三島の見解

古の女子高生

2回目【オペラ】エウゲニ・オネーギン(新国立劇場)

2024年1月31日(水)14:00公演

新国立劇場オペラパレス

ピョートル・チャイコフスキー作曲

エウゲニ・オネーギン

 



 

お世話になっております。

三島でございます。

 

 

この日は1月24日に引き続き新国立劇場にてロシアオペラのエウゲニ・オネーギンを見て参りました。

 

では感想いってみよー。

(藤原歌劇団の「ファウスト」のおかげでハードルが下がっております。加糖しまくりの甘い甘い感想をお送り致します。)

 

オーケストラ

全体的に良く聞こえました。間違いなく初日より好みだし、2019年の公演分を含めて考えても1番よく聞こえた演奏でした。最初から最後までしっかりとした演奏。あれ?と思った箇所がないわけではありませんが忘れましょう。初日の感想でも書きましたが序曲出だしの「ドゥン」がちゃんと聞こえれば基本的に満足なのです。

 

 

序曲はフレーズごとに丁寧に着地をしていくような演奏でした。フレーズの終わりにきちんと「。」を書いていくような、しかし、決して流れを切ることなくに次に繋いでいました。下降音型をどんどん被せてくるようなたたみかける演奏が好きなのですが、ゆっくり演奏しても音がしっかりしていれば楽しめるものだと気づきました。

 

 

 

同じく序曲中盤の下降音型を異なる楽器で引き継いでいく部分は別の旋律を演奏する弦楽器の力みなのか歪みなのか、原因はわからないのですがノイズっぽくなるのが気になりました。ただ、双方が潰れることなく、かといって遠慮しているわけでもなく両方が自立して音楽になっているように聞こえました。物語の導入大事だからね。

 

 

 

 

そのまま1曲目のお歌への繋ぎも綺麗でした。そもそもこの作品は曲と曲の繋ぎが綺麗だから劇場でもそこを聴かせてくれるのは嬉しいです。ママの「Корсет, альбом,〜」のところで管楽器がピロピロしているのが好きなのですが、あんまり聞こえなかったです。歌に集中していても勝手に耳に届くのですが初日もこの日も聞こえず。ママのロシア語を聴き取るのに必死になっていたからかもしれませんが。千秋楽では気をつけます。

 

 

 

手紙の場はオーケストラがちゃんといました。これは嬉しい。なんならタチヤーナよりでしゃばっていいと思っている。どちらが主役かわからないくらいが正解な演奏だと思っている。出だしからお歌に入る前までは、もっと情感をくれー、と思ってしまいましたがそれでもよく鳴っていた方です。途中指揮者の息遣いが聞こえてきた気がします。最後のタチヤーナの「〜заслуженным укором!」の後のオーケストラがとても良かったです。最高でした。ここはオーケストラが全力で主役を奪いにくるところですね。掻っ攫ってください。全部持っていって!!音量もあり圧も強めで大変に好みでした。

 

 

 

全体的によかった。よかったのですが、音量の強弱表現に頼りすぎている気がします。0か100かの強弱表現です。悪くはないのですが何度も何度もくる強弱にだんだん飽きてきます。もし私が初めて生のオーケストラを聞いたのであれば純粋に驚くし楽しいと思いますが、リピーターになってしまった私からすると一本調子で少し退屈です。嫌だねー。慣れって嫌だねー。めんどくさい客じゃん、私。ホルンの不安定なときが目立ったのと、1幕2場(手紙の場の後)のオーボエはもっと軽快にお願いしたい。実直すぎる。

 

 

 

オペラ全体の枠に囚われ過ぎずにフレーズ・文章・1つ1つの音にアプローチをしていくような音楽つくりは興味深く、突拍子もないことをしているわけではありませんがとても新鮮です。指揮者のやりたいこともわかってきました。しかし、オーケストラ(歌手も)がまだついていけてないといったところではないのでしょうか。千秋楽でどこまで化けるか。期待します。

 

 

歌手

下手ではないけれど、決して両手を手放して上手と言えるほど上手ではない。それが全員に共通することです。グレーミン公爵に関してはここから除外したいところですが、この日の歌声は少々疑問が残りました。ただ書くことも少ないのでここに一言。音が籠るのが目立った。そしてオリガは特殊です。

 

 

歌手の声の気になった点を書いて終わります。

オリガ

まあよくそんなにくっきりはっきり低音が出ますね、といったところです。口の開き方が綺麗です。私が見ていた範囲では、唇を横に引っ張ることがなく常に縦に開いて歌っておりました。この方は人のお手本になるような歌い方をしているのか、と言ったら疑問がありますが、低音を素晴らしく歌いこなせることは事実です。真似しようとしたら確実に籠ってしまい無理矢理低音を歌っている感じになると思います。特殊です。特殊。訓練で得られるものではないのでは?ただ声に硬さがあるので出番が多い役だとどうなるかわかりません。喉の疲労も気になるポイントです。レンスキーくんとの掛け合い(1幕1場)は声の相性が良いのだか良くないのか分からず。好みによって大きく意見が分かれそう。

 

 

タチヤーナ

とても素直な声です。初日は演技力のなさが気になりましたが、この日はだいぶ動けるようになっていたので改めて声の良さに気づきました。

 

所謂ロシア人ソプラノ歌手として想像する声よりも明るく軽い声を持っています。胸から上で歌っているような浅さは多少あるけれど響きが落ちることは少ないです。タチヤーナを歌っていると自分の声が乗る(歌いやすい)音型やフレーズはとても美しく繊細な声が聞ける一方、無理につくったり重くしたりしているように聞こえるときもあります。「タチヤーナ向きの声ではない」(新国のインタビューより)とのことですが、私も同意見です。外国だから歌えるチャンスがあったわけで、ロシアでタチヤーナとして通用するかと言われたら難しそうです。彼女が下手なわけではなくもっと良いタチヤーナがいるということです。あの国は全員タチヤーナだからな(違います)。

 

この日一番よく聞こえたフレーズは2幕1場のレンスキーくんが怒っちゃった後の「Потрясена я,〜」部分です。他劇場や音源などで聞いた印象だとキンキンしてしまう人が多い記憶がありますが、このタチヤーナは優しい歌声で柔らかく歌われていました。これが本来生かすべき彼女の声なのでしょう。

 

 

 

手紙の場も初日より健闘しておりました。(かいつまんでいうと)手紙を書いているだけの場面をどう見せるか、というお話しですがとても頑張っていました。初日は指揮やプロンプターを見ているのが丸わかりでもうちょっと上手に見てくれ、と思いました。見なきゃダメなのはわかる。でも見方に上手い下手がある。今日は視線が落ちることをそこまで感じませんでした。初日よりオーケストラの支えも厚かったので歌いやすかったのかもしれません。

 

 

手紙の場はタチヤーナに向いている向いていない問題がよくわかります。お持ちの良い声が生かされていないと思います。中音域だと輝かないのです。中音域を歌いまくった後の高音(そんなにないけれど)は響きが悪くなる。疲労かな?もう少し聞いて考える価値がありそうです。後半の「вот он,вот он!」の母音の浮つきが気になりました。踏み切れないというか音が甘いというか。フォルテだったような。最後の「〜заслуженным укором!は発声の位置を胸に落とすことで安定はするのですがお持ちの軽やかな声が全く生かされなくなるのは辛いですね。つくっているような声になってしまうのが気になりました。この声自体は悪くないのですが、あなたのアピールポイントはそこではないので。なんか勿体無い?

 

 

 

また3幕2場が優秀で(オネーギンはなんかおかしかったけれど)丁寧に精密に歌っておられました。中音域でも丁寧に歌う余裕があれば綺麗に響くのですが、言葉を捌いていかなければならない部分(特に手紙の場とその前後)は地声感が出てしまいますね。最後の「Навек прощай!」まったり発音している時間がないので雑な発声になりその後の高音も十分な準備ができずに浅い高音になってしまったのでしょう。そもそもこのような劇的な高音を出して輝く声ではない。

 

 

 

感想書いていたら彼女の声がタチヤーナではないことがよくわかってきた。歌える合っているって違うからな。そのせいで歌いたいものが歌えない苦悩が発生する。タチヤーナを本格的にレパートリーにお迎えするなら中音域の丁寧なトレーニングが必要な気がします。規則正しい作品(役)というかかっちりしている作品(役)の方が良さそう。モーツァルト先生とか?彼女本来の声が十分に味わえる役柄でまた出会いたいものです(千秋楽行くけど。)。

 

オネーギン

この人の声はよくわからん。難しい。言葉で書けるのか。

 

オーケストラの音楽に支えられてボロが出ていませんが、発声の浅さは気になります。壁打ちのような声の出し方で深みや奥行きがない。ピアノ伴奏だとちょっと怖いかも。

 

 

音の広がりがなくただそのまま口から出しているような声で、骨格が日本人とは違うのでそのような出し方でもある程度響きますが、同じことを日本人がやったら悲惨な結果になります。また、レンスキーくん同様、力技で解決する部分も多いです。次の音がある程度離れているときは結構な確率で押しながら歌っています。初日にも気になった1幕3場の「мечтами,мечтами〜」の「та」の謎の崩れは、無駄に口に力が入ってるのが原因な気がします。声を発した後に、口を広げていたのでその動きが不自然な音を生んでいるようです。伸ばすために口の力を使っているのでしょうか?どのみち謎ですね。

 

 

 

 

3幕2場は初日以上にぐだぐだしていました。タチヤーナ同様オネーギンも言葉捌きが美しくなく、ひたすらしゃべっているような部分は余裕がなくなり発声・発音ともに雑になります。言葉捌きが追いつかないからか、テンポが保てなくなりオーケストラとのズレが発生していました。音の取り方もだんだん甘くなっていきました。指揮者も一生懸命指示を送っていましたが、途中から指揮者が諦めてオネーギンにテンポを合わせた気がします。一生懸命指揮を見て歌っていましたがズレるものですね。

 

舞台映えする容姿となんとなく歌えているので評価は高そうですが私はまだ考えようと思います。

千秋楽への宿題とします。

 

 

レンスキー

レンスキーくんはレンスキーくんを歌うにしてはテクニックの繊細さがかけるというところでしょうか。

これまた言葉で言うのが難しい。「Куда, куда」の歌詞を少々お借りして感想を書きます。

 

まず、

Куда, куда, куда вы удалились,〜

初日は2回目の「Куда」の「да」を広げ過ぎたのが気になりましたが、今回はその後の「удалились」の「да」を広げました。スムーズに歌ってくれ。

 

 

Что день грядущий мне готовит?

出だしの声が「とりあえず爆発させておこうぜ!」と思っているのではないかというくらい爆発している。声量出さないと最初の音にたどり着けないのはわかるのですが、漫画だったら右横に「バーン!!!」と書かれてしまうような声。繊細さも情緒もない。発声的には怖い。拳銃打つのはその後だからもうちょっと待って。「Что」の発音に関して、初日は「ショーン!!!」と言っているように聞こえましたが、この日は頑張ったら「Что」に聞こえるかなあ、と思いました。私が私の耳を正しい発音に寄せました。優しい。ただ「Ч」と「то」の間に謎の時差がありました。「то」の「о」で音をはめるので高音を正確に出すための時差だとは思いますが、これはいただけないですね。この方は自分の歌いやすいように発音を誤魔化していますね。ソプラノ・テノールだと良くあることですが流石に崩し過ぎです。

 

 

иль мимо пролетит она〜

「мимо」の「м」がやたら前に出てくる印象を受けた。子音がきちんと聞き取れるレベルで発音されるのは嬉しいのですが悪目立ちも良くないので難しいところです。

 

 

Ах, Ольга, я тебя любил!

最初「あはーん!」と聞こえてしまいました。まじで自由な発音。

 

 

1幕と2幕1場で口の動きに注目していたら、口を開けたときに舌に力が入っているように見えました。無理矢理下の歯の裏にくっつけているように見えました。もちろん客席からオペラグラスで確認したので推定ではありますが。唇が横にひっぱりすぎることはないけれど、舌が力が入ってしまい硬くなるから音も一緒に硬くなってしまっているのかもです。母音ごとの声質の変化があるなか音楽的な流れを失うことがないのは素晴らしいです。だから上手に聞こえるのだろう。ただ自分の気持ちの良いところで歌い過ぎていますね。広げ過ぎ歌い過ぎの良い例でしょう。

 

 

ママと乳母とときどきトリケ

ママは相変わらず低音域とそれ以外で声質が変わってしまう。低音域の吠えるように押し出す歌い方は軽減されたように聞こえたが言葉が聞き取れなくなった。ニャーニャは相変わらず指揮している。トリケがタチアーナの名前覚えていない演出が嫌だ。

 

以上です。

 

 

茅野先生、茅野先生のフォロワーさま、ご一緒できて嬉しかったです。

勝手に混ざってすいませんでした。楽しかったです。

 

 

残すところ一公演、千秋楽です。

めでたく終わってください。

 

 

千秋楽の感想は

初日と31日公演で気になったところは解消されたか?

疑問点の答えが見つかったのか?

で、結局新国オネーギンはどうよ?

 

以上3本立てでお送りする予定です。

テーマ決めとかないと。

もう書くことないし。

今日の感想も本当はオネーギンの物語の話をしたかったですが結局お声の話をしている。

 

では千秋楽で。

 

 

 

終わり。

 

指揮:ヴァレンティン・ウリューピン

演出:ドミトリー・ベルトマン

タチヤーナ:エカテリーナ・シウリーナ

オネーギン:ユーリ・ユルチュク

レンスキー:ヴィクトル・アンティペンコ

オリガ:アンナ・ゴリャチョーワ

グレーミン公爵:アレクサンドル・ツィムバリュク

ラーリナ:郷家暁子

フィリッピエヴナ:橋爪ゆか

ザレツキー:ヴィタリ・ユシュマノフ

トリケ:升島唯博

合唱:新国立劇場合唱団

演奏:東京交響楽団