が良い。デズデーモナの内心は忙しいのですが、中村恵理自身は落ち着いて歌っているように見えました。中村恵理がデズデーモナを表現する媒体になっているみたいだった。お芝居だからあっているのか。ピアノ伴奏で抜粋で歌っているとは思えない完成度。今後、他の歌手の歌唱で満足できるのだろうか?

 

 

「Cantiamo!」の高音(ってほどでもないが)ジャンプも大成功です。「tia」が高音(ギリ五線内のファ♯)なので、その前の「n」で言葉が切れてしまい、大袈裟にいうと「カンッティアーモ」のように歌う歌手に遭遇したことがありますが、中村恵理は綺麗に繋いでくれたので嬉しかったです。しばらく後の「Buona notte」の二重母音が素晴らしく二重母音でした。「ボナノッテ」じゃないんだ、と思い出しました。その後「Ah〜!」の高音は楽譜通り情熱がこもってました。瞬時にはまる高音の美しさとデズデーモナの圧力に私大泣き。正確に言うと「Ah〜!」の前に息を吸った瞬間から泣いてた。素晴らしかった。

 

 

 

お歌が終わった後、数秒デズデーモナさんが乗り移ったままだったのが、戻ってきてくれて良かった。

 

 

その他、プッチーニ先生の「Chi il bel sogno di Doretta」(つばめより)は他の曲に比べると硬さがありましたが、最高音を細くなることなくそのまま当てにいってました。中音域と同じように高音域をだすことについては、広げすぎと思うこともありますが、時差なく正しい音にそのままたどり着けるのはすごいことです。このあたりは昨年来日したソニア・ヨンチェヴァ(敬称略)と同じものを持っていますね。せっかく名前をだしたのでヨンチェヴァと比較します。両名とも低音域もしっかり歌えるタイプのソプラノで好感が持てます。好感というか大好きです。ただ、歌い方に違いがあってヨンチェヴァはかなり胸に落として低音をつくるのに対し、中村恵理はほとんど落とさずに歌っています。頭声に近いところで低音域を歌いこなすのでもはや意味がわかりません。なんでそこで歌えるの?今回は小さい劇場だったので、大きい劇場だともっと胸に落とすかもしれませんが。

 

 

 

デズデーモナの印象が強烈で、最後の蝶々さんの薄くなっちゃった。でも、蝶々さんで締めるリサイタルってかっこいいな。でこの後のアンコールでムゼッタをばちばちに歌うと。楽しすぎ。

 

私のディーヴァ、あなたのディーヴァ

曲の完成度の高さの裏にどれほどの努力があるのでしょうか。私は中村恵理のパーソナリティはほとんど知りませんが、才能がありながらもそれに頼りすぎずに訓練を継続している方だと想像しております。妥協や甘えを許さない自分に対する厳しさを感じます。

 

 

今回のリサイタルは手抜き感は全くなく、どの曲も密度が高く溺れてしまいそうでした(褒めている)。中村恵理が表現する一曲一曲の世界が楽しくて苦しくて幸せでした。イタリア古典歌曲を聴いて楽しくなったことなどなかったのですが、この曲たちがとても雄弁で美しいことを教えてくれました。私は終演後にさっさと帰るのが好きですが、帰りたくなかったしなんなら圧倒されまくりで立てませんでした。

 

 

中村恵理を評価するときによく「日本人離れした声」という文章が使われています。よく見ます。日本人離れした声であることは確かですが、これからは「日本人離れしたパフォーマンス力」にしていただきたいです。

 

今日のディーヴァが明日のディーヴァではないし、声楽の技術なんて間違った歌い方や合わない曲ですぐ消えちゃうし、これから先ずっと「中村恵理最高!」って言っていられるかはわからないけれど、今回のリサイタルは心に残る素晴らしく公演になりました。あなたの歌唱技術、表現力、曲への姿勢に心からの感謝と敬意を。

 

 

事務ミス

余談です。

 

 

アンコールの最後に中村恵理本人からプログラムの曲順掲載ミスへの謝罪がありました。このリサイタルは主催は「秋篠音楽堂運営協議会」さんというところで企画は「秋篠うたくらぶ」さんだそうです。中村恵理の自主公演ではありません。なので主役が自分のミスでないことを舞台上で謝罪する必要はないかと思います。もちろん謝罪が悪いことではないし、客席を思ってのことだとは思います。本人の人柄や性格の可能性もあります。ただ、事務的なミスを主催・企画側が先に謝罪せず(アナウンスはあったけれど)主役が表立って謝ると言うのはちょっと疑問です。そもそも曲順のミスぐらいで謝る必要はないと思いますが。主催・企画側として自分たちの事務ミスを主役に謝らせないもしくは先に謝罪するくらいの意識が欲しいところです。これは主役がだれであってもです。

 

 

 

 

 

終演後はロビーまで出てきていました。関西地方のイントネーションが可愛いです。お顔を間近で見てもう感無量。泣きながら帰りました。京都に着く頃には泣き止みました。

 

 

あと、チケット代が3500円(当日4000円)でいいのか心配です。倍は取って良いです。3倍にしましょう。お得すぎて申し訳ない。奈良までの交通費を考えてくれたの?

 

 

 

以上で感想を終わります。

披露した曲全ての感想は書いていないです。公演時間は休憩あり約2時間だったかと思いますが体感時間は2秒でした。良い公演は一瞬で終わる。切ない。

 

 

 

素晴らしいリサイタルに行くことができ、また開催地が大好きな土地であったことは本当に嬉しいです。弾丸だったので奈良を堪能できませんでしたが、奈良公園を散策することはできたので良しとします。連休に遠出は好きではないのですが行って良かったと思っています。

 

 

次は新国立劇場の「椿姫」ですね。ドキドキしながら中村ヴィオレッタのお戻りを待っています。ソロでの演奏会を聴く機会も遠くないうちにあるといいな。

 

 

 

本当にありがとうございました。

 

 

 

 

次はロシア編に戻ります(予定)。

可愛い鹿さんでお別れです。

ソプラノ:中村恵理

ピアノ:木下志寿子

【リサイタル】中村恵理ソプラノ・リサイタル

2024年1月7日(日)15:00公演

秋篠うたくらぶニューイヤーコンサート

秋篠音楽堂

中村恵理ソプラノ・リサイタル

お世話になっております。

三島でございます。

 

 

この日は数少ない日本人の本物のオペラ歌手である中村恵理さん(以下敬称略)のリサイタルに行ってきました。場所は奈良県奈良市の秋篠音楽堂さんです。奈良ファミリー6階にあります。最寄駅はとんでもない本数の電車を捌いている近鉄大和西大寺駅です。音楽を聴きに奈良県を訪れるのは初めての経験で、午前中は鹿さんに遊んでもらい午後は劇場に行くというなんとも最高な日になりました。

 

 

 

奈良公園の木々は目を凝らしてみると蕾を見つけることができ早くも春の訪れるを見ることができました。奈良公園は四季を楽しむのに優れている日本の土地の一つだと思っております。鹿さんの換毛期やバンビちゃんたちの誕生も季節感を味わえますね。新幹線もホテルも奈良公園周辺もたくさんの人がおり、観光客が戻ってきたことを肌で感じました。日本人も外国からのお客様もたくさんいました。鹿さんたちもお腹いっぱい鹿せんべいを食べれているようです。観光客が多いところにいる鹿さんにはせんべいを拒否されました。

 

 

奈良公園の感想はこのあたりにしてリサイタルの感想にいってみよー。

 

プログラム概要

二部構成で第一部が日本語・イタリア語・ドイツ語の歌曲。ドイツ語は私の大好きなリヒャルト・シュトラウスおじいちゃんの歌曲を披露されました。今回はブレンターノの詩の歌曲でしたが、他にもNHK交響楽団との共演や過去の自身のコンサートなどでもシュトラウスおじいちゃんの歌曲を歌われているようで嬉しい限りです。好きと好きが合わさる演奏会って嬉しいですよね。中村恵理とシュトラウスおじいちゃんという組み合わせは奈良まで行って聴く必要がある。お召し物のドレスはゴールドを基調とした袖ありのタイトめのロングドレス(年末の第九で着ていた)でした。肘の位置くらいまでスリットが入っており、一般ピーポーが着ると「破れちゃったの?」となりますが、舞台上でパフォーマンスできる人が着ると様になりますね。

 

 

 

第二部はオペラアリアを歌われました。ワーグナー先生の「殿堂のアリア」(タンホイザーより)以外は全てイタリア語の作品からでした。こちらでは白いAラインのベアトップドレスにお着替えをされました。トップス部分のキラキラとボトムス部分の花っぽくくしゅくしゅしている装飾が可愛かったです。伴奏者も合わせてベアトップドレスにお着替えしてました。

 

 

アンコールは3曲。うち2つがオペラアリアの披露で、ヴェルディ先生の「Caro nome」(リゴレットより)、プッチーニ先生の「Quando me'n vò」(ラ・ボエームより)。最後の1曲はオペラアリアではなく「Non ti scordar di me」を披露。もはや第三部である。レオンカヴァッロ先生やプッチーニ先生のお歌を歌った後に「Caro nome」を第一部のイタリア古典歌曲を歌ったときのような歌い方で軽やかに歌いました。並の歌手だと疲労で発声がとっ散らかるところですが、丁寧に丁寧に歌います。想像以上に自由に歌える人である。ソプラノアンコール課題曲の「O mio babbino caro」ではなく同じ作曲家の「Quando me'n vò」を歌唱。最高音出ればOKみたいな風習があり高音飛ばし大会に参加したいソプラノ歌手がよく歌っている印象ですが、中村恵理は出だし部分だけでなく、間の記憶から薄れがちな「Ed assaporo allor 〜」もしっかり歌っていました。可愛く表情豊かにムゼッタの愛らしいキャラクターが伝わります。最後の「〜senti morir!」の部分で高音で力尽きずに、最後の音まで丁寧に歌われていたのが印象的です。数年前の藤沢市民オペラはミミではなく、ムゼッタを歌ってくれてもよかったのではないかと思いました。最後の「Non ti scordar di me」はとても思いがこもっているように聞こえました。どの曲にも思いはこもっていましたが、この曲では「このリサイタルを忘れないでね。」と言われているような気持ちになりました。私は死んでも覚えています。忘れられるわけがないし客席にいた皆様も同じ気持ちであると心から嬉しい。

 

 

ベルカント商法

アンコールの感想を先に書いてしまいましたが、第一部に戻りましょう。

最初の3曲はイタリア古典歌曲からの選択です。

 

 

「Nel cor pi non mi sento」

「Caro laccio」

「Se tu m'ami」

 

 

 

プッチーニ先生をばちばちに歌うような歌手がこの曲どもを歌うと正しい発声が何処かにお出かけしてしまっているので(断定はよくない)事故が起きると思います。プッチーニ先生のお歌が適当な発声でも歌えるという意味ではございません。ただ、ベルカント商法唱法から離れている方たちにイタリア古典歌曲は難しいという話です。譜面的な話ではなく、正しい発声、正しい音符の長さ、正しい音楽のラインを徹底して守らなければボロが出るからです。つまり誤魔化しが効かないよっていうことです。壮大なオーケストレーションはないし大きな感情表現もない。そもそもオペラ歌手の演奏会でわざわざイタリア古典歌曲を取り上げないですよね。かなり珍しいかと。オペラアリアで茶を濁そうぜ!

 

 

 

中村恵理は蝶々夫人もミミも歌うのでベルカント唱法から離れている歌手だと認識しておりました。しかし、中村恵理、ちゃんと綺麗に歌うのです。ちゃんと綺麗に歌うってなんだかわからないですね。具体的に書くと、フレーズの流れが綺麗で音や単語単位でボコボコしない。重くつくったり声色を調整したりしない。という感じです。

 

 

1曲目(「Nel cor pi non mi sento」)の出だしの声がとても軽やかでした。勝手に重い声をイメージしてしまうのですが、芯が太い軽い声で安定感と輝きがあってとても心地良いです。最初の方の細かい音符である「〜la gioventu」の正確さと軽快さがとても良かったです。イタリア語の発音は隣にイタリア語で育った人という比較対象がいない限りは良く聞こえると思います。比較対象がいるとちょっと奥の方で発音しているように感じると思いますが、歌詞は聞き取れるので特に問題はないです。母音に左右されることがほぼなく、言葉に影響を受けて音が潰れることや喉声になるようなこともありませんでした。イタリア古典歌曲と発音の品質はセットだなあ、と再認識しました。唯一気になったのが低音域以外の「o」の音がぼやけるところですね。浅いというより浮いているというのがしっくりきます。アクセントの有無で使い分けているようにも聞こえず。癖なのかな?これもイタリア古典歌曲を歌うからこそ気になるところですね。

 

 

 

2曲目(「Caro laccio」)は「son contento e prigionier」部分の適切な母音の伸ばし方が良かったですね。油断するとお経になるからな。ソンコンテントエコンテント。子音と母音の結びつきってとても難しいなあ。譜面を見ているだけではわからないので実際の歌唱で教えてくれる歌手がいることはとって大変ありがたいことだと思います。

 

 

 

3曲目がご自身に一番合っているのでないかと思いました。「Ma se pensi〜」の高音ジャンプが美しすぎて泣いてしまった。時差なく正しい音に移動する。なんだこれは。高音を出すたびに私の心臓が浮く。ジェットコースターの急落下の状態に似ています。ドキドキする。同じく「Ma se pensi〜」の溜めも良かったです。

 

 

多くの声楽学習者(趣味も含む)が最初に出会うのがイタリア古典歌曲なので、自身が学び始めに勉強した曲も含まれていると思いますが、ただの思い出の振り返りにならずに、キャリアを積んだ今だからこそできる歌い方をしているように見えました。この3曲がこんなに立体的になるのだなあ、と。新国立劇場「椿姫」のときにも思いましたが、譜面から音楽を起こす力も相当持っておりますね。必ずしもドラマチックに歌う必要はないけれど、ただ歌うだけではカラオケ大会になってしまう。ベルカント商法関係者はもしかしたら過剰表現というかもしれません。その場合は、過剰表現ができるほど歌える人なので、と言いましょう。私は好きです。素晴らしい体験でした。

 

日本歌曲

個人的に日本歌曲は誰が歌っても好きになれなくて、なるべく関わらないで生きていきたいと思っております。事前告知のポスターには記載がなかったのでプログラムを見て驚きました。日本歌曲を歌うイメージがなかったので自分のリサイタルで選ぶのかあ、と思いました。

 

日本語の「ん」の発音以外は良かったと思います。オペラ歌手が日本歌曲を歌うと響きや発声を意識しすぎて、イタリア語みたいな発音になります。もちろんイタリア語と日本語の発音が全然違うとはいいません。ですので、悪くはないのですが、日本語の発音をあまりにも放棄しすぎじゃないか?と思うことが多いです。で、今回の中村恵理の歌唱は正しい日本語の発音を崩壊させずに歌っていたので好感が持てました。「日本語に聞こえる」のではなく日「本語が聞こえる」のです。ただ平べったくなりすぎるのは避けているようで、発声と発音を両立できるあたりは良い勉強をしたのだなあ、と思います。もし天性のものならそれは素晴らしい才能です。ただ「ん」の発音だけは鼻にかけすぎというか「ん」だけ妙に浮くなあと思いました。発音的にはあっているのだけれど悪目立ちするというか。難しい。

 

 

日本歌曲からは

「かやの木山の」

曼珠沙華

の2曲を歌われました。

 

 

曼珠沙華」は中村恵理と合いますね。表現力が爆発していた。彼岸花というと赤色を思い浮かべますが、どちらかというと黒ですね。黒い彼岸花って存在しない?重い曲に仕上がっていました。もはや怖いくらいです。「ちょうどあの児の年の数」部分の耳を塞ぎたくなるような苦しさがありました。歌詞と声がマッチしますね。さっきまでのベルカント唱法を引き連れながらさらにドラマチックにといったところです。表現力が素晴らしいです。

 

 

 

とりあえず第一部途中までの感想。

この後、別更新で残りの感想を書きます。

 

 

 

鹿さん可愛い。

ソプラノ:中村恵理

ピアノ:木下志寿子

その2【ミュージカル】オネーギンの悪魔

2023年11月25日(土)19:00公演

LDM劇場(サンクトペテルブルク)

オネーギンの悪魔


お世話になっております。

三島でございます。

 

 

 

ミュージカル「オネーギンの悪魔」の感想その2です。

スタイリッシュな感想が書けないので今日も元気にツッコミをしていきます。

よろしくお願い致します。

 

 

 

 

ガイドライン

「悪魔のオネーギン」というミュージカルの登場人物の名前や役割はほぼ原作と変わりありません。オネーギンという人物だけ3人(3体)登場します。感想を書く上でごちゃごちゃしそうなのでここでの呼び方を明記しておきます。

 

 

ジジネーギン

物語の現在軸のオネーギン。登場は少ないけれどジジネーギンの回想(夢の中)という程でみんながよく知っているオネーギンの物語が展開されます。

オネーギンさん

いわゆるオネーギン。タチアーナさんにわざわざ説教しにいくオネーギンです。

悪魔さん

タイトルロールのオネーギン。オネーギンの中にいる別人格のオネーギンだそうです。ダンス要員なので歌いません。

 

 

 

では感想いってみよー。

 

 

 

タチアーナ!ピシモー!

開幕早々に登場するのは車椅子に乗ったジジネーギン。施設に収容されております。ノスタルジーに老後生活をしているのではなく、「タチアーナ!ピシモー!」と独り言を言います。叫んでいるわけではないけれどはっきりとした声でした。ピシモーとはロシア語で手紙を意味するそうです。ジジネーギンになってもタチアーナさんと手紙に対して執着しておりますね。介護士もあきれながらジジネーギンに注射(精神安定剤かな?)をします。ショックではないけれどできればオネーギンの老後は見たくないというのが素直な感想。まあフィクションだけれども。介護士たちはフランス語で話しておりました。

 

 

 

開幕のジジネーギンから回想への導入はとても美しくスムーズで好きです。舞台上にあるカーテンが開いて悪魔さんとジジネーギンと共に時代を遡ります。舞台上にカーテンで仕切られている円形状回る舞台装置があります。この回る舞台とジジネーギンが持っているオルゴールがリンクした演出になっており、オルゴールを閉じると回る舞台にいる人たちも静止するような演出になっておりました。回転速度が早いのでアトラクションみたいで楽しそうでした。で、オルゴールが何かというとパーティーでオネーギンさんがタチアーナさんに贈ったプレゼントなのです。ガラス製の大皿のような見た目と大きさなので最初は何を持っているのかわかりませんでした。

 

 

 

ジジネーギンは思い出振り返り要員としてときどき登場します。レンスキーくんのと決闘の場面ではジジネーギンが舞台前方から決闘場面を見ている演出となっており車椅子が大きいの邪魔ました。決闘したことを後悔しているご様子。決闘の場面はとても興味深く、まずレンスキーくんの方が3秒ほど遅刻します。逆ですね。もしかしたらタイミングの問題でわざとではないかもしれません。次に、銃声と共にオネーギンさんとレンスキーくんの間にタチアーナさんが割り込みます。立ち位置的にタチアーナさんが撃たれたように見えて物語の行く末を心配しました。もちろんタチアーナさんは撃たれておりません。ドンパチやっているところに飛びこむなかれ。オネーギンさんはレンスキーくんを打ち抜きませんが悪魔さんがレンスキーくんを殺しにいくので実質オネーギンさんが殺したということになります。結局助からないレンスキーくん。オネーギンさんも当てたつもりはないから驚いていました。

 

 

オネーギンさんとタチアーナさん対面

目隠しをして歩き、ぶつかった相手が運命の人!というとても平和な遊びの場面がオネーギンさんとタチアーナさんの初対面の場面になります。タチアーナさんが客席から登場してきたオネーギンさんにぶつかり、目隠しを取ったところで「エフゲニー・オネーギン」と名乗ります。「やあ!」とか「こんにちは!」とかではなくフルネーム。タチアーナさんは恥ずかしくなってしまってオネーギンさんから離れます。少女漫画かよ。タチアーナさんの気持ちになってみなよ。そりゃ好きになりますわ。目の前にイケメン(推定)が登場してしかも運命の相手ゲームをしているのですよ。そんなんもう好きじゃん。オネーギンさんが帽子を被っているのが良いですね。

 

 

私の聞き取り間違いの可能性はありますが、この場面でレンスキーくんがオネーギンさんに自己紹介をします。ということは初対面?初めましてじゃなきゃ自己紹介しないよね?その後にタチアーナさんがオネーギンさんに自己紹介をします。名前しか名乗りませんが「タチアナデス!!」のような言い方で恥ずかしさと照れがありだいぶ面白かったです。そして可愛い。その後にオリガがオネーギンにご挨拶。オリガがフランス語で挨拶するのが良いですね。一生懸命にフランス語を話したり、オネーギンさんに差し出す方の手を間違えてしまったりととにかく可愛いし微笑ましい。オリガの後は、トリケが紹介されて、今度はオネーギンがトリケにロシア語で挨拶をします。ロシア語で!!嫌味たっぷりな話し方でした。あえてロシア語を使っているのが丸わかりです。オネーギンさんそういうところあるよねー。この自己紹介場面はほのぼのしていて雰囲気よく、物語が先に進むと悲しみが増えるだけなのでここで終幕してほしい気持ちになりました。平和な一家で終わってほしかった。

 

 

オリガがずっと可愛い

悪魔さんの姿はジジネーギン以外は直接見ることができません。しかし、例外でオリガだけは悪魔さんを直接見ることができます。オリガが子供であることを示したかったのかな?子供ってそういうの見えやすいじゃん(?)。オリガが悪魔さんを直視してしまいとても怖がります。子供っぽくてとても可愛かったです。泣いてしまったオリガを家族で慰めているときにトリケが当たり前に一緒にいます。頼もしいファミリーです。

 

 

レンスキーくんがオリガに対して告白する場面もとても可愛く面白かったです。最初、舞台上でレンスキーくんが告白の練習をします。声の高さを調整したり言い方を変えてみたりと色々試してました。レンスキーくんは明るい髪色に強めにクルクルしている髪型が印象的です。ハンサムなんだけれどあどけなさが残っている感じがとても好きです。オリガが登場し告白を実践するときがきます。レンスキーくんの練習の成果より、レンスキーくんの後ろでオリガに指示を出すニャーニャ(乳母)が面白くて笑えました。客席盛り上がってました。レンスキーくんごめんね。ニャーニャがオリガに「胸を持ち上げて!!」「手を差し出して!!」とジェスチャーで教え、オリガがその通りに行動するのが可愛いしずっと面白かったです。

 

 

 

オネーギンさんへのお願い

本公演のオネーギンさんは美しくカッコよく立ち姿だけでも十分価値があるなと思いました。オネーギンさんの気持ちを露骨に表現するようなお芝居は少なく飄々としてつかみどころがないような雰囲気がとても好きです。演じる側はオネーギンに対して煮詰めなければいけないと思いますが、客席に伝えすぎないことがキャラクター性を深める役だと思いました。わかりやすい表現は、決闘で銃弾を外したはずなのにレンスキーくんが死んじゃって驚いているところくらいでしょうか。タチアーナさんとの再会から終幕までは除きます。「オネーギンは結局なんなの?」という感想を抱かせるのが勝ちというか、余白を余白のまま提供していただけることが興味関心を誘うのかなあ、と。特にこのミュージカルだとジジネーギンがわかりやすくお芝居をするので昔と今の対比を示すことができ良い効果を生みますね。

 

 

だがしかし、オネーギンさんにはお願いがあります。

 

パーティー中に説教しないでください!!

 

 

どうですか?自分のパーティーに思いを寄せている人が来てくれました。話すチャンスがやってきました。プレゼントにオルゴールをくれました。これは良い展開か?と思ったら説教が始まります。どうですか?心臓に悪いですね。ダメージが大きいです。ここでダメージを食らってからの決闘お申込からの決闘ですからね。とんでもパーティーです。オネーギンさんは一旦手紙を返してくれますが、その後回収します。手紙を持って帰るタイプのオネーギンさんでした。

 

 

 

喋ったり、動いたりせずですが、オネーギンさんがタチアーナさんからもらった手紙を読んでいる描写が3秒くらいありました。あんまり見たくない。こっそり読んでほしい。無表情で読んでいる姿がおそろしい。

 

 

本公演はタチアーナさんはトリプルキャストなのに対してオネーギンさんのキャスティングは1人だけです。イヴァン・オジョギンさんという名前で著名なミュージカル俳優だそうです。因みにロシア語のカタカナ表記の信憑性は薄いです。

 

一応インスタグラムを貼っておこう。(ログインってなっているけれど飛ぶはず。)

www.instagram.com

 

背が高く、体格も良く舞台映えする良い俳優だなと思いました。

 

 

 

パンフレットのキャスト表を見るとオネーギンさんの次に名前が書いてあるのがタチアーナさんではなく、レンスキーくんなのが興味深いですね。ただ、インスタグラムのキャスト表はタチアーナさんが2番目に書いてあるので特に意味はないのかもしれない。

 

 

 

悪魔さんの役割

全ての元凶の悪魔さんです。悪魔さんは歌わないです。踊ります。ひたすら踊ります。ミュージカルに出演しているダンサーの方のダンスが上手すぎて別途料金を払う必要があるのではないかと思ってしまいます。お遊戯ダンスじゃないのよ。悪魔さんは子分を2体連れており、子分たちは踊りながら椅子を片付けたりカーテンを閉めたりと舞台転換要員としても活躍していました。タチアーナさんが書いた手紙を届けたのも悪魔さんの子分です。アクロバティック要素も含んだ踊りがとても迫力があって見応えがありました。

 

 

全てのトラブルを悪魔さんが引き起こしており、タチアーナさんが手紙を書いたのも、オリガとオネーギンさんを絡ませたのもこの悪魔の仕業です。唯一、悪魔さんのご意向に沿わなかったのがレンスキーくんの決闘のお申込です。レンスキーくんは白い手袋を投げようとしますが、ここで時間が止まります。オリガと悪魔さんの遭遇場面になるのですが、ここでニャーニャが悪魔についての歌を歌います。この歌を聴き悪魔さんが心を改め、決闘のお申込をなかったことにしようとレンスキーくんが投げようとしている手袋を回収し時間を動かします。手に持っていた手袋がなくなり、決闘のお申込が寸前で取り消されことなきを得たかと思ったら、なんとレンスキーくんはもう片方の手袋を投げました。これには悪魔さんもびっくりしておりました。そんな顔するのね、と。この場面以降、世界を引っ掻き回して楽しそうだった表情が崩れ出します。手袋に関しては両方回収しておいてね、って誰が助言してあげてください。

 

 

タチアーナさんの存在感

吐息混じりの歌い方や喋り方が気になりました。どういう意図でやっているのか考えましたがわかりませんでした。主要人物の中で一番存在感がなかったです。ただ悪魔さんに振り回されているという程なので、悪魔さんより前に出ないようにするためにあえて存在感を薄くしているのかもしれません。

 

 

オネーギンさんに本を返しにいく描写があり、何度も本を返す動作を練習しているのがとても可愛かったです。しかし、実際にオネーギンさんに返す場面では、本を持つ手に力を入れすぎてオネーギンさんが受け取ろうとしているのに手が離れないというシュールな描写になっていました。

 

 

 

本公演ではモブ化しているグレーミン公爵との結婚を物凄く嫌がっており、可哀想だなあと思いました。グレーミン公爵が可哀想です。

 

 

オネーギンさんとの最終場面は大変に美しくてお気に入りです。熱烈に力強く歌っているのですが、晴れ渡る事のない内容が辛いです。「愛してる。愛してる。愛してる。」と歌いますが救いようはない。オネーギンさんが近づいてきて物理的な距離が縮まったのに、全く縮まらない2人の関係性が苦しくも美しいです。タチアーナさんのお歌の後奏部分がオペラ「エフゲニー・オネーギン」(チャイコフスキー作曲)の序曲の出だしを上手に使用していました。下降音型がこの後にどんでん返しがないことを物語っており切ないです。そして美しいです。この使い方はずるいですね。素晴らしいです。

 

 

あっ!ジジネーギンは死にます。(ネタバレ?)

 

 

以上です。

カナダ版との比較をしたかったけれど全然できませんでした。

 

 

終幕後にオネーギンさん、レンスキーくん、オリガが舞台上に戻ってきて唐突にフォトセッションが始まりました。(どこかで告知があったと思うけれど私にはわかりませんでした。)

 

 

オネーギンさんと写真を撮れるチャンス到来。

オネーギンさんの隣に立てるチャンス到来。

しかし、防寒優先のダサすぎる服装とほぼ化粧していないお顔は恥ずかしすぎるのでフォトセッション現場を見つめながら会場を後にしました。レンスキーくんがオリガの腰に手を回しているあたりが夢を壊さないでいいなあと思いました。

 

 

 

翌日の別公演のチケット捨ててお代わり観劇しようかなと思ったくらい好みでした。思っただけなので結局行っていません。現金大事だから。楽しくて面白いけれどオリジナル要素で全体を台無しにするようなことはなく、原作を守りながらも新しいアプローチをしているところが興味深かったです。数年前から観たいと思っていた作品だったのでようやく劇場での観劇が叶い、またクオリティも素晴らしく大変に満足です。

 

 

ではまた劇場で。

もうすぐロシア編終わる。

【ミュージカル】オネーギンの悪魔

2023年11月25日(土)19:00公演

LDM劇場(サンクトペテルブルク)

オネーギンの悪魔

 

 

 

 

お世話になっております。

三島でございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日はサンクトペテルブルクにあるミュージカル劇場に行きました。

演目はオペラでもお馴染み、プーシキン先生原作の「エフゲニー・オネーギン」を題材にした「オネーギンの悪魔」というタイトルのミュージカルです。決してオネーギンの悪口を言っているわけではありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では感想いってみよー。

概要と全体の感想、それ以外と2つ更新します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LDM劇場とオネーギン

マリインスキー劇場を起点に行動したのでLDM劇場は若干遠くまた地下鉄の駅へもそれなりに歩きます。ヤンデックスマップにお尋ねしたところ近い駅でも徒歩20分はかかる様子。昼間ならいいのですが夜に歩くと考えると長い。後、劇場周辺は暗い。かといってLDM劇場を起点にしてしまうとマリインスキー劇場のアクセスが悪くなる。悩みどころですね。帰りにバスを待っている方が多くいましたので「バス、難しい。」と思わない方は問題ないです。私は「バス、難しい。」と思う人なのでタクシーで移動しました。ヤンデックスゴーというアプリでヤンデックスタクシーを呼びます。ロシア版ウーバータクシーです。使い勝手が良く価格も高くないので重宝しております。

 

 

 

 

 

 

 

 

タクシーで劇場の正面まで行きましたが、劇場付近はここに劇場があるのかと疑いたくなるくらいよくわからないところにあります。周りにあるのは何?いざ劇場の中に入ってみると若い女性のスタッフさんたちが頭にトナカイの角のアクセサリーや花冠(造花)をつけていおりまして、地元の若者のパーティーに紛れ込んでしまったかと思い焦りました。ホワイエにあたる部分はとても狭く小さなお食事スペースと売店があるくらいでした。コートを預ける場所もありますが、係の人はおらず自分で預ける仕様になっておりました。大音量でクリスマスソングがかかっていた記憶があります。

 

 

ホワイエでは気球が天井にぶつかっていました。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホワイエも客席内も劇場というよりかはライブハウスのようなつくりになっていました。劇場よりライブハウスの方がドキドキします。オーケストラピットはありません。なので1列目と舞台の距離は近いです。手を伸ばしたら届きます。客席内の両側の壁にコートをかけるフックがあり多くの人が使っておりました。私も客席内の壁のフックにコートを掛けました。控えの札や番号がないので位置を自分で覚えておかないといけません。私はなんとなくでしか覚えていなかったので帰りに物凄く焦りました。みんな似たような色のダウンだから困る。今度はショッキングピンクのダウンを着ていこう。タクシー移動ならコートなくても大丈夫そうですね。

 

 

 

 

 

 

 

劇場名のLDMとは

 

Life

Dedication to 

Musicals

 

の略だそうです。英語かい。

 

 

 

 

 

 

様々なミュージカルを上演している劇場のようで、「悪魔のオネーギン」の他にも「巨匠とマルガリータ」「ロリータ」「ラスプーチン」などがあります。ラスプーチンのミュージカル?ラスプーチン歌って踊るの?それは見たすぎる。開演前や幕間も舞台上のスクリーンで終始宣伝映像を流していたので気になりました。HPを見ると随分先のスケジュールまで出ているので予定が立てやすいです。ただ同じ演目を1週間単位(くらい)で上演しているので色々見るには時間がかかりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミュージカルのオネーギンは2023年2月にモスクワのタガンカ劇場で観劇したカナダ産のオネーギンが記憶に新しいところです。今回サンクトペテルブルクで観たのは別物のミュージカルです。感想を書くのに時々比較できたらなと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

オネーギンの悪魔は2015年に初演されたミュージカルだそうです。意外と古い。このミュージカルはお得なことにオネーギンが3人出てきます。一人は人じゃないから3体の方が良いかも。なかなかね、3人も同時にね、オネーギンを召喚することはできないからね。貴重です。ミュージカルの流れに沿って紹介すると最初に出てくる老人オネーギン。ジジネーギンと呼びます。ミュージカルの現在軸のオネーギンがジジネーギンです。次に登場するのが普通の(?)のオネーギン。タチアーナさんと出会ったりレンスキーくんと決闘したりする時間軸に存在するオネーギンです。ジジネーギンの回想(夢の中なのかな?)にて登場します。そして最後はミュージカルのタイトル通りの悪魔のオネーギン。以下悪魔さんと呼びます。オネーギンの中にいる別人格のオネーギンとでもいいましょうか。語弊はありまくりですが、悪魔さんが全ての元凶というお話の展開になっております。悪魔さんは歌いません。ダンス要員です。

 

 

 

 

 

お金を持っていそうな劇場でも演出でもありませんでしたが、安っぽさを感じるわけでもありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カナダ版同様にチャイコフスキー先生の音楽を要所要所で使っておりますが、カナダ版よりも濃度は薄いです。時々聞こえるというか、匂わせてくるというか。薄めです。ただ時々聞こえる聞き慣れたメロディが心を掴み取りにきます。楽しいです。

 

 

 

これはカナダ版のオペラでいうところの女性合唱のお歌になります。

ほぼチャイコフスキー先生だと思います。

open.spotify.com

 

 

 

 

 

 

 

 

以上概要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全体の感想

色々と好きな場面があるのですが、長くなるので本更新では全体の感想を少し。

 

 

 

 

あらすじを読んでいた限りでは、悪魔さんがどのように機能していくのかがわからず楽しめるか不安でしたが、劇場で観劇してみると、悪魔さん主軸で描かれるオネーギンの物語が新鮮でまた悪魔さんのダンスが美しいくて話も踊りも楽しめました。悪魔さんとオネーギンさんという同じ人だけれど違う人格の書き方が安わかりやすく、言葉がわからない私でも楽しむことができました。オペラで観るオネーギンさんよりニヒルでシュッとしていてかっこよくてタチアーナさんが好きになっちゃう理由がよくわかりました。

 

 

 

 

 

女性陣がみんな華やかでだいぶ美の暴力だった。タチアーナさんのママがとても美しい。しかし若すぎる。乳母も若いけれど容姿(体に詰めているのかも)が乳母だった。ファンキーで子供たち思いのニャーニャ(乳母)は信頼できますね。ファミリー全員が美しかった。

 

 

 

 

 

 

 

そしてよく笑った。オネーギン見ているのかと疑うくらい笑える場面が多かったです。また別更新にて詳しく書きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キレが悪いけれどここでとりあえず更新します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ではまた劇場で。