三島の見解

古の女子高生

【オペラ】修道女アンジェリカ/子どもと魔法(新国立劇場 )

2023年10月9日(月・祝)14:00公演

新国立劇場オペラパレス

ジャコモ・プッチーニ作曲

修道女アンジェリカ

モーリス・ラヴェル作曲

子どもと魔法

 

お世話になっております。

三島でございます。

 

 

 

寒い。寒い。寒い。

寒い中に新国立劇場オペラパレスまで行って参りました。

シーズン開幕おめでとうございます。

 

 

 

では感想いってみよー。

本公演は2本立てのため、作品ごとに感想を書きます。

 

 

修道女アンジェリカ

プッチーニ先生作曲、約1時間の良心的オペラでございます。

 

 

 

舞台美術と衣装を含め舞台全体を淡い色で仕上げてきた。舞台装置がよく動き、新国立劇場の可動域の幅をアピールしていた。どちらの演目も終幕ちょっと前に舞台全体が地に沈んでいった。

 

 

 

 

来日歌手のアンジェリカ役のキアーラ・イゾットンさん(以下アンジェリカ)は幕が上がってまもないうちに舞台上に登場するけれどまだ歌いはしません。でも表情豊かに他の修道女のお歌を聴いている姿がとても可愛らしかったです。修道院に入ってから初めての来客にウキウキソワソワしている姿の可愛らしく、これからアンジェリカが知る悲しい事実を知っている身としては苦しいものがありました。あんまり喜ばない方が身のためだぞ、アンジェリカ!

 

 

 

お歌に関しては第一声からの数フレーズは息の保たなさが気になりました。ブレスを大きめに吸うので、ブレスのときに流れが切れてしまいフレーズのつながらなさが気になりました。ブレスを取らなければ綺麗な流れのお歌が聴けるのでよかったのですが。長いフレージングで歌うことが苦手な人なのかな、と思いました。でもこのあたりは後半にいくにつれ、良くなったのでただの不調かもしれません。声の重さが発音や発声をちょいちょい邪魔しているように感じました。思い声でも明朗快活に歌う人は歌うのだけれども。

 

 

 

プロフィールによるとイタリアのベッルーノ出身とのことですが、イタリア語がモワモワする印象を受けました。高音域はそれでもいいのですが、中音域はイタリア人の明朗なイタリア語が味わいたいところでした。

 

低音域では他の音域に比べるとはっきりした発音で聴くことができました。先日のソニア・ヨンチェヴァさんよろしく低音を投げ捨てるように歌うのがこれまたかっこよかったです。低音をバリバリ歌うソプラノが好きです。公爵夫人との会話の中の「Sorella di mia madore〜」の歌い方が痺れました。ここから公爵夫人退場までは苦しい緊張感を舞台上に感じてました。かっこよかったです。「Senza mamma〜」は全体的には可もなく不可もなしといったところでした。

 

最後の高音を小さい音で響かせていてとても綺麗でした。終幕近くの高音も綺麗でした。高音を細く綺麗に響かせることができる。声量を出してドラマチックにバリバリ歌うこともできる。ただ長い間滑らかさが求められるところだけが足りない感じがしました。

 

 

 

カーテンコールでニコニコしているお顔と雰囲気がとても可愛らしく愛おしいです。

 

 

このオペラの歌手の感想を書くとしたら後この人しかいないでしょ、ということで公爵夫人。カーテンコールも含め終始立ち姿が美しい方でした。衣装がペラペラに見えたけれど高級品だったらごめん。

 

 

 

アンジェリカ同様、低音域は勢いよく歌う。無理矢理低い声を出しているのではなく、コントロールが行き届いた歌声は聴いていてとても気持ちがいいです。発声の位置を胸声に落としているように感じました。当たり前か。それ自体は問題ないのですが、そこから頭声に戻るときに一回声が引っ込むのが気になりました。発声の位置を動かすことにより引っ越しの音が誕生しているように聴こえた。「Nel silenzio di quei raccoglimenti〜」の音が上がっていく音型だとよくわかる。低音域以外はビブラートが多いように感じた。

 

 

 

物語上の公爵夫人の冷徹さは守りつつ、倒れたアンジェリカに触れようと手を伸ばすが、触らずに手を引っ込めるという動作で公爵夫人も人間であり人生があることを示していた。ありきたり感はありますけど。台本?ただのサインしろおばさんにならないところが良いですね。暗闇(でもないけれど)にスッと立つ公爵夫人かっこいいです。

 

 

 

その他の修道女ズは特別気になる人はいなかったです。みんな上手だけれど、でも団体の中にいる上手な人というところです。プロフィールを拝見するとなんとかというオペラの主役級だったりなんとかという公演のソリストだったりとご活躍華々しいのですが、いざ劇場でお会いすると特に感想が生まれなくて困りますね。

 

新国立劇場オペラパレスには魔物が住んでいるということで良いですか?そんな修道女ズの裾丈が気になりまして。床と隙間なく足を全く見せない長さの方もいれば、つま先が見えてしまっている方もいました。揃えた方が良くない?足見えていいのか?修道女にも個性を?

 

子どもと魔法

演出一人勝ち公演はこちらです。お金あるなあ、と思いました。どこからお金が。

 

 

開幕したらまた幕があり、そこに緑色の筆記体で映し出されれるオペラのタイトル(原題)。その後もこの幕(もしかしてスクリーン?)を使った演出は続きます。子どもの家へ外からズームインしたり、影のママが子どもに話しかけたりなど。ママ(オペラ歌手本人)はオーケストラピットにいました。子どもがママに怒られた後に部屋中を引っ掻き回す場面の演出は子ども(オペラ歌手本人)がスクリーンに映し出された猫や絵などを攻撃するといったハイブリット演出でした。映像にも舞台美術にもはっきりした派手な色を多用しており、修道女アンジェリカとは全く違う色彩になっておりました。

 

 

 

オペラというよりかは「踊り時々お歌の公演」と位置づけた方が良いかもしれません。オペラじゃないと言いたいのではなく演出の比重がダンサーの方が大きくない?と思ったからです。ミュージカルのキャッツを彷彿させる猫の場面は一応オペラ歌手がお歌を歌っていましてね、と言って回りたくなるくらい猫(ダンサー)が客席を掻っ攫う。ダンサーがちゃんと踊れる人たちなので全体的な満足度は上がります。しかしオペラとして歌手が歌手の役割を遂行できていたかというと別問題です。歌手の未完成さが際立ちます。お歌もダンスも完成度が高ければダンサーも活躍するオペラ公演として楽しめたと思いますが。ダンスに食べられちゃうんだな。

 

 

群を抜いて素晴らしい三宅理恵さん。約1800席ある劇場に響く細く軽い声は貴重です。細い声というと舞台から遠い席には届かないように感じますが、ふわふわしているわけではなく芯のある声なのでどこまでも飛んでいくと思います。どういうふうに歌えば劇場全体に響き渡るのかをわかっていらっしゃるのでしょう。隙のないお歌の技術と透き通る声に感動です。癒される。隣に座って聴いてみたい。火もお姫様もうぐいす(またうぐいす)も美しかったです。お姫様の最後の高音を小さく美しく長く響かせるのなんて!何という技術!ここでスタンディングオベーションをするべきだった。

 

本演目では合計3つの役を演じておられましたが、どの役で歌っていても発声が崩れないですね。とんでもなく転がすお歌を十数曲まとめて歌うコンサートを開催してほしい。火の場面で三宅理恵さんが素晴らしく声を転がしているのにダンサーのドタドタ音で聞こえにくいのが心残り。三宅さんは簡単そうに歌っているけれど誰でもできる技ではないぞ。そういう技を聴きたいんだぞ。

 

 

 

そのほかの歌手はもうちょっと求めたいところです。中国茶碗さんの声の飛ばなさは顕著でした。声が埋もれる。その後にトンボさんになって登場したときも飛ばなかった。響かなかった。安楽椅子さんは弱めだったけれど声が軽やかで綺麗でした。肘掛椅子さんはお歌がのっぺりしていたのが気になりました。音と音が上方向に離れているときの上の音の勢いが危なっかしいと思った。掛時計さんはもっとディンディンディンディンディンディンして良い。控え目だったので。ティーポットさんの笑顔がよかった。

 

 

 

この演出のまま言葉を日本語にして完全子ども向けに公演したら楽しそうだなあ、と思いました。登場人物の「子ども」と現実を生きる同年代たちが近い視点で物語を楽しめたら素敵ですね。きっとお勉強もするようになります。

 

 

 

 

以上です。

 

 

新国オペラの次の演目はヴェルディ先生ですね。

指揮者は満を持して登場する大野監督です。

わー。たのしみー。

 

 

 

おしまい。