三島の見解

古の女子高生

【オペラ】椿姫(ローマ歌劇場)

2023年9月13日(水)15:00公演

東京文化会館 大ホール

2023年日本公演 ローマ歌劇場

ジュゼッペ・ヴェルディ作曲

椿姫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お世話になっております。

三島でございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コロナ禍とやらで止まっていた来日公演が復活していますね。嬉しい限りです。

この日はローマ歌劇場の引っ越し公演に行って参りました。

演目は椿姫です。

意図せずにヴェルディ先生作曲作品の観劇が続いております。

マクベス→二人のフォスカリ→椿姫と謎ラインナップ。

作品としてはどれも興味深いものでした。

公演のクオリティは別ですが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椿姫はヴェルディ先生、19番目の作品出そうです。先日のフォスカリからは9年後の作品みたいです。人気作品の中の人気作品で普段オペラを観ない人でも題名を聴いたことがあったり、乾杯の歌だったり知っているのではないでしょうか。超有名作品ですね。乾杯の歌は抜粋演奏の定番中の定番だし、とりあえず歌っておけば喜ばれるみたいな空気を感じたことがあります。人気作品の上演は集客しやすいと思いますが、見慣れている人・聴き慣れている人が多い作品ゆえに公演の質をより一層求められると思います。オペラに限らず人気作品に挑戦するということは大変なことですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平日の昼間なのに席はほぼ埋まっていました。関係者風の人が目立ちました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では感想いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音に厚みがあるオーケストラ

この日のMVPはオーケストラの皆さまです。

 

 

 

 

 

 

私好みの演奏が最初から最後まで続きました。ありがたい限りです。ほしいところでほしい音が良い音で聴こえてくる。音の厚みはあるが歌手の声を消すことはなかった(私の席からはそう聴こえた)。聴き始めはシンプルな演奏をしていくのかなあと思いましたが、重点を置いているであろう部分の派手さと不必要なことはしない整った音楽のメリハリが心地よかった。お歌のときは歌手を促すような音の圧がまるで波のように押し寄せていた。歌手を追い抜いちゃうような、飲み込んでしまうような音楽ではあったが、歌手よりもオーケストラの音楽的感情表現の理解が高く、それをオーケストラピットの中に持ってくることができるのでしょう。オーケストラがつくってくれた波に乗り切れない歌手たち。切ない。一方、会話をしているお歌のときは会話の邪魔をしないようにしているのか小さくも繊細な音が聴こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

好きだったところ3つ

①序曲出だしの音

→こんな繊細な音が出せるものか。1フレーズ目と2フレーズ目の間も綺麗だった。良い音楽は間も綺麗なんだよね。意味不明だけど。序曲は幕が開いてからは舞台上に引っ張られちゃってあんまり覚えてないけれど、出だしは素敵でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

②乾杯の歌

テンションの高さだけで演奏していない様子がよかった。乾杯の歌を頂点にしない。勢いに任せた演奏ではなくこのお歌が物語上でどう機能させるかを考えているような。お歌の内容やフレーズを意識して演奏しているように聴こえ、ただ乾杯しているだけではなくてアルフレードヴィオレッタがそれぞれ何を発言しているのかを客席が注目しやすいように支えていると思いました。この曲だけで盛り上がらないように物語の中にお歌を埋め込むような大人しいけど言いたいことは言うような演奏でした。

 

 

 

 

 

 

 

③quant’io t’amo〜

2幕のアルフレードヴィオレッタのお別れの場面です。この場面はこちらに迫ってくるような全力感情煽り型が好きです。しかし、この公演はそこまで鳴らさずに他の音源や私の記憶と比べるとしっとりしておりました。控えめだけれど、そもそも音が厚いので寂しさやつまらなさはなかったです。この公演のヴィオレッタがこの場面では取り乱さないので、舞台上と音楽表現が一致しているのが興味深いなあと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

オーケストラ以上です。舞台上に集中してオーケストラの記憶は所々しかありませんが私はとても好きな演奏でした。オーケストラだけ聴いているのが正解だったかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お歌とダンス

ヴィオレッタはルカ・サルシさん(以下敬称略)と愉快な仲間たちという公演で昨年来日しハートフルなリサイタルを行ってくれたリセット・オロペサさん(以下敬称略)でした。サルシと指揮者の手厚いサポートの元ではあるが、良く転がる声と1曲1曲への入れ込みが素晴らしく全幕で見れることを楽しみにしておりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

この日もよく転がる声は健在で技術的に危ないところはほとんどなかったです。1幕のお歌「Sempre liberta〜」のアルフレードが歌いだす前の「volar il mio pensier.」部分が若干滑り気味でしたが。高音に重さがなく軽く柔らかく響くところや劇的に歌わないあたりはさすがベルカントを得意としているだけあるなあと思いました。前回の来日のときに感じたキンキン具合が少なくなっていたのは嬉しいです。どこを切り取っても同じ技術レベルで歌うことができるのは素晴らしいですね。この日はお歌がよかっただけに発音の甘さが気になりました。アンナちゃん(アンナ・ネトレプコ)一歩手前の甘さだと思います。響きと発音どっちを取りますか?で響きを取っているのだろうからしょうがないと思いたい。2幕までは気にしないようにして聴いていたのですが、3幕からは我慢ができなくなってしまった。ごめん。このオペラのイタリア語のタイトルが歌詞に入っているお歌があるじゃないですか。3幕のお歌です。「Ah,della traviata〜」の部分。「あらふぁゔぃらーた」と聞こえましてですね。何すかそれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

1幕のアルフレードが去った後、現実に戻れないヴィオレッタが可愛い。この後色々考える場面になる前に一度ニヤけておきましょうという感じですね。首につけられたネックレスを触って現実に引き戻されるのもわかりやすくて良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台装置や衣装に食われ気味なのは気になりました。1幕の大階段を始め大きくわかりやすい舞台装置が多いです。色も派手ではないが存在感があり写真や映像映えしますが、実際に劇場で見ると歌手が食われていると感じました。オロペサ自身も地味な人ではないのですが、舞台装と衣装そのもののの主張が強い。歌手によって映え・映えないが大きく出ると思いました。この公演で舞台装置や衣装に唯一食われていなかったのはフローラ。何故か1番華やか。巷の椿姫だとモブに紛れ込みがちですが、この日のフローラはフローラとして降臨していた。3幕はフローラを追うのに必死になっていた(私が)。美しい人はたくさん見ておこう。衣装は1幕の黒いドレスが気になりました。ヴィオレッタとしては合っている素敵なドレスでかなり好きなのですが、オロペサが着ると全体的に布が余っているというかフィットしていないように見えた。お直ししているだろうからサイズが合っていないということはないと思いますが視覚的な違和感。頭につけている椿はよく似合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルフレードは1幕でフレーズごとに強弱の付け方を変えるのがわかりやすくていいなあと思いました。はっきり歌い分けられるというところと弱くしても響きが変わらないところはさすがだなあと。でも進んでいくうちにそれしかやらないことに気づきました。表現方法がワンパターンで飽きちゃった。3幕からは余計なビブラートが顕著になってきて(これは先日のフォスカリで気になっちゃったせいで私が過敏になっている可能性がある)「あー、またビブラート。」と思いながら聴いていました。自分が響かせたい音に圧をかける歌い方が好きなのか、言葉のアクセントとは違う響かせるためのアクセントのようなものが入るのが気になりました。そもそもご本人がアルフレードを演じるには小慣れすぎていてアルフレードの若さゆえの暴走というか無鉄砲な感じがまったくない。アルフレードってもっと見切り発信野郎じゃん。計算高そう何だよね。そんなにヴィオレッタのことも好きじゃなさそうだし3幕はパパが2人いるようなと絵面になっていた。笑った。1幕の「Oh ciel domani.」の歌い方がとても嬉しそうで可愛かった。明日行くんだよー!忘れないでー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パパの第一声の大きさにびっくりしました。その感じで歌うのかと不安になっていたら次からは小さくなったので安心しました。お持ちの声は太めですね。この役は当たり役ではなさそう。教科書通りのような歌い方で特に面白みや特別印象に残る部分もなかったですが、印象に残っていないということは大きな崩れがないということです。2幕のヴィオレッタが「Quel figlia m’abbracciate〜」部分でヴィオレッタから抱擁していた。そして抱きしめかえさないパパがいた(見間違いでないといいな)。抱きしめてくれ。その後2幕後半でアルフレードに失礼な態度を取られて気絶したヴィオレッタを起こすパパに感動。3幕で死に際ヴィオレッタに寄り添うパパが優しくてもはやこちらがアルフレードだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3幕で男性合唱と女性合唱を踊らせずにダンサーを起用して踊らせてました。筋肉が美しい。合唱に踊らせると何しだすかわからないからね(新国でよく起きる現象)。プロを使うのは頭の良い考えですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガストーネがよかったですね。お歌はほとんどないけれどクリアな声が印象に残っています。「Sempre Alfredo  a voi pensa.」の歌い方が絶妙に小声でヴィオレッタだけに話しているのがわかりやすかった。その後の「Ah!ah!sta ben restate.」の歌い方も「お前らやってんねー!!」という雰囲気で楽しそうでなによりでした。可愛いな、ガストーネ。フローラやガストーネあたりがの役がしっかりしていることで舞台上の厚みが増して良いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物語の面白さ不在

日本の団体や日本の劇場ではなかなか観れないレベルの公演だったと思うし、歌手のレベルも全然違うことはよくわかってます。でも不完全燃焼の消化不良を起こしております。

 

 

 

 

 

 

 

この日の公演を率直な言葉で申し上げるなら(申し上げちゃうよ!)「のど自慢大会」でした。歌手が歌っているだけでした。安定したお歌を聴けることは貴重ですし、イタリアの劇場の引っ越し公演を観劇できる(主役はイタリア人ではない)素晴らしい経験ができたとは嬉しく思います。でも私はオペラを観にいったのです。物語があるはずなのです。のど自慢大会は足りてます。

 

 

 

 

 

 

 

 

2幕でパパが訪ねてきたときや2幕のアルフレードとの再会とときもヴィオレッタに何の変化もなかったのが悲しい。冷静なヴィオレッタではなく何もしていないように見えた。3幕もアルフレードヴィオレッタが再会して2人でお歌を歌っているときの平行線具合が半端なかったです。違う理由でパリを離れたい2人になっていた。そもそもこの日の2人はお歌でも噛み合ってない感じがあった。一緒に歌うときのハーモニーの美しさが皆無。仲悪いの?声の相性?その後のヴィオレッタが自分の肖像画を渡すゲロ重ソングお歌から終幕までもサラッとしていてサクッと死んでいきました。せっかくオーケストラが死への階段を作るような演奏をしてくれているのだから登ってください。全てのお歌に抑揚がないんだよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音楽を、お歌を、邪魔するような演技が欲しいわけではないです。てか演技は取ってつけるものではなく音楽や言葉から起こすものだと思いますし、基盤となる音楽は絶対に捨てられません。ただ譜面に書かれてることを舞台上に持ち込まなすぎじゃないですか?と思いました。ベルカントだから〜初日だから〜と私は私自身に言い訳をしたいですが、ヴィオレッタのことが好きなので彼女に短い命を与え、美しく死なせてあげてほしいです。

 

 

 

 

 

 

 

オロペサはリサイタルではとてもよく動いていてお芝居要素盛り盛りで歌っていたのになぜこの日は棒読みだったのか?そういう演出なの?

 

 

 

 

 

 

 

ローマの劇場になんてことを言うのでしょうね。

イタリアのスタンダードだよって言われれば私がイタリアの劇場と合わないということがわかって終わるのですが。どうでしょうか?私はイタリアに行けるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上ですー。

ウッキウキで帰る予定だったのにまたあーでもないこーでもないって言い出しちゃったよ。

切ない。観劇前と観劇後のテンションの差にやられる。

1番楽しかったのプログラム買ったときでしょ。3000円もしたのよ。

観劇前の予定では追いチケする予定でしたが上記で書いた通りなのでここで終わりにします。

マジで悲しい。でもオーケストラは本当によかったのでそこだけを覚えておこう。後は忘れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中村恵理さんのヴィオレッタを待ちましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ではまた劇場で。