三島の見解

古の女子高生

【コンサート】ソニア・ヨンチェヴァ ソプラノ・コンサート

2023年9月30日(土)15:00公演

東京文化会館 大ホール

旬の名歌手シリーズ2023-Ⅱ

ローマ歌劇場来日記念特別コンサート

ソニア・ヨンチェヴァ ソプラノ・コンサート





 

 

 

 

 

 

 

お世話になっております。

三島でございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日は先日のローマ歌劇場来日公演にて完成度の高い素晴らしいトスカを演じてくれたソニア・ヨンチェヴァさん(以下敬称略)の単独コンサートに行って参りました。単独コンサートは去年も開催してくださり2年連続はありがたい限りです。遠い遠い島国までコンスタントに来ていただけるのは大変嬉しいです。だから来年もお願い致します。

 

 

 

 

 

 

 

 

では感想いってみよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女神君臨

圧倒的オペラ歌手さま。

 

 

 

 

昨年は「日本の皆さん初めまして。」というような感じに初々しさがありました。退場時にヒールが脱げてしまった姿を微笑ましく見守りました。懐かしいです。可憐で可愛らしいヨンチェヴァもよかったですが1年間キャリアを重ね、またトスカ終わりということもあるのか、今年は風格とオーラがバチバチで怖いものなしといった雰囲気で変化を感じました。去年より貫禄のついたヨンチェヴァも素敵で大変美しいです。去年の方が曲ごとに違う役になっているのがわかりやすかったですが、今年はヨンチェヴァ自身に価値があり、ヨンチェヴァが歌うことに意味があるコンサートといったような雰囲気でした。ヨンチェヴァの存在価値を大いに感じました。歌手本人の説得力と吸引力が大事な世界だからね。圧倒的真ん中力です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1部は白のマント付きドレスで肩部分だけキラキラの装飾がありました。白がよく似合います。髪型はアップヘアでした。2部は黒のベアトップドレスで裾がくるぶし辺りまで見え後ろにかけて長くなるようなデザインのドレスを着ておりました。ベロア素材のように見えました。2部は髪を下ろしていてこちらも素敵でした。足元は1部も2部もシルバーっぽい色のキラキラミュールでした。可愛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

堂々と完璧な歌を披露しパフォーマンスに抜け目も遠慮もありませんが、曲終わりのお辞儀がとても丁寧で客席に対する愛情を感じました。深々と頭を下げるしお辞儀の時間も長い。一流のオペラ歌手だけれど驕りがないように見えました。少なくとも客席に対しては。最後の方は日本語で「ありがとうございます。」と口にしておりました(拍手でほとんど聞こえないけれど)。日本語なのが嬉しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

指揮台の横に譜面台を置いていましたが、がっつり譜面を見るような場面はなく、確認程度に見ているくらいでした。やっぱり譜面台なし楽譜なしで歌っているのが見たいのでこれはよかったです。気を逸らさずに譜面を捲るの上手だなと思いました。1曲歌い終える度に指揮者のフランチェスコ・イヴァン・チャンパさん(以下指揮者)とお話しをしていましたが、何を話しているかは聞き取れず。次の曲の指示か、今の曲の感想なのか。歌っている最中も指揮者とのコンタクトが多かったですね。何かの曲の前奏部分でヨンチェヴァが深いため息のようなものをついたときは演奏下手過ぎてオーケストラにキレてるのかと思いました。違うと思うけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

最近よく耳にするベルカント商法唱法の方々からすると許せないような歌い方でベッリーニ先生の作曲したお歌を歌っておりましたが、正しい発声は失わずに大きく心を揺らすようなドラマチックなパフォーマンスができることは貴重です。貴重な人材!私は大好きです。ありです。舞台上で動ける人が好きなので。次から次へと難しい神経を使いそうなお歌を歌っておりましたが、最後まで余裕を感じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーケストラの皆さまと指揮者さま

今回は東京シティフィルハーモニック管弦楽団さまでございました。東京フィルハーモニー交響楽団さまだと思っていましたが違う団体なのですね。名前が似ている!勉強不足だ!同じ略し方で東フィルと呼んでしまいそうで怖い。なんて略すのシティさんで良い?

 

 

 

 

指揮者がときどき振らなくなるのが面白かった。手を動かさないという指揮ですね。結構な頻度で第一バイオリンゾーンに「もっともっと」と手で指示を送っていたのが印象に残っております。確かに第一バイオリンさんたちの主張が弱すぎる気はしました。1曲目、タイスの瞑想曲のバイオリンソロ(コンサートマスター)は丁寧ではあるけれど教科書通りの様な演奏でちょっと寂しい。譜面をそのまま辿っているような音楽。もっと感情的に演奏しても良いのではと思いました。良い音でしたが面白みがないです。全曲で感じたのですが、弦楽器以外の楽器の音がボワボワしてました。もしかしたら私の席位置の関係かもしれませんが、芯のない音が広がっていくのがあまり美しくなかったです。アンコールの「O mio babbino caro(ジャンニ・スキッキ/ジャコモ・プッチーニ作曲)」のオーケストラの出だしの音たちが怖すぎた。もっと堂々と出てきてくれないと不安だわ。もっと鳴らしてこうぜ!プッチーニ先生だから安心して出ておいで!場数を踏んでいるヨンチェヴァからすると歌いにくい部分が多かったと思います。勝手に思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では曲ごとに簡易的な感想文をお送りします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Il est doux, il est bon(美しく優しい君)

ロディアードよりサロメのお歌/ジュール・マスネ作曲

 

ヨンチェヴァはイタリア語よりフランス語で歌う方が得意そうですね。歌詞の乗りが良く響きがイタリア語で歌うよりも集まっているように聴こえました。出だしの音階を上がっていく「Celui dont la porole〜」がボコボコせずに綺麗に上がっていく声がとても美しかったです。この曲ではフレーズとフレーズの間でブレスを大きく吸っていました。大胆なブレスの取り方だなあと思いましたが、それでも曲の流れは崩れないのが不思議です。大きく吸うと歌ってるのか息を吸い方を披露しているのかわからなくなる。最後の高音域へのオクターブジャンプは(想像通りのシ♭から想像よりも高いシ♭)なんの引っ掛かりも迷いもなく響かせており、小手先で高音域を誤魔化さずにしっかりはっきり歌う姿に圧倒されました。

 

 

 

 

リヒャルトの方のシュトラウスさんのサロメちゃんが馴染み深いからなかなかこちらのサロメちゃんに馴染めないのですがとても綺麗なお歌ですよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Ah je suis seule〜Dis-moi que je suis belle.
(ああ、やっとひとりになれた〜私を美しいと言って《鏡のアリア》)

タイスよりタイスのお歌/ジュール・マスネ作曲

出だしの「Ah!je suis〜」の「je」の発音の仕方というか音符への言葉の乗せ方が本当に綺麗だった。やっぱりフランス語の方が歌いやすそう。イタリア語で歌うよりフランス語で歌う方がぼやぼやしているように聴こえることが多かったのですが人に寄るのだなと実感。認識を改めます。お勉強になりました。「Et que je serai belle〜」の高音域へ駆け上がるときに全く潰れないのが素晴らしいです。声量のコントロールをそこまでしないのに綺麗に上がれるのがすごい。そのまま高音域にいくと無駄に広がりそうなのに声の的(というのかな?)を維持したままどこでも歌える人のようです。「Thaïs, tu vieilliras〜」部分の歌い方にとても迫力がありましたね。タイスの葛藤や苦悩がわかりやすく表現されていたし(誰?)、私はヨンチェヴァのかなり強め歌う時の声や表情が好きです。「Que rien ne〜」部分が1回目と2回目で「Que」の音色が変わってしまったのがちょっとだけ気になった。1回目の方が平べったくなるように感じました。それでも次の音には支障が出ないのが強い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Oh! s'io potessi〜Col sorriso d’innocenza
(ああ、目の前にかかる雲を〜その無心の微笑みで《狂乱の場》)

海賊よりイモジェーネのお歌/ヴィンチェンツォ・ベッリーニ作曲

とんでもなく忙しいお歌ですね。よく最後まで歌えるものだ。細かい音型を音量を落とさずにそのまま歌っていた。軽くやっているけれど細かいところと滑らかに歌うところで発声の位置がずれないのが強い。ヨンチェヴァは総じて強い。口の奥の方で音を転がしているように感じましたが、奥にいっても声量が落ちない。口の開き具合もほぼ同じで(最後の方はちょっと揺れていたけれど)音符の細かさに左右されない発声を習得されているのですね。低音域からの高音域へ戻るときにストレスがないです。これはトスカでも感じましたが、低音域で胸のあたりまでかなり落として歌うのにその後にある高音域を歌うときに瞬時に頭声に戻っていました。寄り道なしし。すぐ帰宅。低音域の出し方に関してはかなりセリフっぽくなる(地声?)のでベルカント商法の方々はお怒りになるかもしれませんが。狂乱の場の如く、目に力が入ったかと思えば焦点が合わずにふわふわした視線の使い方もしたり、お歌でスーパー大変なことをやっているのに合わせてお芝居もしている。ヨンチェヴァにとっては当たり前かもしれませんが、のど自慢大会によく遭遇する身としては感動でございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Io son l'umile ancella(私は創造の神のいやしいしもべ)

アドリアーナ・ルクヴルールよりアドリアーナのお歌/フランチェスコ・チレア作曲

 

記憶がないです。すいません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

La mamma mort(亡くなった母を)

アンドレア・シェニエよりマッダレーナのお歌/ウンベルト・ジョルダーノ作曲

 

この曲が1番かっこよかったです。ヨンチェヴァの声色が1番輝くお歌のように感じました。どのお歌の歌い方も好きですが、このコンサートではこの曲が1番気に入りました。とにかく出だしからの1フレーズ(「La mamma mort〜della stanza mia」)がかっこいいのよ。3回くらい歌ってほしい。そこまで低くはないけれどかなり発声のポジションを落として地に響かせるように歌っておりました。音符的には特別なことはないけれど、じわじわと聴かせるような歌い方が好きです。明る過ぎず影のある声がお歌に合っています。その後の「quando ad un tratto〜」も早いけれど確実に歌っていおりました。イタリア語はふわふわしてましたけれど。まあ通常運転か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Se come voi piccina(もし私がお前たちのように小さな花だったら)

妖精ヴィッリよりアンナのお歌/ジャコモ・プッチーニ作曲

 

はい、プッチーニ先生です。花を1輪もって登場し花びらを毟っていく散らしていくヨンチェヴァ。花に集中しすぎてちょっと声の飛びが悪いのが面白かった。この曲だけオペラ歌手じゃなくて花びら散らし屋になっていた。声の飛ばなさが顕著だった。中音域を滑らかにしっとり歌うのが少々苦手かな?しっとり美しく歌ってはいるけれど小さく響かせるところは完全にオーケストラに飲まれていました。ただ多分大事な言葉であろう「Non ti scordar di me!」をはっきり発音するのはよかったです。このコンサートを通じてヨンチェヴァは中音域で声量をセーブするような歌い方がそこまで得意ではないのかなあと思いました。トスカも声量で解決できない中音域はこもりがちでした。小さく響かせることができないわけではないのですが、バーンバーンと歌うことが多いので、所謂pianissimoの高音を期待するとちょっと違うなと思うかもしれません。それ以外が素晴らしいので何の問題もないきもしますが。

 

 

 

 

 

最後に指揮者にフッと花びらを吹きかけるのがよかった。指揮者の乗り切れていない表情がもよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

Sola perduta, abbandonata(捨てられてひとり寂しく)

マノン・レスコーよりマノンのお歌/ジャコモ・プッチーニ作曲

 

はい、プッチーニ先生です。2回目です。これで終わってしまうのが寂しくて寂しくてよく覚えていないのです。いや寂しい。帰らないで。

 

 

最後の最後まで声と体力が持つ。疲れは感じない。この後オペラ全幕いける。コンサート本編の最後をこの曲で締めるのが強いです。最後に精神的にもヘビーなお歌を持ってくるとは。どんな顔でお別れしたらいいのか。「Ahi! mia beltà funesta〜」の中音域のラ♭から高音域のラ♭そして中音域のラ♭に戻ってくるオクターブチャレンジが大成功で素晴らしかったです。声量そのままバーンと歌うのに絶対に広がらない。声のエレベーターのようなものが体の中に入っているのだと思う。力みを感じるのではなくただただ声そのものの力が強い。「No! non voglio morir〜」の歌い方が迫力はあるけれどものすごく切なくて悲しくなった。よくもまあ上手に感情を乗せますね。こちらが苦しいです。ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンコール

まず女声のアンコール課題曲「O mio babbino caro(ジャンニ・スキッキ/ジャコモ・プッチーニ作曲)」は乗り切れない感じがありました。オーケストラの出だしが歌手を乗せる気がない演奏なのも1つの原因だと思いますが。とりあえずここさえ綺麗なら良い「Mi piace è bello bello」の小さい音で響かせるような歌い方はせず。かといって張り上げたりせずそのまま歌っていました。兎に角オーケストラさんが盛り上げてくれないので歌いにくかったと思います。プッチーニ先生のお歌はオーケストラががっちり支えてくれないとどうしようもないよね。難しい。次は「Hymne à l'amour(愛の讃歌)」。まさかのシャンソン。楽譜を持って登場したけれどほぼ見ずに歌っていました。ヨンチェヴァのシャンソンはとても新鮮でした。もちろんオペラ歌手としてオペラ風に歌っておりました。熱量が高く聴いていてドキドキしました。最後は「Non ti scordar di me」でした。3曲目は特に感想はないけれど出だしの誘うような歌い方が美しかったです。ゆったりとした音楽作りだった気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上です。

 

 

 

 

 

 

 

 

素晴らしいコンサートそして素晴らしいトスカをありがとうございました。

ヨンチェヴァがステージ上に起こす数々の女の生き様をもっと観たいと思っています。

またのお越しをお待ちしております。

そしてヨーロッパで勝負するヨンチェヴァが観たいのでそっちにも行けたらいいなと思っています。

ただの観望です。予定はない。

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

ではまた劇場で。