三島の見解

古の女子高生

その2【ミュージカル】オネーギンの悪魔

2023年11月25日(土)19:00公演

LDM劇場(サンクトペテルブルク)

オネーギンの悪魔


お世話になっております。

三島でございます。

 

 

 

ミュージカル「オネーギンの悪魔」の感想その2です。

スタイリッシュな感想が書けないので今日も元気にツッコミをしていきます。

よろしくお願い致します。

 

 

 

 

ガイドライン

「悪魔のオネーギン」というミュージカルの登場人物の名前や役割はほぼ原作と変わりありません。オネーギンという人物だけ3人(3体)登場します。感想を書く上でごちゃごちゃしそうなのでここでの呼び方を明記しておきます。

 

 

ジジネーギン

物語の現在軸のオネーギン。登場は少ないけれどジジネーギンの回想(夢の中)という程でみんながよく知っているオネーギンの物語が展開されます。

オネーギンさん

いわゆるオネーギン。タチアーナさんにわざわざ説教しにいくオネーギンです。

悪魔さん

タイトルロールのオネーギン。オネーギンの中にいる別人格のオネーギンだそうです。ダンス要員なので歌いません。

 

 

 

では感想いってみよー。

 

 

 

タチアーナ!ピシモー!

開幕早々に登場するのは車椅子に乗ったジジネーギン。施設に収容されております。ノスタルジーに老後生活をしているのではなく、「タチアーナ!ピシモー!」と独り言を言います。叫んでいるわけではないけれどはっきりとした声でした。ピシモーとはロシア語で手紙を意味するそうです。ジジネーギンになってもタチアーナさんと手紙に対して執着しておりますね。介護士もあきれながらジジネーギンに注射(精神安定剤かな?)をします。ショックではないけれどできればオネーギンの老後は見たくないというのが素直な感想。まあフィクションだけれども。介護士たちはフランス語で話しておりました。

 

 

 

開幕のジジネーギンから回想への導入はとても美しくスムーズで好きです。舞台上にあるカーテンが開いて悪魔さんとジジネーギンと共に時代を遡ります。舞台上にカーテンで仕切られている円形状回る舞台装置があります。この回る舞台とジジネーギンが持っているオルゴールがリンクした演出になっており、オルゴールを閉じると回る舞台にいる人たちも静止するような演出になっておりました。回転速度が早いのでアトラクションみたいで楽しそうでした。で、オルゴールが何かというとパーティーでオネーギンさんがタチアーナさんに贈ったプレゼントなのです。ガラス製の大皿のような見た目と大きさなので最初は何を持っているのかわかりませんでした。

 

 

 

ジジネーギンは思い出振り返り要員としてときどき登場します。レンスキーくんのと決闘の場面ではジジネーギンが舞台前方から決闘場面を見ている演出となっており車椅子が大きいの邪魔ました。決闘したことを後悔しているご様子。決闘の場面はとても興味深く、まずレンスキーくんの方が3秒ほど遅刻します。逆ですね。もしかしたらタイミングの問題でわざとではないかもしれません。次に、銃声と共にオネーギンさんとレンスキーくんの間にタチアーナさんが割り込みます。立ち位置的にタチアーナさんが撃たれたように見えて物語の行く末を心配しました。もちろんタチアーナさんは撃たれておりません。ドンパチやっているところに飛びこむなかれ。オネーギンさんはレンスキーくんを打ち抜きませんが悪魔さんがレンスキーくんを殺しにいくので実質オネーギンさんが殺したということになります。結局助からないレンスキーくん。オネーギンさんも当てたつもりはないから驚いていました。

 

 

オネーギンさんとタチアーナさん対面

目隠しをして歩き、ぶつかった相手が運命の人!というとても平和な遊びの場面がオネーギンさんとタチアーナさんの初対面の場面になります。タチアーナさんが客席から登場してきたオネーギンさんにぶつかり、目隠しを取ったところで「エフゲニー・オネーギン」と名乗ります。「やあ!」とか「こんにちは!」とかではなくフルネーム。タチアーナさんは恥ずかしくなってしまってオネーギンさんから離れます。少女漫画かよ。タチアーナさんの気持ちになってみなよ。そりゃ好きになりますわ。目の前にイケメン(推定)が登場してしかも運命の相手ゲームをしているのですよ。そんなんもう好きじゃん。オネーギンさんが帽子を被っているのが良いですね。

 

 

私の聞き取り間違いの可能性はありますが、この場面でレンスキーくんがオネーギンさんに自己紹介をします。ということは初対面?初めましてじゃなきゃ自己紹介しないよね?その後にタチアーナさんがオネーギンさんに自己紹介をします。名前しか名乗りませんが「タチアナデス!!」のような言い方で恥ずかしさと照れがありだいぶ面白かったです。そして可愛い。その後にオリガがオネーギンにご挨拶。オリガがフランス語で挨拶するのが良いですね。一生懸命にフランス語を話したり、オネーギンさんに差し出す方の手を間違えてしまったりととにかく可愛いし微笑ましい。オリガの後は、トリケが紹介されて、今度はオネーギンがトリケにロシア語で挨拶をします。ロシア語で!!嫌味たっぷりな話し方でした。あえてロシア語を使っているのが丸わかりです。オネーギンさんそういうところあるよねー。この自己紹介場面はほのぼのしていて雰囲気よく、物語が先に進むと悲しみが増えるだけなのでここで終幕してほしい気持ちになりました。平和な一家で終わってほしかった。

 

 

オリガがずっと可愛い

悪魔さんの姿はジジネーギン以外は直接見ることができません。しかし、例外でオリガだけは悪魔さんを直接見ることができます。オリガが子供であることを示したかったのかな?子供ってそういうの見えやすいじゃん(?)。オリガが悪魔さんを直視してしまいとても怖がります。子供っぽくてとても可愛かったです。泣いてしまったオリガを家族で慰めているときにトリケが当たり前に一緒にいます。頼もしいファミリーです。

 

 

レンスキーくんがオリガに対して告白する場面もとても可愛く面白かったです。最初、舞台上でレンスキーくんが告白の練習をします。声の高さを調整したり言い方を変えてみたりと色々試してました。レンスキーくんは明るい髪色に強めにクルクルしている髪型が印象的です。ハンサムなんだけれどあどけなさが残っている感じがとても好きです。オリガが登場し告白を実践するときがきます。レンスキーくんの練習の成果より、レンスキーくんの後ろでオリガに指示を出すニャーニャ(乳母)が面白くて笑えました。客席盛り上がってました。レンスキーくんごめんね。ニャーニャがオリガに「胸を持ち上げて!!」「手を差し出して!!」とジェスチャーで教え、オリガがその通りに行動するのが可愛いしずっと面白かったです。

 

 

 

オネーギンさんへのお願い

本公演のオネーギンさんは美しくカッコよく立ち姿だけでも十分価値があるなと思いました。オネーギンさんの気持ちを露骨に表現するようなお芝居は少なく飄々としてつかみどころがないような雰囲気がとても好きです。演じる側はオネーギンに対して煮詰めなければいけないと思いますが、客席に伝えすぎないことがキャラクター性を深める役だと思いました。わかりやすい表現は、決闘で銃弾を外したはずなのにレンスキーくんが死んじゃって驚いているところくらいでしょうか。タチアーナさんとの再会から終幕までは除きます。「オネーギンは結局なんなの?」という感想を抱かせるのが勝ちというか、余白を余白のまま提供していただけることが興味関心を誘うのかなあ、と。特にこのミュージカルだとジジネーギンがわかりやすくお芝居をするので昔と今の対比を示すことができ良い効果を生みますね。

 

 

だがしかし、オネーギンさんにはお願いがあります。

 

パーティー中に説教しないでください!!

 

 

どうですか?自分のパーティーに思いを寄せている人が来てくれました。話すチャンスがやってきました。プレゼントにオルゴールをくれました。これは良い展開か?と思ったら説教が始まります。どうですか?心臓に悪いですね。ダメージが大きいです。ここでダメージを食らってからの決闘お申込からの決闘ですからね。とんでもパーティーです。オネーギンさんは一旦手紙を返してくれますが、その後回収します。手紙を持って帰るタイプのオネーギンさんでした。

 

 

 

喋ったり、動いたりせずですが、オネーギンさんがタチアーナさんからもらった手紙を読んでいる描写が3秒くらいありました。あんまり見たくない。こっそり読んでほしい。無表情で読んでいる姿がおそろしい。

 

 

本公演はタチアーナさんはトリプルキャストなのに対してオネーギンさんのキャスティングは1人だけです。イヴァン・オジョギンさんという名前で著名なミュージカル俳優だそうです。因みにロシア語のカタカナ表記の信憑性は薄いです。

 

一応インスタグラムを貼っておこう。(ログインってなっているけれど飛ぶはず。)

www.instagram.com

 

背が高く、体格も良く舞台映えする良い俳優だなと思いました。

 

 

 

パンフレットのキャスト表を見るとオネーギンさんの次に名前が書いてあるのがタチアーナさんではなく、レンスキーくんなのが興味深いですね。ただ、インスタグラムのキャスト表はタチアーナさんが2番目に書いてあるので特に意味はないのかもしれない。

 

 

 

悪魔さんの役割

全ての元凶の悪魔さんです。悪魔さんは歌わないです。踊ります。ひたすら踊ります。ミュージカルに出演しているダンサーの方のダンスが上手すぎて別途料金を払う必要があるのではないかと思ってしまいます。お遊戯ダンスじゃないのよ。悪魔さんは子分を2体連れており、子分たちは踊りながら椅子を片付けたりカーテンを閉めたりと舞台転換要員としても活躍していました。タチアーナさんが書いた手紙を届けたのも悪魔さんの子分です。アクロバティック要素も含んだ踊りがとても迫力があって見応えがありました。

 

 

全てのトラブルを悪魔さんが引き起こしており、タチアーナさんが手紙を書いたのも、オリガとオネーギンさんを絡ませたのもこの悪魔の仕業です。唯一、悪魔さんのご意向に沿わなかったのがレンスキーくんの決闘のお申込です。レンスキーくんは白い手袋を投げようとしますが、ここで時間が止まります。オリガと悪魔さんの遭遇場面になるのですが、ここでニャーニャが悪魔についての歌を歌います。この歌を聴き悪魔さんが心を改め、決闘のお申込をなかったことにしようとレンスキーくんが投げようとしている手袋を回収し時間を動かします。手に持っていた手袋がなくなり、決闘のお申込が寸前で取り消されことなきを得たかと思ったら、なんとレンスキーくんはもう片方の手袋を投げました。これには悪魔さんもびっくりしておりました。そんな顔するのね、と。この場面以降、世界を引っ掻き回して楽しそうだった表情が崩れ出します。手袋に関しては両方回収しておいてね、って誰が助言してあげてください。

 

 

タチアーナさんの存在感

吐息混じりの歌い方や喋り方が気になりました。どういう意図でやっているのか考えましたがわかりませんでした。主要人物の中で一番存在感がなかったです。ただ悪魔さんに振り回されているという程なので、悪魔さんより前に出ないようにするためにあえて存在感を薄くしているのかもしれません。

 

 

オネーギンさんに本を返しにいく描写があり、何度も本を返す動作を練習しているのがとても可愛かったです。しかし、実際にオネーギンさんに返す場面では、本を持つ手に力を入れすぎてオネーギンさんが受け取ろうとしているのに手が離れないというシュールな描写になっていました。

 

 

 

本公演ではモブ化しているグレーミン公爵との結婚を物凄く嫌がっており、可哀想だなあと思いました。グレーミン公爵が可哀想です。

 

 

オネーギンさんとの最終場面は大変に美しくてお気に入りです。熱烈に力強く歌っているのですが、晴れ渡る事のない内容が辛いです。「愛してる。愛してる。愛してる。」と歌いますが救いようはない。オネーギンさんが近づいてきて物理的な距離が縮まったのに、全く縮まらない2人の関係性が苦しくも美しいです。タチアーナさんのお歌の後奏部分がオペラ「エフゲニー・オネーギン」(チャイコフスキー作曲)の序曲の出だしを上手に使用していました。下降音型がこの後にどんでん返しがないことを物語っており切ないです。そして美しいです。この使い方はずるいですね。素晴らしいです。

 

 

あっ!ジジネーギンは死にます。(ネタバレ?)

 

 

以上です。

カナダ版との比較をしたかったけれど全然できませんでした。

 

 

終幕後にオネーギンさん、レンスキーくん、オリガが舞台上に戻ってきて唐突にフォトセッションが始まりました。(どこかで告知があったと思うけれど私にはわかりませんでした。)

 

 

オネーギンさんと写真を撮れるチャンス到来。

オネーギンさんの隣に立てるチャンス到来。

しかし、防寒優先のダサすぎる服装とほぼ化粧していないお顔は恥ずかしすぎるのでフォトセッション現場を見つめながら会場を後にしました。レンスキーくんがオリガの腰に手を回しているあたりが夢を壊さないでいいなあと思いました。

 

 

 

翌日の別公演のチケット捨ててお代わり観劇しようかなと思ったくらい好みでした。思っただけなので結局行っていません。現金大事だから。楽しくて面白いけれどオリジナル要素で全体を台無しにするようなことはなく、原作を守りながらも新しいアプローチをしているところが興味深かったです。数年前から観たいと思っていた作品だったのでようやく劇場での観劇が叶い、またクオリティも素晴らしく大変に満足です。

 

 

ではまた劇場で。

もうすぐロシア編終わる。