三島の見解

古の女子高生

【オペラ】皇帝に捧げた命(マリインスキー劇場)

2023年11月24日(金)19:00公演
マリインスキー劇場
ミハイル・グリンカ作曲
皇帝に捧げた命



 

 

お世話になっております。
三島でございます。

 

 

この日は午前中にサプサン号にてモスクワを出発しサンクトペテルブルクに移動しました。
サプサン号は快適でよく寝れました。宿よりもよく寝れた。

 

 

 

そして夜は劇場へ。マリインスキー劇場にてグリンカ先生のオペラを観劇です。グリンカ先生の作品の中で好んで良く聞くのはオペラではなく歌曲なので自分の知識不足を感じながらも楽しみにしていた公演の1つです。ロシアに行ってまで楽しみにしていない公演ってなんだかわからないけれど。

 

 

 

指揮者は今話題のヴァレリーゲルギエフ先生でございます。ちょっと遅いかな?まだ話題かな?ゲルギエフ先生の通勤は自家用ジェットですか?それともサプサン号?一緒?コロナ前まではコンスタントに来日していた気がしますが、コロナ禍中はもちろん来日せず、そして現在も来日見込めず。ですので私が会いに行きました。

 

 

 

それでは感想いってみよー。

 

 

 


定刻って知ってる?

開演は19時になっており、私が劇場に着いたのが18時30分ごろ。劇場には入れるけれど客席への扉はまだ会いておりませんでした。しかし中から音が聞こえる。盛大に歌っているし演奏しておる。絶賛リハーサル中です。そんなギリギリまで練習しなくてもいいのにと思いながらこの日の帰り道の脳内シュミレーションを始めました。深夜帰宿の可能性!客席に入れたのは19時前で開演時間前ではありましたが、定刻19時開演は絶望的!客入れがそんなにスムーズにいくはずがない。深夜帰宿決定の瞬間です。おめでとうございます。

 

 

 

開演は19時30分前だった思います。30分遅れを回避できたことは優秀です。後日この日の話をサンクトペテルブルク在住の方にしたところ「ゲルギエフはいつもそう。」と返されたので私ももっと強くならなければならないなと思いました。明け方まで付き合う気でゲルギエフ先生の待つ劇場に行きます。

 

 

 

しかし、終演時間が気になるのは私だけではないらしく2回目の休憩に入るとたくさんの人が客席の外へ。みんなコート受け取って外へ出ていく。潔く帰っていく。無理してまで残る必要がないという感じでしょうか。心残りなどなさそうで清々しい。私もその思い切りの良さがほしい。マリインスキー劇場は私の日常にはないから多少無理してでも残りたい。(尚、1月は疲労でヘロヘロだったため中座しました。)

 

 

 


ではオペラ本編の感想へ。

 

 

 


オーケストラの存在

本当に今この場で演奏してますか?と聞きたくなるほどに安定している。「録音に聞こえる」と言うときに2つのパターンがあって、1つは音楽が起き上がってこないとき生身の人間が演奏しているとは思えない臨場感のなさを指します。もう1つはパーフェクトかほぼパーフェクトな演奏で劇場でリアルタイムで聴いているのにそんなことあり得る?と思うときです。本日の演奏は完全に2つ目で特に2幕はオーケストラピットを覗いて存在を確認したくなるほどに音楽に無駄がなかったです。バレエの場面の現実味のない美しさに隙のない音楽が合わさって相乗効果でしかなかった。羨ましい。

 

 

 

 

 

ポーランドの話からしていい?

2幕のポーランドの場面が凄まじく華やかで美しかった。客席からもため息が漏れるほどの圧倒的な美しさ。幕が上がった瞬間にため息が漏れるというのは舞台をつくっている側からしたら嬉しすぎるよね。そのまま幕が下がってきても満足するわ。私はため息を漏らした方全員と握手したいくらい同じ気持ちでした。ただただ舞台上が華やかで美しい。ずるい。

 

 

 


オペラ作品ではありますが、2幕のポーランドの場面はバレエがメインなのでこれでもかというくらいマリインスキー劇場のバレエを堪能できます。バレエ場面が本気すぎてオペラのチケット代だけで良いのか不安になる。お得すぎて申し訳ない。オペラ観に行ったのに1番集中していたのは2幕のバレエですね。美しいしか言えない。マリインスキー劇場の無駄のないバレエ大好き。舞台上に現実味がないのが素晴らしい。バレリーナたちは存在するのか疑問を抱きたくなるほどの美しさ。

 

 

 

日本の公演でもオペラにバレリーナが出演することは珍しくないですが、どうしてもオペラ歌手とバレリーナの間に埋まらない溝があって舞台上のチグハグが気になることがあります。体型の話ではなくてね。体型の話はセンシティブだからね。しかし、この公演はオペラ歌手とバレリーナが混在してもどちらかが悪目立ちすることもなく1つの場面して申し分のない視覚的な調和がありました。西洋人だからという話でございません。立ち姿や舞台の上で動くことの基礎能力が両方ともにあるということだと思います。舞台上に生活感を持ち込まないでください。ただ2幕で歌った方々のお声が全員飽和気味だったのは気になった。バレエに取られている分しっかり声を届けてほしかった。

 

 

 


永遠(ではないけれど)に美しい踊りが続くので幸せでした。マリインスキー劇場の無機質な踊りが大好き(2回目)。

 

 

 

 


本物の低音担当

この公演に限らず、今回のロシア渡航は女性歌手に恵まれたオペラを見ることができました。前日のノーヴァヤオペラさんのエフゲニー・オネーギンに出演していた女性歌手もソリスト全員が素晴らしかったです。

 

 


もちろんソプラノのアントニーダも素晴らしかったのですが、メゾソプラノ(アルト)のヴァーニャに先に触れておきたい。まず、声が本物なのです。そこらへんにいるメゾソプラノ(アルト)のオペラ歌手の多くは無理に低音を作っているいるように聞こえます。メゾソプラノ(アルト)というよりソプラノではなかった人という感じですよ。なかなか本物がいません。しかし、ヴァーニャを歌ったスヴェトラーナ・カルポヴァは無理に低音をつくって出しているようには全く感じず、音の低さに不快感はありませんでした。音自体は低いけれども、声が無駄に暗くなったり、重くなったりせず、軽やかに細かい音をこなしていきます。声の不自然さに音楽が邪魔されないことの安心感を味わいました。細かい音型がきちんと歌える歌手はどこで息を吸っているのかがわかりにくいです。音1つ1つが独立しながらも流れが切れることはなくフレーズがしっかりできており、細かい音型の安定感を保つための参考になりません。上手すぎて参考になりません。朝飯前って感じでした。音域が低いこと=声質が低いではないことを改めて学びました。長いお歌が多い印象を受けましたが、最初から最後まで全くぶれずに完走。当たり前を当たり前にこなしている感じが恐ろしいです。アントニーダとニコニコしているお芝居やその他ファミリーと仲良さがな感じがとても可愛かったです。

 

 

 

 

そしてアントニーダ。とにかく可愛い。金髪三つ編みが可愛すぎる。そして舞台上で色々な表情を見せてくれました。容姿も良いのに演技派な歌手。一生懸命に家事をこなしたり、ソビーニンの帰りが嬉しくてたまらないような表情や行動がとにかく可愛い。逆にパパ(スサーニン)が連れて行かれたときのショックさの表現も良かったし、連れて行かれた後も普通に振る舞おうとするお芝居もよかった。終幕の「パパ(スサーニン)はいなくなってしまったけれど強く生きています」みたいな描写のアントニーダがまた可愛い。あくまで「素朴なファミリー」であることを表現する演出が好きです。家族の中と外に差があることがドラマっぽさを表現しますね。お歌に関してはアントニーダ(アンナ・デニソヴァ)も当たり前を当たり前にこなす。所謂ロシア人ソプラノを思い浮かべて想像するようなお声ではなく、ひたすら軽やかでコロコロ転がっていく。モーツァルト先生の作品を歌ってほしい。ヘンデル先生でも良い。高音へのジャンプも無理矢理押し出すようにも、声量を増やして歌うこともせず、コロコロしていたときと同じように歌う。そしてブ息継ぎの場所がわからない。やっぱりお歌が上手な人は息継ぎも上手。

 

 

 

 

 


2度のざわざわ

1度目のざわざわは、ソビーニンの高音部分です。ブーイングは起きませんでしたが(カーテンコールで起きた可能性はありますがそそくさ帰りましたので知りません)歌っている最中にざわざわしだすっていうのもすごい話だなあと。日本の劇場だととりあえず静かに聴くじゃん。高音がでない問題は置いておいて、客席が「これは正しくないぞ。」ということに気づけるのが素晴らしいなと思いました。なんでもかんでも拍手して称えればいわけではなくね?と思っているのでこういう環境があることが羨ましいと思います。舞台側も客席側も胡座を書かずに対等に向き合っていける環境があればいいと思いますね。ざわざわしている中で歌うのもだいぶ苦しいとは思いますが。いっそのことブーイングしてもらった方が楽?

 

 

 

で、テノールの高音出ない問題は発声の浅さにあるのかなあ、と思いました。中音域の細かい音型は美しく、またお持ちの声もテノールらしいお声でこのあたりの違和感は特にありませんでした。ただ他の歌手より息継ぎがわかりやすくまた息の持ちも悪かったです。お声はいいんだけどなあ。中音域から少しでも高音域にいこうとするとひっくり返りそうになりヒヤヒヤしておりました。後半の高音は無理矢理だしているのが丸わかりで「もう辞めて差し上げて!」と言いたくなるほどに苦しい。他の歌手が安定している分できていないことが目立ってしまいます。細かい音型が得意なので起用されたけれど高音はでない歌手なのか、たまたま調子が悪かったのか謎ですが、ちょっと悲しいですね。

 

 


2度目は3幕でパパ(スサーニン)を連れ出しに黒いダウンコート集団(男声合唱)がわらわらと登場してきたところ。ここは私には理由が分かりませんでした。

 

 

 


合唱の圧

終幕の合唱の圧力がすごかった。前回のマリインスキー劇場で観劇したとき(パルジファル)も思いましたが、今回も全く同じことを思いました。声の厚みをよく感じます。低音の安定感のおかげだと思っています。

 

 

 

 

 

スサーニンの感想がない

木材を切っているスサーニン。以上。

 

 

 

 


以上です。
ゲルギエフ先生の指揮でグリンカのオペラを観る(聴く)ことができてよかったです。
本当は11月26日に別のオペラで再びゲルギエフ先生にお会いする予定でしたが、指揮者変更になってしまい今回も一回きりになってしまいました。残念。

 

 


先に書いた通り、終演後はろくに拍手もできずに爆速帰宿しました。
知らない街の夜は未知数だから明るいうちに帰りたいのに観劇が目的という相反する行動。1月に続き深夜のサンクトペテルブルクを爆走。劇場を飛び出したのが23時59分。まさにミッドナイト。前回よりは人が歩いていたのでちょっと安心でした。逆に1人で爆走している私が不審者だったに違いない。

 

 


ではまた劇場で。