三島の見解

古の女子高生

【コンサート】東京音楽大学卒業演奏会

2024年3月18日(月)18:00公演

サントリーホール ブルーローズ(小ホール)

東京音楽大学卒業演奏会

 

お世話になっております。

三島でございます。

 

この日は東京音楽大学の卒業演奏会に行ってまいりました。

ご卒業おめでとうございます。

www.tokyo-ondai.ac.jp

 

演奏者は10名。

内訳は声楽3名、ピアノ2名、ヴァイオリン2名、打楽器1名、トロンボーン1名、サクソフォーン1名です。卒業演奏会なので選ばれし成績優秀者かと思います。

 

因みに入場料は一般1500円でした。

卒業演奏会というと入場無料のイメージがありますがこの公演は有料での開催。学校の施設ではなく外会場だからでしょうか。理由は知りませんが、私は無料より1000円から3000円取ってもらった方が気合い入れて見れる(聞ける)のでありがたいです。

 

 

では感想いってみよー。

声楽のみの感想です。

(以下全て敬称略)

 

 

La danza(G.ロッシーニ作曲)の伴奏に感謝

先に触れておきたいのは伴奏者(山家有翔)の上手さについてです。伴奏者もピアノソロでこの演奏会に出演しており、F.シューベルト=F.リスト作曲の12の歌S.558より”アヴェ・マリア”とF.リスト作曲の「リゴレット」による演奏会用パラフレーズ S.434を披露されました。(略し方がわからないのでプログラム丸写しです。)

 

細かい音型をとても綺麗に弾かれていました。自分のソロが終わった後に伴奏者として再び舞台に登場したときに伴奏の勝利を確信しました。テンポを落として歌う方がいないわけではありませんが、遅いテンポのこの曲になんの価値があるかわからないので、アップテンポに対応できる伴奏技術と絶対に流れない音が良かったです。安心して聞けました。この曲は前奏が地味に長いのでこの日もカットありでの演奏となっておりました。いや、全部弾いてくれ。むしろ前奏のみで終わって良い。

 

もう一曲のR.シュトラウス作曲の”Di rigori armato il seno”(オペラ「ばらの騎士」より) の伴奏はもっとたっぷり弾いてほしかったところが本音ですが充分に上手でした。かっちりしすぎ感は否めないけれど。

 

しかし求められるものが異なる伴奏をどちらかの完成度が格段に落ちることなく演奏してくれたのは嬉しいです。今後のキャリアをピアニストとして進むのか、声楽の伴奏者になるのかは知りませんが、どちらにせよ良いキャリア形成ができるように祈っております。

 

 

 

声楽のお三方に共通して言えること

発声が浅い。3人とも胸から下が全く使えておらず発声元が喉周りになっていました。この音やこのフレーズは良い発声だな、と単発での良さもなく不思議なくらいずっと上の方で歌っておりました。

 

一見すると(一聴すると)、よくまとまっているし音楽の流れが切れるようなこともなかったので上手に聞こえると思います。声がきちんと出ているし高音も音にはなっていました。この演奏会が趣味やプロフェッショナルでない方の発表の場であればよく頑張っているなと思いますが、残念なことにこの演奏会は音楽大学の公演です。4年間もしくはそれ以上に学ばれてきた方の演奏と考えると大変によろしくないです。

 

20代そこそこの人たちに完璧な発声技術を求めているわけではありません。声楽の技術が安定してくるのはもっとおじさんおばさんになってからです。コンクールの要件を見ると声楽部門だけ年齢制限が高いのもそういうことだと思います。

 

私が思うのは、彼らがどのような教育を受けてきたかと言うことです。完璧でなくても完璧を目指しているのかはわかりますよね。かたちにはできていないけれど進む方向があっているとは思いたいです。それが全くなかったのが残念というより悔しいです。

 

歌手未満にいわゆるオペラ歌手的な感想を書いても可哀想なので、ふわっと柔らかに個々の感想を書いて終わります。

 

 

早口言葉頑張ったテノールくん

テノールくん(矢澤遼)は1曲目の”La danza”の早口言葉は頑張りました。口が回っていたのは素晴らしいと思います。テンポもダレることなく(伴奏者のおかげな気もするが)完走したは良かったです。この歌の最初の難関はイタリア語が捌けるかですからね。

 

最初の言葉「già」の音のはまりが悪かったです。出だしの音が上手に聞こえないと聞く方としては構えてしまうので、出だしは丁寧に飛ばして欲しいです。全体的に音が低めでした。こちらが抜けるような明るいテノールの声を想像していたので低いように感じたのかもしれない。声量を落としたときにただの小声になってしまいました。

 

これはほぼ全員の課題ですが、如何に根底がしっかりしていないかがバレます。声量を増やして歌えば響いているように聞こえますが、芯がなく声量で頑張っているだけなのではよくないです。声の響きではなくただのパワーですね。

 

2曲目の”Di rigori armato il seno”はフレーズの流れが切れなかったのはよかったです。ただ終始何言っているかわからない発音でした。逆を取れば言葉がはっきりしないおけげで母音ごとに響きが変わるのは避けられたと思う。

 

最高音を出すときに、二重顎になってしまう。元々じゃなくて高音を出すために口周りに力が入ってしまい、二重顎のラインがはっきりくっきり出てしまう。今はそのパワーで解決できますが、長い目で見ると危ういものがあります。

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ロシア語頑張ったソプラノさん

この方(矢頭なみき)はロシアオペラ「皇帝の花嫁」(N.リムスキー=コルサコフから”Иван Сергеич, хочешь, в сад пойдем?”を歌われました。マルファのお歌です。

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卒業演奏会でロシアオペラアリアを歌えるということはロシアオペラを勉強する環境が大学にあるということでしょうか。素敵ですね。

 

歌は2つの要素に分けて感想を書く必要があります。必要はないですね。勝手に書いているだけです。

 

まずロシア語の発音に関してです。ロシア語を発音するせいで音楽の流れが切れることはなく一定したラインを維持できていたのは素晴らしいと思います。ただ、全体的に平べったい発音でロシア語には聞こえますが限りなく日本語の発音に近いロシア語でした。出だしの「Иван Сергеич」が完全に日本語で焦りました。

 

 

子音が2つ以上続く言葉は間に母音が入ってしまいますね。私が二重子音に異常に過敏なので余計にそう聞こえた可能性がありますが、特に「в」から始まる単語は気になる。後「мне」も気になりました。難しいよね。わかる。

 

 

お歌のみの技術はお三方の中で一番安定していましたが上に書いた通り胸上での発声なので声は広がりません。きちんと歌えている感はありますが、それゆえの抑揚のなさが気になります。ロシア語で歌えることは素晴らしいことですが、ロシア語に比重を置くと発声がほったらかしになるのかもしれませんね。

 

イタリア語で歌うのとはいろいろ違いますので。イタリアオペラ至上主義はよくないですが、発声を同時に学んでも無理のないイタリア語の作品の大事さを感じました。

 

 

高音頑張ったソプラノさん

こちらの方(老川鈴唄)はフランス語でA.トマの”A vox jeux, mes amis”(オペラ「ハムレット」より)オフィーリアのお歌を歌唱。

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細かい音型と凄まじく高い音が登場する難しいお歌です。W.モーツァルトの夜の女王のお歌(“Der Hölle Rache kocht in meinem Herzenオペラ「魔笛」より)の最高音が想像より高い位置にいるファです。音だけで言えば夜の女王のが高いですが、お歌の難易度でいうとオフィーリアが高いと思います。もちろん個人的な意見です。だいたいとち狂っている場面のお歌は難しいのよ。

 

高音域がよく出ることはわかったのですが、口周りの使い方を見ていると、高音域を歌うときに下唇が内側に入っていました。かなり口周りに力を入れて、そこの力に頼って高音を出していることがわかります。体で支えられないから唇の力でなんとかしています。

 

最後に高音を伸ばした際に、伸ばしている最中に音の質が変化していきました。ただの力みで高音を出しているので音を保とうとした時に思うように保てずに力の入れ具合に変化が生じ音色が変わってしまいます。出る出ないで言えば出ているし、「質なんてどうでもいい!」という見方の聴衆はそれでいいのかもしれません。

 

細かい音型は一つ一つの音は綺麗に聞こえませんでしたが、学生ならまあいいかというレベルです。こちらが妥協します。高音域から中音域に降りてきたときに音の質が変わってしまうのも気になりました。中音域は力で響いているように聞かせることもできない音でした。中音域捨てたのかな?日本人ソプラノあるあるだよね。

 

難しい曲をよく頑張ったと思いますが、ここまで背伸びして歌うほどでもなかったのではないかというのが正直な感想です。

 

 

以上です。

彼らの問題というより彼らの後ろにいる学校(先生)の問題も大きいですよね。

切ない。

 

 

後半に演奏されたヴァイオリンの方(遠井彩花)が聞いていて一番引き込まれました。

技術的なことは述べられなず大変申し訳ないですが、歌に限らず楽器でも芯の通った高音は聞いていて気持ち良いですね。

浮ついた音を出さないところにプロフェッショナルさを感じました。

 

 

 

おしまい。