2023年10月14日(土)14:00公演
東京文化会館大ホール
二期会創立70周記念公演
シュトゥットガルト州立歌劇場との提携公演
東京二期会オペラ劇場
ドン・カルロ(イタリア語5幕版上演)
お世話になっております。
三島でございます。
9月のローマ歌劇場来日公演(とヨンチェヴァさんのコンサート)が終わったと思ったら新国立劇場の新シーズンが始まりと劇場に出掛けたい女からすると嬉しい限りです。今シーズンはバレエも観たいです。気持ちだけはあります。
この日は二期会のオペラ公演に行って参りました。こちらの公演は全国ツアーに行ってらしたみたいで東京公演の前に、横須賀(神奈川)公演と札幌(北海道)公演があったようです。全然全国ツアーじゃないわ。
演目はドン・カルロです。ヴェルディ先生作曲の超長オペラです。フランス語版とイタリア語版があるらしく、またそこからの派生もあり様々な版が存在するそうです。ドン・カルロって機会逃すと次が読めないからなあと思ったのでチケット購入しました。が、本演出なら購入を見送るべきでしたね。
では感想いってみよー。
本年度とんでもオペラ暫定1位
暫定1位です。おめでとうございます。
因みに昨年度の1位は新国立劇場のボリス・ゴドゥノフくんです。この場を持って発表とお祝いを申し上げます。演出に対する思いは別更新します。
客席の埋まり具合は6割程度。甘くみて7割弱といったところ。1階席を半分に分けてステージ寄りの席は満席に見えましたが、1階の後方や2階以上の3列目以降(私が確認できた範囲)はほぼ座っておらず。文化会館の公演でこんなにスカスカなことあるんだ、と驚きました。でもいいのです。空席以外は満席なんです。
隣のマダム2人組が「二期会だからねー」「ドン・カルロだからねー」と辛辣な会話をしており、よくご存知でいらっしゃるな、と思いました。空き席を駅前でばら撒けばいいとのことです。
1幕
開幕1曲目は合唱です。プログラムによると、パリ初演時にはすでに削除されその後も復活しなかった冒頭場面だそうです。昨今は復活させて上演するのがトレンドだそうです。この場面だけではないのですが、舞台が暗くてキャリーケースを引いている人がいるくらいしかわからなかったです。パンが高いこともよくわかった。
舞台に大きな黒い壁を設置し、舞台中央を中心に円を描きながらぐるぐるしておりました。本公演の主役の壁さんです。ご出演いただきありがとうございます。壁の前で歌ったり、壁が舞台展開の目隠しなったり、また舞台後方で止まり背景になったりと大活躍しておりました。エリザベッタとカルロの出会いは壁の前。火起こしのために木を集め、ポケットからマシュマロを取り出し焼きマシュマロを作る場面はさすが現代演出だな、と思いました。
カルロのお歌は口の中の広さを十分に感じ、母音に左右されることも少なかったです。ただ、細かい音符の処理が甘く全ての音符がきちんと音になっていないように感じました。「Dio,sorridi al nostro affetto〜」部分の「Dio,」の切り方が雑だったのが気になった。語末の処理大事。(一度、15日のキャストと間違えて感想を書きました。失礼致しました。)
エリザベッタの登場は合唱に金目のものを配布する係だったのでここで第一声が聴けました。出だしの声がとても澄落ち着いていました。中音域から高音域にいく音型のときに響きを変えず、時差なく歌うことができる人でストレスが少なかったです。この後、エボリ嬢が出てくることによりわかりやすい比較対象が誕生してしまい発声の浅さが気になるようになりましたが、カルロと歌っている分には気になりませんでした。
エリザベッタとカルロのお歌はお二方のお歌のレベルがそれなりだったのは嬉しいけれど、あくまでお歌が上手なだけで、中身を感じることができませんでした。終幕まで尾を引く2人の思いの起因がこの場面なわけですが、音楽的にも芝居的にものっぺり進まれてしまったので何もわからなかった。
2人のお歌の最後の方で壁が動き、舞台中央に登場したのは真っ白なお布団。中央にお布団だけが置かれた舞台。シュール。2人が服を脱ぎ捨てよくわからないベッドシーンに投入。どういう表現にしたいのかわからないくらい中途半端な場面でした。4幕のエリザベッタに1幕のこの場面をどう思っているのかインタビューしたいです。
ベッドシーンの最中(?)に大群が押し寄せ王妃になれコールを受ける。このときエリザベッタは体にシーツを巻きつけた状態である。プログラムにその場面の現地公演時(なのかな?)の写真が掲載されていて、この写真だけだと不気味さと美しさが両立しており興味を惹くが、舞台上で見てしまうと滑稽さの方が勝った。
王妃になることを承諾する「Si.」も予定調和すぎる。楽譜に書いてあるのだから予定調和は予定調和なのですが、物語を進行する上では全てが新しく新鮮でなければならないと思います。彼女の葛藤とか苦しさがあってからの「Si.」だったらよかったのにな、と思います。
本演出において王妃とは何なのかは謎ですが。ベッドの上で頭にヴェールをつけられる。このヴェールが覆面マスクのような穴が空いていて何とも言えない気持ちになった。ごめん、ダサくない?男性がベッドに土足(多分)で上がってくるところにも演出の意図があるのかな?
2幕
2幕も壁がぐるぐる回っていました。まず、子どもたちが登場し最近流行りのみんなで一緒に踊るコーナーがありました。片手を握りそのまま上にあげて勢いよく自分の胸にドーンと当てる振りです。今後のために覚えておきましょう。この場面はカルロも一緒にいますが、精神状態が不安定で心配になった。なんせ本演出だと物語の前後関係や背景が薄いのでなんで不安定極めているのわかりにくい。
壁が回って階段が舞台中央に置かれている。一緒にロドリーゴ登場。想像より爽やかなロドリーゴ。暇になると潮風を感じに海に行きそうなロドリーゴ。カルロに「Amo d”insano amor Elisabetta!(私はエリザベッタを愛しています。)」と聞かされドン引きしてましたね。わかりやすくてよかったです。2人の声の張り出し具合が同じときは綺麗に聞こえるけれど噛み合わなくなるとモワモワしてました。
壁が回って階段が退場し、木と女子ズが登場。座り方が汚い(演出です)。エボリ嬢の登場。「A me recate la mandolina(マンドリンを持ってきて)」というときにフランスパンを投げているのが面白かった。エボリ嬢の2幕のお歌「Nel giardin del bello Saracin〜」はあまり美しくなかったです。全ての声が喉の奥の方でつくられている印象。そしてあまり響かない。お芝居ができる方のようで舞台上を自由に動き回るのは素敵ですが、動き回るので舞台上の位置や顔の向けている方向でによって声の届き方が大きく変わる。
そりゃ横向いたら声前に飛ばないよ普通、と思いたいのですが、横向いてようが後ろ向いてようが声が前に飛んでくる歌手がいるので、同じオペラ歌手という職業ならばそのあたりも求めたいところです。
細かい音型も喉の奥の方で発声し転がすから聴こえづらい。それが直接の原因かはわからないけれど1音1音がクリアではなくなり、流れるまではいかないけれどぼやぼやしてしまう。
最後のフレーズ「〜più cari all’amor.」の最後の音を切るのと同時にソファに頭を付けたのが気になりました。動作と音楽を合わせすぎると振り付けになってしまう可能性が高いので、1拍でも半拍でもずらした方が効果的になりますよね。動ける人なのにもったいないな。
役柄設定ド無視演出なのでこの場面のエボリ嬢がわがままプリンセスみたいになっていました。周りの女子ズを振り回し、エリザベッタに必要以上に詰めたりなど。なんか下品だったわ。歌手がじゃないよ。設定がだよ。この後ロドリーゴが再び登場しエボリ嬢と会話風のお歌を歌う。エリザベッタの心境に関係なく小粋に進むお歌は心地よかったです。
満を辞して、フィリッポII世が声を出す。こんなに深みのない声だったっけと回顧してしまうほどに浅い。音の低さに対して深みと重みが足りない。「Il Re!(王様です!)」と言われて登場するのに威厳がなくて、王様かあ王様だねえ、と流してしまいそうになった。本演出においての王様って何なんだ?バス歌手には舞台を引き引き締めてほしいのですが逆に飽和です。
「Contessa,al nuovo sol in Francia tornerete.(明日の朝フランスに帰りなさい。)」と発言するのも違和感。設定がないから発言が突拍子もないものになってしまうよ。この後のエリザベッタのお歌綺麗でした。特にここが良いという箇所はないけれどまとまりと安らぎがありました。
最後の場面。フィリッポII世に「Restate!」と言われて何人かいた中で自分だとわかるロドリーゴ優秀すぎ。お歌に関しては特に何も感じず。緊張感があっていい場面なはずだけれどただ自分の番が来たら歌っているようなカラオケデュエットになっていた。
本公演は1幕&2幕→休憩→3幕→休憩→4幕&5幕でした。
1幕&2幕の終わりで真剣に向き合うにはツッコミどころが多すぎる苦しいものがあることに気づき3幕以降は修行僧の心持ちで観劇しておりました。ですので、3幕以降は感想が少ないです。ですが思い出として後日別更新致します。
つづく。