2023年11月11日(土)14:00公演
日生劇場開場60周年記念公演
NISSAY OPERA2023
お世話になっております。
三島でございます。
この日はヴェルディ先生のオペラを観に日生劇場まで出かけました。
皇居の周りは観光客の方が多くて歩きにくいです。
マクベスは夏に新宿区民オペラで上演したのを観たので短期間で2回目の観劇となりました。
マクベス夫人は他のソプラノの役と一線を引き、欲深く人間味溢れる魅力的な人物で大好きです。
こういうのがかっこいい。
めちゃめちゃチケットの売れ行きがよかったみたいですね。10月下旬には完売しておりました。私が確認したのがそのあたりだっただけでもしかしたらもっと前に完売していたかもしれません。
入場導線のチケットもぎりの位置の前に関係者や招待者の受付が設置されていて夥しい数の黒スーツマンたちが待機しておりました。もちろんパンピーには「いらっしゃいませ」は言わず。プライドを感じます。藤原歌劇団の総監督さんは誰それ構わず「いらっしゃいませー。」「ありがとうございましたー。」って言ってましたけど。推せますね。
では感想言ってみよー。
ツーブロックとお化粧
マクベスさん、マルコムさん、マクダフさんの3人とも髪型がツーブロックで流行っているなあと思いました。お洒落だもんね。ちなみにバンクォーさんはツーブロックではなかったです。(見間違いでなければ良い。)
男性・女性問わずに全員化粧が濃かったです。悪口ではないです。化粧は濃い方がいいです。ドーラン厚塗りだけ気をつければいいのです。アイラインとシャドウが濃いです。目を伏せたときのまぶたが綺麗だねー。マクベス夫人の眉毛の細さが面白い。一本書きでした。
紗幕を上げておくれ
最初から最後まで紗幕(というらしい向こう側が見えるくらい目の粗い幕)が降りたままだったので視界が良好ではない以外のナニモノでもなかった。常に霧がかかっているような。謎のモザイク?舞台照明がどの場面でも暗いのに紗幕のおかげでさらに暗くなる。コロナ対策なの?暗さにこだわったの?森の場面だけ降ろすなど場面を限定して欲しかった。幕を上げてくれー。
そして暗転が多すぎる。1幕2幕→休憩→3幕4幕だったので幕ごとの暗転は意味がわかるのですが、それ以外の暗転が多いです。また暗くするのか、と何度も思った。日生劇場での舞台転換が不便なのかな?暗転しすぎると物語の流れがどうしても切れちゃうから少なければ少ない方がいいよね。照明は暗め、暗転は多めで永遠の黒・黒・黒だった。マクベスのテーマカラーは黒?暗転の回数数えておけばよかったな。
マクベスさん、マクダフさん(、確かマクベス夫人さんも)も美味しいお歌のときに舞台前方に1人立ちで歌っていたのが勿体無いなあ、と思いました。誰かと絡む必要も舞台中を駆け回りながら歌う必要もないけれど、狭い場所で歌わされている様子が見ていてとても窮屈だった。マクダフさんは後方でモブたちがお芝居しているからまだ空間の抜け感があるけれど、マクベスさんの「Pietà, rispetto, amore〜」なんて真っ黒の空間でお歌いになるから物足りなさが出た。寂しかった。突然の文化祭感セットだった。
ダンカン王への謁見の場面は何を見せられているか疑問だった。不思議なくらいにすっからかん。舞台セットが寂しく舞台上の人々にも迫力がないとこのような場面は締まらないなあ、と思いました。まあいつもか。
ダンサーが出てくる必要性もよくわからなかったなあ。ダンサーと言うほど踊らないし。新国立劇場の「子どもと魔法」並だとまたバランスが難しいが、配役にある以上もっと見せ場を上げたらいいのにと思いました。とりあえずダンサーを使いたかったぜ!みたいな。全ては紗幕のせいだな(?)。
では歌手の感想を少し書いて終わりにします。
合唱(女声)
声の軽さが目立つ。全員が喉で歌っているような浅い声でした。
魔女というよりかは小娘のようでした。
魔女の場面も王への謁見場面と同じくお遊戯会のように見えた。
マクベスさん
マクベスさんは新宿区民オペラと同じマクベスさん(今井さん)でした。なぜか同じ役で短期間に出会う。
登場したときに主役の佇まいがないのが寂しいところですが、お持ちの声は良いのです。力強く歌うことが得意らしい。新宿マクベスのときはイタリア語の発音の良さが印象に残りましたが、今回は逆にイタリア語が不鮮明だった印象を受けた。新宿マクベスは周りがイマイチだったので対比で良く聞こえただけかもしれません。
発声のポジション自体は浅い気がしました。ポジションが喉に上がってきてしまい、喉が詰まるような声を聞いてしまいました。(席が前の方だったので。)でも大きな崩れはなかったですね。いかんせんお持ちの声が良いので全然聞けちゃうというマジック。高音域へジャンプするときの力み具合がちょっと気になりました。崩れそうになるのをなんとか抑えているような?でもお持ちの声が良いので(以下略)。
マクベス夫人との対比を意識したのか、弱々の弱々マクベスで、国王就任パーティーの場面でバンクォー亡霊さんの登場にワタワタしちゃう姿は痛々しいほど情けない。恥ずかしい(褒めている)。マクベス夫人が客席の代弁者になっていました。もっと言って、マクベス夫人!この場面のバンクォー亡霊さんは、照明がサイケデリックで且つバンクォーさんが短髪だったのでイケイケな釈迦如来に見えてしまいました。和洋折衷演出かな(適当)、と思いました。まじサイケデリック釈迦だった。
最後の大きなお歌「Pietà, rispetto, amore〜」はもっとしっかり歌ってよかったのでは、と思うくらいさらっと終わりました。あっさり味付けです。出だしの「Pietà」と「rispetto」がむにゃにゃしていたのではっきり発音してほしかったです。単語を強調してほしーい。終わり方は新宿マクベスと同じような歌い方でしたが、本公演の方が品があったと思います。
マクベス夫人
マクベス夫人(田崎さん)は6月にみなとみらいホールで行われたのリヒャルトの方のシュトラウスさんのサロメ(演奏会形式)でサロメちゃんを歌っていたお方でした。サロメちゃんのときはあまり良い感想を書けなかったのですがマクベス夫人は想像したよりよかったです。
サロメちゃんのときは無理矢理10代を演じているような感じでしたが、マクベス夫人は無理のない演技でした。なんでもかんでも若作りはうまくいかないね。マクベスを食べちゃうような迫力があり、お芝居面では納得のいくマクベス夫人に出会えたな、と思っております。特に、意気揚々と夫を煽りまくるマクベス夫人と死に際に弱りきったマクベス夫人の対比がわかりやすく、新宿マクベス夫人(飯島さん)はこの差がなかったので本公演で見ることができ、ありがたかったです。
国王就任パーティーのマクベス夫人のマントひらひらがかっこよかった。
しかし、お芝居面では納得だったからこそお歌はもう少し求めたいところ。マクベス夫人の割に低音域が弱い。聞いていた感じでは胸に落としすぎるのを避けているのかなあ、と。できないのではなくやっていない。低音域バリバリでもあるが高音域ピャーピャーでもあるので(?)焦点をどこに当てるのか考えたのかな。推測です。というか感想です。高音域の安定のために低音域は守りに入ったように聞こえた。なので、高音域は力みを感じるものの歌声としては良い仕上がりでした。全体的にはお歌のラインが綺麗で、お芝居をしっかりしながらも丁寧に歌っている印象でした。
死に際マクベス夫人の深夜徘徊タイムのお歌はとても美しくそれまで結構強めに歌っていましたが、細々と歌い上げることもできる方なのだな、と関心しました(誰?)。ワーグナー先生の作品をレパートリーに持ちながら(公演プログラムより)も、このようなお歌もそつなく歌えるというのはかっこいいです。サロメちゃんの感想の掌返しみたいになっているけれど、あっちもこっちもリアルタイムな感想なのです。
マクベス夫人をよく完走し切ったな、と。お強いです。拍手。
テノール陣
マクダフさんに注目が集まりすぎ感はあったけれどもう1人のテノール(マルコムくん)もよかったです。2人で一緒に歌っているときの謎の爽やかさが楽しい。爽やかな風が吹いていました。
どこかのオペラのバス役よろしく、テノールもちょっと出て美味しい役が一番映えますね。ずっと歌っているとボロが出やすいし歌手の負担も大きいでしょう。ちょっと歌って帰ろうぜ?
マクダフさん(宮里さん)は新国立劇場のばらの騎士ときより声に丸さが出ており以前より安心して聞けました。現時点で日本一のテノール歌手じゃないですか?みんな好きでしょ?
最初に日生オペラでマクベスを上演すると聞いたとき、不信感と不安しかなかったのですが(失礼)、
いざ幕が上がってみるとだいぶ健闘しており安心しました。
歌手のお歌には大きな破損がなかったです。まずまずでした。
しかし、S席が12,000円の公演と考えると考えてしまい考えちゃう。考えよう。
必死というか余裕がないというか。
お金を払って観に行くのであればもっと求めたいですね。
終わり。
指揮:沼尻 竜典
演出:粟國 淳
マクベス:今井 俊輔
マクベス夫人:田崎 尚美
バンクォー:伊藤 貴之
マクダフ:宮里 直樹
マルコム:村上 公太
侍女:森 季子
合唱:C.ヴィレッジシンガーズ
演奏:読売日本交響楽団