三島の見解

古の女子高生

【バレエ】白鳥の湖(パリ・オペラ座バレエ団2024年日本公演)

2024年2月10日(土)18:30公演

東京文化会館大ホール

パリ・オペラ座バレエ団2024年日本公演 

ピョートル・チャイコフスキー作曲

ルドルフ・ヌレエフ振付

白鳥の湖

お世話になっております。

三島でございます。

 

この日はパリ・オペラ座バレエ団(以下パリオペ)の白鳥の湖を観に東京文化会館へ行って参りました。

 

コロナじわじわ期の来日公演ぶりのパリオペでございます。2020年の公演の際はギリギリまでチケットを販売していた記憶がありましたが、「白鳥の湖」に関しては早い段階で完売しておりましたね。「白鳥の湖×パリオペ」は強いのか。

 

念願のヌレエフ版白鳥の湖での観劇です。また、オニール八菜さんのオデット(オディール)とジェルマン・ルーヴェさんの王子は2022年の東京バレエ団公演で観劇しており、版が違えど同じペアの観劇ができて嬉しいです。

 

 

では感想いってみよー。

 

 

まず、

来日してもらっておきながらこのような感想を持つことに多少の申し訳なさを感じておりますが満足のいく公演ではありませんでした。感想を書くことも苦しいのですが、行動記録は大事なので軽く書いおきましょう。

 

 

 

原因①コールドのばらつきが気になる

揃っているように見れば揃っているように見えるのですが、つまり、揃っているように見てあげる必要がありました。

 

 

1幕のワルツでは男性陣のジャンプからの着地した体の向きがバラバラでした。男性陣に限らず全員バラバラしていた記憶あります。体の向きや手の下ろし方(スピード)が揃わないし、女性バレリーナをリフトから下すのときも1人だけ遅いということが起きてました。乾杯の踊りは揃っていましたが。2幕の小さな4羽の白鳥の踊りは動きは揃ってましたが、パ・ド・シャを4回するところで1回目より2回目、2回目より3回目とどんどん高さが下がっていってしました。揃っているだけにもったいなかったです。4幕の白鳥たちは全員で端に移動するときの振付に1人だけ立つタイミングを間違えた方がおりました。1人だけ床に伏せたままでした。カウントを取り間違えた「だけ」だとは思います。それだけですが、そのようなありきたりなつまらないミスをパリオペでは見たくなかったです。

 

 

 

海外の名門バレエ団が来日するということで期待値を上げ過ぎた気もします。観劇前に「パリオペ 現在 レベル」とか「パリオペ 古典 レベル」とかで検索かけておくべきだった。

 

 

原因②真ん中3人の存在感のなさ

終始暗い照明のせいなのか、オデット(オディール)・王子・ロットバルト(家庭教師)もパッとせず。凄まじい華やかさを期待していたので存在感のなさに悲しくなりました。特にロットバルト(家庭教師)はオデットでも王子でもないけれど「その他」ではない。ヌレエフ版だからこそのアプローチを楽しみにしておりましたが、全く主張してこず何をしているのかわからない。私がヌレエフ版初見だったら、「お前はなんだ?」とツッコんでいたでしょう。ちょろちょろしているだけといえばそれだけなので、そのぶん歩き方や手の出し方など所作の美しさを求めたいところです。それこそオディールも王子も食べちゃってロットバルトしか記憶に残らないくらいの勢いで来て欲しいのですが。

 

 

オデット(オディール)と王子にもつい追いかけてしまうような存在感はなく、どの場面もただこなしているだけのように感じました。もちろん踊りが一流なのでそれでも成立するといえば成立しますが、それ以上を見たいから劇場に行ったわけでございまして。そんな踊れているだけでいいなら誰でもいいわけでございまして。

 

 

オニール八菜さんは2022年や京都バレエ団との共演のときに感じた圧倒的な存在感は薄く、パリオペの団員と一緒にいると埋もれるな、という印象を受けた。真ん中にいるのに埋もれるの。どこにいても常に発光できるというのは難しいことなんだなと思いました。全員がエトワールになれるわけではないけれど等しい採用基準(推定)のもと同じ団体に所属しているわけで、全員が存在感があるのでそこからさらに輝くというのは大変でしょう。マチュー・ガニオは大丈夫だけれど。(ガニオさんは自家発電しているから照明落としても光っていると思う。)役を邪魔するレベルでキラキラできるくらいがちょうどいいのかもしれない。つまりガニオさん最強。

 

 

 

原因③オーケストラの音

これは来日楽団ではなく我が国のオーケストラなので逆に謝らねければいけないかもしれないばい。

全員体調不良か?

 

 

 

良かったところ

オデットは王子にとってちょうどいいオデット設定にしており、版によってここまで違うのかと驚きました。オデットから意思や感情を強く感じることはありませんでした。もちろんロボットように踊っているわけではないので悲しんだり王子と出会えて安心しているような雰囲気はありますが、何かのフィルターを通して見ているような感覚がありました。

 

オディールは全く王子に興味がなく、ロットバルトに雇われて王子を誑かしているような表現。手を差し出したオディールの手に王子が触りにいく振付は「お前こういうのが好きなんか?」と言いたげに何度か繰り返していて面白かったです。3幕でオデットが背景の後ろに映し出されたのをよく観察し、その後の振付で「こういう感じだったな。」と真似をして学習能力の高さが見えました。

 

 

ジェルマン・ルーヴェは束の間の2番ポディションが綺麗だな、と思いました。男性陣の脚力やジャンプ力がよくわかった公演でありましたが、やはりエトワールです。踊り出すと他と違うのがよくわかります。一つの動作に対しての通り道がとても美しいです。パッセからアラセゴンへの動作はどの瞬間を切り取っても変な写真にならないでしょう。瞬間瞬間が美しいです。ジャンプも安定感と跳躍力があり軽々と飛びます。また、着地のときのポジションの綺麗さもありますが、一番好きなのは着地が静かなことです。他バレリーナの足音が気になることが多かったのですが、ジェルマン・ルーヴェは静かに丁寧に着地します。3幕の花嫁候補との踊りで後半部分に一人ずつを軽く持ち上げるときに片腕を回すだけでフワッと花嫁候補たちが浮いてしまうのが最高に素敵だった。メランコリーな表情も大変美しく、踊らなくても価値があるなと思いますが表情豊かに踊る方がお得感がありますね。これはヌレエフ版だからしょうがない。

 

 

3幕の各国の踊りは床を削り倒す勢いで足裏で床を使っておりトゥシューズを履いている時との差が楽しめました。

 

 

チケットを買うことができて楽しみにしていた公演でしたが、正直に言えばチケット代の価値はありませんでした。安価な席で見たならばこの感想でもいいのですが、まあまあな良席を購入したのです。良い席で見ても面白くないときは面白くないのだなあ、とお勉強。思い返すと前回の来日の「オネーギン」観劇後に追いチケする予定でしたが見送りました。作品の問題ではなくもう1回観たいと思える仕上がりではなかったからです。当時の感想は良いところを拾って書いた気がしますが。

 

 

私はパリオペに所属する個人が好きなだけであってパリオペという団体は好みじゃないのかもしれない。めんどくさいお客様ですね。個々が出稼ぎで来日する公演くらいがちょうど良いです。

 

 

来日公演というお祭りでどこまで実力を発揮できているのかわかりません。これが完全体なわけがない。現地で観て初めて価値がわかると思います。誰かパリ行こうぜ。

 

 

 

ということでした。

この状態でマノンはしんどいので見送りました。

マノンが素晴らしかったことを祈ります。

 

おしまい。